第17話 出会い厨
人によってはイラッとするかも?
どうぞ。
「や、偶然っすね! また会うとは思わなかったな~! あ、これって結構運命的だと思わないっスか!?」
「…………」
「てか最近ー、このゲームの敵が弱くてなんかもーだりーっていうかぁ、力余っちゃっててぇ。あ~、なんか人の役に立ちてーなぁみたいな。いや、別に俺がすごいとかそういう話じゃないんすけどぉ! そういう話じゃなくてぇ!(チラッチラッ」
「…………」
拝啓 お母さん、お父さん。
俺、死ぬかもしれません。
心臓へのストレス的な奴で。
そう思うには十分なほど、目の前で行われる茶番に等しいやり取りの、巻き込まれている方――つまりリリーから、少年漫画みたいな殺気が溢れてライトのか細い精神はすでに耐久値の限界を超えていた。
しかも困った事に、リリーだけではなくその圧は周りから――シャル、ルー、ハルの三人からも発されていた。
まるでサッカーの要注意選手へのマークのような陣形だ。それぞれがアイギスのメンバーである美少女達へと付き、鼻穴をふくらませながら息も切らせぬマシンガントークでなんか話しまくってる。尚相対的に聞いてる方の表情は白(無視)→赤(第一波)→青(無我)→黒(ダークサイド)と言った感じに変化していっている。因みに5分くらい前からすでに全員が真っ黒である。役満の状態ですっかりライトの心臓はバックンバックン。
「にーちゃん達……その、なんかごめん。雰囲気悪いよな、今……」
「ぁ、やっ。君は悪くないだろ……」
流石にこの状態がおかしい事が分かったのかアースがおずおずと謝ってきた。しかしここでアースに当たるのは間違っている。実際なにもアースは悪くない。悪いのは巡り合わせとネット的常識にかけた奴らである。
その光景を冷めた目で眺めるエミリオがボソリと呟いた。
「典型的なコミュ障だね。しかもアッパー系とは手に負えない……」
「コミュ障? これで?」
コミュ障という単語に一家言持つ者として、その言葉は認められない。非常に残念すぎる感性を持ったライトがそう聞くとエミリオは一度ため息を吐いた。
「コミュ障にも大きく2種類があってね。ライトの奴は割と軽くて一般的な方。まぁダウナー系とも言われる方かな? でもライトの場合まだそうやって分類されるほど末期じゃないからなぁ」
そう区切りながらも言葉を続けるエミリオ。
「基本的にライトの方はいろいろ考え過ぎる結果とか、性格のネガティブさが原因だったりして、実は改善がそこまで難しくないんだ。それに引き換え彼らのコミュ障は通称【アッパー系】って言う、本当にコミュニケーションに問題がある方なんだよね」
「コミュニケーションに問題?」
あれだけペラペラと喋ることができるならそうは思えないけど……。
と、まさにそう考えているライトの思考を読んだのか、
「喋られればコミュ障じゃない。ってライトは考えてないかな?」
完全にそのとおりである。
「ところがね、そうじゃない。彼らの厄介な所は、下手に言葉を垂れ流せるのにコミュニケーションを取れないという所なんだよ。……って言っても難しいだろうけど。要は『できない』と、『しない』の違いって言えばいいかな」
「『できない』と『しない』?」
「うん。例えばライトはコミュ症だけど、じゃあ僕と意思の疎通は取れてないかな? って聞くと変な答えが帰ってきそうだから先に言うけど、決してそんなことは無いよ。言葉は足りない所があるし、残念な所あるし、馬鹿なところもあるし……」
「おーい!?」
途中から趣旨が変わって来てるんですけど! という意味でライトが突っ込むと、それを受けたエミリオがクスクスと笑みを零す。
「まぁこんな感じにコント出来るくらいには意思疎通ができるんだ。これはライトが難しいなりに頑張ろうとするからできていることなんだよね」
「うーん、まぁ」
「じゃあ翻って彼らを見てみよう。今の彼らがしてるのは会話に見える?」
「……あ」
そこで、ようやくエミリオの言いたいことに気がついた。
「分かった? 彼らがやってるのは所詮言葉のドッチボール。自分が言いたいことを言って、聞かせたいことを聞いてほしい。そこに相手の意見はなく、常に自分が最優先……。あれが本当のコミュニケーション障害って奴さ」
問題はそれだけじゃないみたいだけどね、彼らの場合。最後にそう締め括ったエミリオの目に映っている彼等は、最早羽虫のようにしか見えないのか、侮蔑の視線を送るエミリオの目がライトには少し恐ろしくも思えた。
「まぁつまり何が言いたいかというと、ライトは――」
『ガルぅうううう!!』
そこで、木々を掻き分けライトたちの前に姿を表したのは1.2……5体にも及ぶフォレストウルフの姿!
その姿にリリーたちが構えようとした瞬間、今までヤバイ顔でリリーたちに付きまとっていた不気味面ズが凄い張り切って武器を取り出した。
「あ、ヤラレに来ちゃったのかなークソザコmobのくせにー。あーあ。別に俺無駄に殺したりとかしたくねーのになぁ」
「あー、全ッ然本気出せねーわー昨日全ッ然寝てねーからなー」
「すーっ、あーこれ学校サボろ。チョーダリィ。あ~酒飲みてーわー。すーっ」
「いやーリアルで不良やってっとこういうとき助かるわー。昨日も殴りあいしてたからなー。あ~、早くあっちでまたぶん殴りてぇ」
何だこの香ばしい集団!
それぞれが別ベクトルに香ばしい!
ぼっちでコミュ症なライトにもすぐに分かった。こいつら、現在でも元気に自分から漆黒の暦を書き連ねる猛者なのだと!
それを言いつつドヤ顔で後方をチラチラ見る不気味面ズ達! もう虫の死骸でも見詰めてる方がマシという顔をして俯く美少女達!
「僕達も行こうか……」
どこか疲れた様子でエミリオはライトを呼びかけた。見た感じ彼女達もなかなかグロッキーなのか動きが鈍い。不気味面ズがほか四体をやってくれると言うならこちらはこちらで残り一体を二人で倒そうということになり、エミリオとライトは戦いに突入した。
スタイルは変わらずエミリオが前衛。ライトが後方支援。
要所要所でライトがヘイトの撹乱を受け持ったのもあって戦い自体はあっさりと終わりを迎えた。
――しかし、問題はここで起きた。
戦闘終了後、何度かかすり傷を負ってしまったライトが自分にヒールをかけていた所、
「え、なにw お前ヒーラーとかやってんの?w」
と、後ろから割と耳障りな声が聞こえた。
見ればそこにいるのはデメ金ロン毛。顔の筋肉をひくひくっ!と痙攣させながら笑うデメ金ロン毛は続ける。
「えw そういうのもあると思うけど実際ダサくね?w いやバカにしてるとかじゃなくてぇー、男ならやるべきことがあるっていうかさー」
「? ゲームなのに、やるべき事……?」
何を言いたいのかいまいちライトには理解出来なかった。ゲームは楽しんでやるためのものだからそんな規制されるようなものはないと思うんだけど……。
それについて何を思ったのか、デメ金ロン毛はオーバーなアクションでため息を吐き参ったなぁ、と呟いた。
参ってるのはこっちなんですが。
「ゲームとか以前にさ、あるでしょ普通ー。……俺だったらあんな可愛い女の子と同じPTなら守ってあげれるんだけどなー!」
何故か途中から急に声が大きくなった。
「てか何でキミ彼女たちと同じPTなわけ? あ、貢いでんの? やめたほうがいいよそういうの。ちゃんと自分で勝負しないとー」
「え? え?」
凄い。なにかあずかり知らぬところでストーリーが完結に進みつつある!
あまりに初めての出来事に関心さえ覚えていた。
「あ、てゆーかそれならさ! キミ抜けて俺そっち行ったほうが良くない!? めっちゃ名案じゃね!? 俺このゲーム超詳しいし! あ、やば! 良いじゃん! な? そうしようぜ?」
「――いい加減にして下さい」
ホラー顔面がライトの眼前にまで近づけられその時、ライトのすぐ横から絶対零度の声が聞こえてきた。
リリーの声だった。
その周りには、同じく底冷えしきった冷たい視線を携える3つの視線。
「何勝手にしゃしゃり出てライトさんの事悪く言ってるんですかこの人面魚たちは」
「え? なんて言ってたの? この如何にもアバターエディットでイケメンにしたかったけど美的センス皆無で唯の不細工になったコレって。ボクハルちゃん程優しくないから虫語は覚えられないんだよねぇ」
「? ……ブーンブーンずっと周りで羽虫の音が気持ち悪かったぐらいしか、分からなかった」
「あのねぇ皆……やめてあげなよ流石に。――虫だって魚だってもう少し考える頭あるんだから……失礼でしょ?」
フルボッコだドン!(裏声)
若干編集を加えられた状態で脳内再生された音声はこれだった。
「は? 多少可愛いからってつけあがりやがって……」
「ではその多少可愛さに見事引っかかった貴方達は本当に救いようが無いんですね?」
「……てめぇ!」
「あ、これ以上付きまとうようでしたら先程から録画してある貴方達の付き纏いの様子を運営の方に流しますので覚悟しておいて下さい。PKしても同じですよ。良くてアカウントの停止、悪くて削除からの永久BANだってありえますからね。ここの運営こういうのには厳しいですし」
「…………!」
それに、と言葉を続けると共に――リリーはライトの腕を取った。
「ひゃぁ!?」
「言っておきますが、あなたの様に人を見下すような事しかしない嘘にまみれた人間より、ライトさんの方がよっぽど格好良くて素敵ですから。どうぞ、お引き取りください」
ニッコリとアルカイックスマイルを浮かべたリリーの口から紡がれた言葉は、きっと今日一番の威力を記録した。
障と症。2種類の使い方が出てきておりますが誤字ではありませんので悪しからず。
ご覧頂き誠にありがとうございました!
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