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第23話 捕まっている理由は…




1568年十一月上旬。

俺は今、京の都の上空から下の様子を見ていた。

織田軍は、京の都に入ってから行動を起こしていた。都のあちこちに放置されていた死体を片付けて弔ったり、盗みを働く者たちの取り締まりなどをしている。


「さすが織田軍の兵たち、といったところかな?

……それにしても、何年もたっているのに今の今まで死体を放置しているとは」


でも、これでは下に降りて目的の保護対象を探すことはできないな。

織田の兵たちの見回りが、あちこちにいるから見えないにしても気づかれそうだ。


今回は、公家屋敷の中にいるみたいだから、直接行くかな……。



京の都の上空を、西に東にウロウロしながら探してようやく目的の屋敷を見つけた。公家屋敷は、大きな屋敷だけではなく小さい屋敷もあるものだから迷ってしまった。


「ここか……。

大きさとしては中ぐらいかな。ただ、庭が広いな……」


タブレットに表示された、保護目的の子供は屋敷の中にいると表示されている。

床下に隠れているのか?と思い、小型ゴーレムで捜索するがいない。


公家屋敷の庭の隅にある物陰に隠れながら、小型ゴーレムと視界をリンクさせて探すが見つからない。

それならばと屋敷の中を探すため、小型ゴーレムに『認識疎外』と『光学迷彩』の魔法をかけて捜索開始する。


小型ゴーレム蜘蛛型は、天井を這うように捜索する。

すると、ある一室に一人見つけた。

猿轡をかませられ、後ろ手に縛られた状態で倒れていた。


(……あれ?捕まっている状態か?)


周りを見渡すと、男が二人膝を突き合わせて何やら話をしている。

俺は声を拾うべく、『収音魔法』を小型ゴーレム蜘蛛型に重ね掛けする。


(遠隔でも、魔法が使えて良かった)


「蓮杖様、この娘でよろしいのですか?」

「ああ、構わぬ構わぬ。女子なら何でもよい。

吾が所望したわけではないからのう」


何やら、不穏な気配がするな……。

女なら何でもいいって、この子は十歳だぞ?


「しかし、私はこの子供よりもう一人の方がいいと思いますが……」

「あの娘か?あれはダメじゃ」

「何故でございますか?

九条様のおぼえをよくするなら、あの娘の方が……」


「お主は、九条殿のご趣味が分かっておらぬのう……」

「申し訳ございません」

「九条殿はの、『源氏物語』にあこがれておるのよ」


源氏物語?

確か平安時代の長編物語だったかな。全五十四巻の三部作だっけ。

その中に女の子を題材した物語といえば、女の子を育てて自分好みの女性にして妻にしたというのがあったな……。


(まさか……)


「『源氏物語』でございますか?」

「何じゃ、お主。『源氏物語』を知らぬというのか?」

「はい、あいにくと読む機会がなかったもので……」


まあ、商人で『源氏物語』はよほどの本好きじゃないと読まないよな。


「しょうがないのう……。

よいか?『源氏物語』の中に、幼い女子を引き取り自分好みに育てて妻に迎える話があるのじゃが、それを実践してみたいのじゃよ」

「そ、それはまた……」


(……さすがの商人も引いているな)


でも、そんなことのためにこの女の子は捕まったのか。

そういえば、もう一人いるんだったな。探しに……。


「それと、もう一人も使い道があるのじゃ」

「使い道、でございますか?」

「そうじゃ、あの娘は此度の褒美に使いたいのじゃ」


(褒美?)


「そういえば、蓮杖様の願いを叶えてもらったと仰られていましたな。

確か、若狭の国人でございましたか」

「そうよ、その国人に下げ渡してやろうと思うてな。

ああ見えて、公家の娘じゃ。血筋だけは良いからのう」


公家の娘?

もしかして、今回の保護対象って二人とも公家の血筋の子供ってことか。


「でもそれでは、親が黙っていないのではないですか?」

「オホホホ、それなら心配いらん。

すでに親は亡くなっておるし、家もすでに取り潰されておるからのう」

「……まさか、蓮杖様?」


「勘違いするな、吾は手を出しておらん。

手を出したのは、もっと上の者たちじゃ。吾は引き取られた家から買い取っただけよ」

「それなら、良いのですが……。

それにしても、哀れな女子たちですな……」


なるほどね、政変に巻き込まれて御家断絶。

女の子二人は、どこかの家に引き取られたもののこの蓮杖に金で売られたと。

そして、この蓮杖に九条とかいう公家へのお土産と若狭の国人へ血筋だけで嫁がされるってことか。


俺は小型ゴーレム蜘蛛型を移動させ、もう一人の捕まっている女の子を隣の部屋に同じように猿轡をされ、縛られているところを発見した。

保護対象を見つけたなら、すぐに行動を起こす。


まずは一応保険のために、屋敷全体に『強制睡眠スリープ』の魔法を展開。

効果は、十分以内に表れるだろう……。


「ん?何じゃ、いきなり眠気が……」

「ど、どういう……」


膝を突き合わせて話していた二人の男たちが、横に倒れ眠ってしまう。

また、屋敷内にいた他の人たちもその場に崩れるように眠りについた。

それを確認すると、俺は屋敷の敷地の隅の物陰から移動し屋敷内へ。


(みんな寝ているな……。

さて、保護対象の女の子たちを保護して、小型ゴーレムを回収し、ここから逃げれば終了っと)


俺は、屋敷内を目的の場所まで移動する……。






今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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