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第16話 不気味

久々の更新です。遅れてすみません。

どうぞ。

 

 それから暫く。

 森の奥へずんずんと進むライト達。途中に何度も敵mobから奇襲を受けながらも何とかそれを打ち払い、ウィーリズの森もいよいよ最深部に近いのかその様子を変えてきていた。

 

 鬱蒼と生い茂る木々から僅かに漏れれていた月光はいつの間にか消え、その代わりにあたりを照らすのはシャルが放つ【火属性魔術】である《トーチ》の魔法。ゲームなだけあってか、この光があるだけで半径十メートルほどの明かりが確保できていた。

 

 まだ終わりの見えない森を歩き続けながら、どこか疲れを帯びたリリーが言う。

 

 「敵mobがさっきより好戦的ですね……」

 「クエストを受けているからなのか、それとも奥に進むたびにそうなっているからなのか分かりませんね」

 「……倒せば、一緒」

 「ひゅー。シャルってばかっくいー」

 

 応える声にもどこか覇気が抜けていた。

 

 「それにしても助かったよ。ありがとう。これはホントみんながいなきゃ無理だったね」

 「……た、確かに」

 

 それを考えるとゾッとしないな、と。ライトは二人のままここに来ていればどんな末路を辿ることになったかを想像し――すぐにやめた。言うまでもなく結果が見えているからだ。

 

 エミリオは確かに動きもいいし強いし凄いが、それでも数の暴力に勝つことは敵わない。漫画やアニメではないのだから、普通のゲーマーに複数の敵を対処することなど慣れないうちは無茶に決まっている。

 

 ライトが前回のウルフ三匹相手に出来たのも、見事にウルフが三匹とも前方――つまり視覚内に収まってくれたからであり、実際にあれが多方面からの攻撃であればあの時間違いなくポリゴンへと散っていたのはライトだった。

 

 「というか《転職のオーブ》の事は噂に聞いてたけどさー、まさかここまでキツイとなるといよいよ真実味帯びてきたねー。まぁ最低で求められてるレベルが25の時点でやばいなーとは思ってたけど、まさかここまでだとはボク思わなかったよ」

 「……ちょー強いし、めんどい」

 「これで報酬がランダム報酬で個人のオーブだけだったら笑えないですね……」

 

 ハルの言葉に、このクエストに誘ったライトとエミリオはなんとも言えない苦笑いを浮かべた。このクエスト自体まだ公に出ていないのか、どれだけ情報を探ってもネットには未だ話題にも上がっていなかった。事前情報はないが――それでも《転職のオーブ》が参加メンバー全員の固定報酬と考えるのは流石に楽観的すぎだろう。扱いからして、多分ひとつのPTに一つ単位――どころかランダム報酬の可能性さえ検討してもいいレベルだ。

 

 「まぁ、それはそれです。ここはもし手に入らなくてもこういうクエストに参加できて、良かったと考えるべきです。実際にさっきから手に入るドロップ品とかは新規のものが多いですし、これらで作った防具とかは現在でもかなり重宝されているらしいですよ」

 「ほー」

 

 手元にその素材で作られてのであろう防具の一覧をリリーが映し出し、それに引っ付く様にゲーマー達が集まった。……エミリオも。

 

 「エ、エミリオ……すっごい自然に女の子の所に入るなんて……」

 

 パネェ。うちのエミリオのリア充力はまだ本気じゃないというのか……! そんなふうに打ち震えているとエミリオは何故か首を傾げた。

 

 「え? あ、あぁごめんゴメン皆!」

 

 パッと離れるエミリオだが、その行為に何故か他メンバー達がきょとんとした顔を浮かべ、頭の上に疑問符を浮かべながら答えたのはルーだった。

 

 「? 別にいいけど? だってエミリオさんは――」

 「ごめんね!!! マナーがなって!!! なかった!!! よね!!!」

 「ひっ! そ、そうかもね!」

 「……」

 

 なんだか随分と仲の良さそうなやり取りだな……。

 ライトはどこかモヤモヤとした気持ちになりながらその光景を眺めていた。

 ライトからすればそんなつもりは無かったが、この世界はゲームである。そのためすべての行動がシステムによって管理されており、それは当然脳に至っても同じ。嫌な気持ちを抱いた時に発生する脳波を感じ取ってしまったシステムは、直ぐにそれをライトの顔に反映した。

 

 「あれ? ライト君ってばもしかしてせっかく仲良くなったボクとお話出来なくて、その代わりエミリオさんと話してて嫉妬でもしたのかなー?」

 

 そしてそれに気付かない女性軍団ではない。ニヤニヤと笑みを浮かべてライトを見やるルーの表情はいたずらごころたっぷりと言った感じだ。

 

 対してライトは、憮然とした顔のまま、いつものようにキョドること無く伝えた。

 

 「……そうですね。嫉妬しています」

 『え』

 

 なんかノーマークな所から打撃が来た!? みたいな顔を女性四人が浮かべているのを無視して、ライトは堪え切れずに言う。

 

 「エミリオを、持ってかないで下さい」

 『そっちぃ!?』

 「ねぇ待ってライト! なんか、君のせいで僕の立場が危うい気がする! やめて! 熱っぽい目で僕を見ないで! ねぇライト!?」

 「だって友達なのに……」

 「前から本当に思ってたけどライトの中での友達像ってなんでそんなズブズブな感じなの!? 愛が重すぎるよ! なんでそんな友愛が深いのかなぁ!?」

 

 そうして騒ぎながら森を歩いていると、

 

 「――あれ? 根暗なライトにーちゃんと、イケメンなにーちゃんだ」

 

 まだ変声しきってない幼さを孕んだ声が、前方から聞こえた。

 

 そんな失礼な呼び方をするのはただ一人しかライトは知らない。


 「アース……」

 

 キャラクター名《アース》。姉を思いこの森で一人でありながらも戦い続けていたクソガキが、今度は一人ではなく後ろに四人のプレイヤーの姿を控えさせながらそこに立っていた。

 

 

               ◆

 

 

 「ここに居るってことは……にーちゃん達もあのクエスト?」

 「えっ、あっ、ぉ、おぉ。えと、《少女の父親を救い出せ!》って奴……?」

 「あー! やっぱり! そっちも見つけられたんだなぁ良かった! 知らなかったら教えようと思ってたんだけどさー、中々にーちゃん達見つからなくて……」

 

 相変わらず、素のテンションの高さがライトには馴染まないし人の呼び方は失礼だし……。でもどこか憎めない雰囲気を持つのがこのアースという少年の持つ特性なのかもしれない。

 

 「おーいリーダー? おっせーんスけどー」

 「あ、悪い悪い!」

 

 と、そこでどこかダウナーな感じに聞こえる声がアースの後ろから聞こえた。チラリとライトが視線を送ってみれば、そこに居るのは四人に固まった男性プレイヤーだった。キャラクターはかなり美形に作られていると思ったが……どこか歪に感じる造形(骨格や顔のパーツの場所、サイズ)と、不気味さのある笑みを浮かべたアバターが妙な恐怖を演出しており、それだけでどこかホラー要素を感じる集団だった。言うなれば不気味面だ。複数形で不気味(メン)ズでも不気味(メン)バーでも可。

 

 「ぇ、もしかしてアレって……」

 「流石にここまで一人で来るのは難しーって思っててメンバー募集したら来てくれたんだよこのにーちゃん達。渡りに船って感じだよな!」

 「いやいやー、俺らはボランティアで人助けたいって思ってるだけっすから! な、お前ら!」

 

 同意するように全員が歪な顔でヘラヘラ笑った。SAN値が減りそうである。

 

 ……いや。いやね?

 あんまこういうこと言いたくないけどさ。

 

 ライトは真顔で、決してあのホラー集団には聴こえないようにエミリオの耳に口を寄せ囁いた。

 

 「(……なぁ、エミリオ)」

 「ひゃっ!? (……きゅ、急に何するのライト! びっくりするじゃん!)」

 「(え、ごめん……)」

 

 怒られた……。エミリオに怒られた……。伝えようとした事も忘れ、ライトはただショックのあまりに落ち込んだ。

 

 「つー訳でリーダー早く奥まで……お?」

 

 不意に、四人組でも特に異彩を放つ金髪ロン毛の異常に目が大きくて彫りの深いチラ見ならイケメンに見えない事もない不気味面の男が言葉を止めた。

 

 「え、なに!? 君ら全員女の子!? へー! 女の子達でプレイしてるんだ! 珍しいね! へー!

 ね、ね! どうせなら一緒にプレイしない? 俺達これでも強いからかなり色んなこと教えてあげれるよ! あ、そうだ! フレになろうよフレに!」

 

 すっごいテンションの上がりように何事かと思えば、どうやらリリー達を見付けて興奮しているようだった。

 尚、昂奮した脳波がドバドバ出てるのか金髪ロン毛さんの表情は頬は赤く染まり、目が充血し、若干前に飛び出てる気さえする。今はイケメンの面影はなく、完全にイン○マス面だった。これからはデメ金ロン毛と呼ぼうと、ライトの心の中で可決された瞬間である。

 

 それにしても凄い。これが“ねぇどこ住み? あ、ロイン交換しようよ。フリフリ~!”って奴である。初めて見た。絶滅危惧種に遭遇したような気持ちをライトは覚えた。

 

 むしろ次の展開に若干ワクワク感さえ――、

 

 「あ、いえ。そういうの嫌なので」

 

 秒で撃沈。

 いやリリーさん。嫌とか言っちゃダメですよ人に。もう少し気を使いましょうよ。人に嫌とか死んでも無理とか絶対に言っちゃダメですよって教えてあげたい気持ちをグッとこらえてライトは展開を見守る。

 

 「ぅ、ぐっ……いやでもほら、俺って見た目いいじゃないスか~?」

 「……。……それが?」

 

 すっごい溜めた! 今なにか言いたいことをすっごい我慢してリリーさんは会話の先を促した。偉い! 凄い!

 

 ここに観客席があったら総立ちでスタンディングオベーションものである。

 

 「え、いや、だから……」

 「見た目の美醜とあなたとフレンドになる事に、なんの関連性があるのか分からないので先に行かせて頂きますね」

 「あ、ちょっ……! チッ……ふざけ……くそ……っ」

 

 サクサクと、デメ金ロン毛を無視して進み出すリリーと、その後ろに続く三人の美少女達。

 いずれもその不気味面ズが声を掛けようとするも圧倒的な声かけるなオーラで萎縮して声を掛けられなかった様で、それぞれがそれぞれ無駄に髪の毛を弄っていた。

 

 細かく描写すると薄暗い森の中、下から懐中電灯の光を当てたようなあのホラーフェイスで目を血走らせながらギョロつかせ、鼻穴をふくらませて髪の毛をショリショリする高身長のロン毛共。

 

 子供が見たら卒倒するレベルで超怖い。

 

 「……僕達も行こうか」

 「お、おぅ」

 

 エミリオの言葉にハッとなり、リリーたちに追いつくように先に急いだ。

 

 「……俺達もいきましょ、リーダー」

 「ん? あ、あぁ」

 

 小さな火種が一つ、チロリと舌を覗かせた。


前回頂いた感想の中で、

『美味しい料理を出す料理店に入ったけど、店内がやかましくて素直に楽しめずそそくさと退店するような気分でした』(私の意訳入り)

という感想があって、個人的に凄く納得してしまいました。

たしかに私もそれ嫌だな、と。

この場をお借りして謝罪させていただきたいと思います。

本当に申し訳ありませんでした。

これからはやっぱりある程度節度を持ってやらせて頂きます。

まぁそれは前回も同じことを言ったので続行するだけなんですが……。


御覧頂き誠にありがとうございました!

ご感想、ご評価、ブックマーク等、宜しければ是非お願い致します!


あ、後本編に登場するインス○ス面に関しまして、調べるのは自己責任でお願いします。ご覧になってしまった方はあまりに現実の物とは思えないある種の冒涜ささえ湛えたその異形に未だ感じたことの無い恐怖を覚えました。1d3でSANチェックをお願いします(TRPG並感)

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