第9話 クエスト発生
ちょっと投稿遅れてしまいました。申し訳ありません。
これから久々にFLO側の話が進みそうですね。
どうぞ。
「ふぅー……助かったぜ! にーちゃん達、あんがとな!」
結局ライトが突っ立っている間にそれは終わってしまった訳だが、それでも目の前の少年はしっかりと二人に対して頭を下げた。
しかしそうされても決まりの悪いライトは両手をブンブンと振って否定する。
「ぉ、俺は大して何もしてないから……」
「あ、たしかに! やっつけたのはこっちのイケメンな兄ちゃんだけだったよな! 根暗なにーちゃんずっときょどきょどしてたし!」
「ね、根暗……」
「あ、あはは」
このガキャ……! と、目の前で饒舌に語りはじめたこのクソガキはどうやらアースと言う名前らしく、そのテンションの高さと馴れ馴れしさに早速ライトは苦手意識を持ちはじめていた。
え? エミリオ? エミリオを嫌うわけ無いだろうが!! ふざけんなよ!
「ところでアース君。君一人でこんなところ来たの?」
そこで話を切り替えるようにエミリオが口を開いた。流石エミリオである。俺みたいなコミュ症のことまで考えて話題転換してくれるなんて……と、ライトがエミリオの横顔を熱い眼差しで見つめた。
しかしアースにとってその話題は痛手だったのか、苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
「いやー……あはは。実はそうなんだけど、もう全然駄目でさ。何十匹も倒したんだけど全然ほしいアイテムは手に入らないし回復系のアイテムもなくなるしで今諦めようと思ってたところ」
「アイテムって《転職のオーブ》の事かな? アース君は転職したいの? ここで何十匹もmobを狩れる実力があるんだったらいらないと思うんだけど……」
随分突っ込んだ話をするなーと他人事のようにライトが眺めていると、アースはさっきとは違った類の気まずそうな表情を浮かべた。
「やー。実は俺のためじゃなくて……その、姉ちゃんの為なんだ」
「お姉さん?」
「うん。このゲームを始める時に色々アドバイスしてほしいって言われたから俺が冒険者勧めて半強制的? みたいな感じでやらせちゃったんだけどさ、その……ダメだったみたいで」
『あー……』
そこまで聞いて、二人は事の成り行きが理解できた。
つまりライトも辿る可能性があった、戦闘の難易度に折れてゲーム自体を敬遠してしまうパターンに入ってしまったのがアースの姉なのだろう。
「それで俺がなんとかしなきゃって思ってここまで来たんだけど……まぁこんな有様だよな。あー、かっこわる」
……さっきまでアースのことをただの生意気な糞ガキだと敬遠していたライトは自分が恥ずかしくなり、思わず口を開く。
「悪く、ないだろ」
「え?」
「格好悪くない。最初やった事が君の責任でも、その責任を取ろうとする奴が、格好悪いわけ無い」
「根暗なにーちゃん……」
うん。感動してくれてる所嬉しいけど、その呼び方をまずやめろ。俺が色んな意味で感情が動いちゃうから。勿論激怒的な意味合いで。
ライトは空気を乱すわけにも行かず、その言葉を飲み込んで言葉を続けた。
「まだ出ないって決まったわけでもないんだし、一人しか手に入らないってことでもないだろ? 多分誰かが情報流してくれるだろうからそれまで待ってもいい。やりようはいくらでもあるんだから、そうしろよ。あと、俺の名前はライトだから」
「……うん、ありがとう! 元気でたよ、根暗なにーちゃん!」
「てめぇ!」
ライトはついに声を荒げた。
コミュ症でも個人の年下限定なら多少イキれる所を見せてやろうか!!
「まぁまぁ落ち着いてライト。でも本当にその通りだね。無事に僕達もここでmobを倒しまくっても意味がないって情報を手に入れられた訳だし、街に行ったん戻ろうか?」
「くっ……まぁエミリオがそう言うなら」
ライトはその言葉で引き下がり、アースに目を向けた。
「それで、君はどうするのかな、アース君」
「んー。今ので少し体力も戻ったし、もうちょっとだけ試してみることにする。ありがとな」
「そうかい。じゃあライト、行こうか」
「ん。……ヒール。ブレッシング」
別れる直前、ライトはアースに向けて回復とバフを掛けた。
「あ……これ。ありがとな。根暗なライトにーちゃん」
混ぜれば許すってもんじゃねーから。
そんな姉思いの、しかし口の悪いクソガキとの出会いがライトにとって今日のハイライトだった。
ライトだけに。
………ライトだけに。
◆
エミリオと、談笑交わしながらウィーリズの森から街へと帰還し、二人は町中を歩いていた。
「あ、明日はどうする?」
「明日か。んー、19時からなら空いてると思うけど、集まるかい?」
「! お、おう! そうしよう!」
「うわすごい嬉しそう……」
「べ、別にそんな事ないぞ? ふっふふーん♪」
「ついに鼻歌まで始めた!? 素直すぎないかな!?」
最後に二人でお決まりの喫茶店に入って軽く話してから今日はお開きにしようという事になって、二人並んで街灯の付きはじめた街を歩く。
そんな時だった。
「あの、そこの天上人様!」
そんな声が後ろから聞こえた。
ライトとエミリオが同時に振り返ってみれば、そこにいたのはまだ10歳くらいの、あどけない顔立ちをした女の子だった。
その少女を示すマーカーの色は緑――つまりNPC。
彼女は0と1だけで構成されたとは思えないほど悲壮な面持ちで言葉を続けた。
「おねがいします! 私のお父さんを助けてください! お礼に私の家に家宝として置いてある物を差し上げますから!」
テレレン♪ と今まで聞いたことの無い効果音と共に、ライトとエミリオの眼前に勝手にウィンドウが展開される。
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サイドクエスト《少女の父親を救い出せ!》
ウィーリズの森の最奥部にまでたどり着き、待ち構える守り人を撃破せよ。
推奨レベル:25Lv
推奨パーティー:4人〜
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「これって、まさか……」
「あぁ、どうもそうみたいだね」
突如目の前に現れたのは、そんな通知だった。
「どうしようか? 正直、僕としてはやりたい気持ちもあるけど、二人でどうこうなるようには見えないよね。レベルもPT人数も足りてないし」
「……うーん。じゃあとりあえず受けておいて、無理そうだったら破棄するような形でいいか?」
「そうだね。キープして、ダメそうだったら捨てるんだよね」
「なぁエミリオ。なんか今すっごい悪意なかった?」
「ないよ」
ノータイムで返された返答に釈然としない気持ちを抱きながら、ライトとエミリオがクエスト受注をタップし、無事にそのまま現在進行クエスト一覧にその名が刻まれた。
結局その後に何をするわけでもなく、二人は揃ってログアウトするためにも宿屋へと向かった。
「あ~、今日は遊んだねぇ」
「だな。あのクソガキ次にあった時までにデバフを覚えておいて苦しめてやらなきゃ」
「……ふふっ」
ライトが憎々しげに呟いているのを横目でみながら、エミリオは笑い声を漏らした。
「な、なんだよ」
「いやー? とかいいつ面倒見よかったなー、なんて思ってないよー?」
「はぁ? 面倒見ぃ? 面倒臭さくらいしか無かったんだけど」
「ハイハイそうですねー。――でも、あの時のライトはすっごく格好良かったよ」
「なっ……!」
不意に、首をコテンと傾げてエミリオがライトの瞳を覗き込み満面の笑みを浮かべてそういった。
……これは、ズルい。普通の男がやったら、きめぇ殺すぞ。で終わる所流石はエミリオなのか。その一言と仕草は見事にライトの弱点にクリティカルヒットし、思いっきり顔を赤く染め上げた。
「あっれー? なんか真っ赤になってないかなー?」
「う、うるせぇ! お、俺飯だからログアウトするわ! じゃあな!」
慌てて言い繕うライトはそのまま本当にログアウトしてしまったようでアバターがポリゴンの破片へと返り、空気に溶けていった。
「ふふ、ライトってば本当に面白いなぁ」
残ったエミリオは、すぐにログアウトをする事はせず、少し寂しげに独り言を漏らしていた。
「……ちゃんといつか、言わなきゃな。本当の事」
その声は誰にも聞かれることはなく、ポリゴンの破片へと消えるソレと共に溶けていった。
※途中に入った激サムギャグについてのクレームは当作者は一切受け付けません。
ご覧いただき誠にありがとうございます。
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