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大捕物 ①

一夜明け、俺達は特務部隊本部で途方に暮れていた。

目の前には高く積まれた依頼書の山。


「こんなに・・・。」

俺は言葉に詰まる。


昨日出来たばかりの部隊にこれだけの依頼が来るなんて誰が考えようか。

それに、公にはまだ公表していないはず。

俺は積まれた山から依頼書を1枚摘み出した。


「・・・魔族退治。クスパ坑道・・・トリー王国。」


トリー王国からのクスパ坑道に巣くう魔族退治依頼だ。無理に決まっている。


「こっちは、魔人討伐依頼・・・。ワイズランドの大臣から。」


グリムも1枚手にとって読み上げた。これも、絶対に無理だ。


「これら全て小国や大国からの依頼の様だ。」


バッガスが数枚手に取りペラペラとめくった。


「嘘だろ・・・こんなの無茶苦茶だ。」


俺は依頼書の山に手を置くとガックリ項垂れた。

そこへ扉をノックする音。


「失礼するよ。」


抑揚の無い声が聴こえると、こちらの返事も待たずに扉が開いた。


「そ、総司令。」

俺達は一斉に背筋を伸ばし敬礼をした。


「ほー。これは・・・なかなか。」

依頼書の山を見て総司令が声を上げる。


「あの、総司令。これはさすがに無理があります。」

俺は我慢出来ずに前に出た。


その俺を総司令は横目でチラッとだけ見ると他の二人を見詰めた。


「ふむ。さすが良い人選ですね。」

そう言ってクルリと背を向け扉へ向かう。


「総司令!」


俺が声を上げると、鬱陶しそうに左手を上げヒラヒラさせる。


「入りたまえ。」


総司令の声に、扉が開かれると身なりの整った男女数人がゾロゾロと部屋へ入ってきた。


「メイアス隊長補佐。依頼書の整理はこの者達に任せ、勇者一行と今後についてしっかりと作戦をたてなさい。」

そのまま総司令はいなくなった。


俺達は、あっという間に入ってきた人々に部屋を押し出されてしまった。


「な、なんなんだよ・・・。」


呆然とする俺達の前に一人の女が近寄ってくると眼鏡をグイと押し上げ俺達の前に立った。


「メイアス隊長補佐。私、本日付で特務部隊に配属されましたシユウ・サイシュタットと申します。今後、特務部隊の総務及び経理等は私にお任せ下さい。今日は初日という事ですので、元同僚達に手伝ってもらいます。現在各国から来ている依頼は全て種類別に区分しておきますので夕方にはご報告いたします。ちなみに、勇者一行の現状も把握しておりますのでご心配無く。」


シユウという女性は一息で言い終わると部屋の中へ戻っていった。


「・・・・だ、誰?」

俺が呟くと、バッガスは首を捻った。


「シユウ・サイシュタット・・・。」

グリムは腕組みして考え込む。


「グリム。知ってるのか?」

俺の問いにグリムは眉をひそめる。


「う~ん。知ってるって言うか、たぶんなんだけど、この国の書記長が確かそんな名前だった様な・・・気がする。でも、まさか・・・ねぇ?」

グリムが苦笑いで答えた。


俺達は完全に軍人で、戦い以外の事はてんで疎い。

国の政治がどうのなんて分かる訳が無いし、辛うじて国王や大臣くらいの名前は知っている程度だ。


「いゃ・・・そりゃないだろ・・・。」

閉められた扉を見詰め俺も苦笑いした。

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