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タブレ地区 ⑥

仕事が一段落ついた記念投稿です。今回、死に関わる悲しい表現がありますので、ご注意ください。

俺達は奥へ進む。

死体の上を歩くのは困難を極めた。

アーデが何度も転倒し、その度に眼前に迫る死体から目を逸らした。

外からの光が届かなくなる前に俺は松明に火を灯し前方を照らした。

階段はあと少しで終わり、そこから真っ直ぐ続く通路の向こうに頑丈そうな扉が薄っすら見える。

幸いなことに通路には死体は無いようだ。

イシャルティは俺から松明を奪い取ると扉へ走った。

体当たりする勢いで扉の取っ手を掴む。

ガチャガチャと何度も回すが開かない。


「鍵が掛かっている!隊長!開けてください!私です!イシャルティです!」


鍵は内側からかけられている。

とすれば中に人がいる可能性が高い。

イシャルティは何度も扉を叩く。


「隊長!ダングレン隊長!」


だが、返事は返ってこない。

こうなったら扉を破るしかなさそうだ。


「イシャルティ。どいてくれ。」


俺が大剣を構えている事に気付いたイシャルティは頷き扉から離れた。


「せぇぇい!」


俺は思い切り取っ手部分に大剣を振り下ろした。

激しい金属音が鳴り響き、取っ手が砕け散る。

俺はさらに力一杯扉に蹴破った。

バァァンと勢い良く扉が開くと、イシャルティは俺を押し退け部屋へ飛び込んだ。


「隊長!た・・・・。」


部屋には、誰もいなかった。

正確には生きている人はいなかった。

部屋の中央に手作りの祭壇がある。

二つ並べた机に薄汚れた白いシーツが敷かれ、その上に二人の女性が横たわっている。

綺麗な服を着た二人の女性。

一人は中年。

もう一人は少女だ。


「この二人・・・。」


アーデは少女の顔を見詰める。

血の気の無い真っ白な肌。

外傷が無いところを見ると、毒で死んだのだろう。

そしておそらく、誰かが吐血を綺麗に拭き取り、汚れた服を着替えさせたのだろう。


「もしかして・・・。」


アーデは中年女性の顔を見詰める。


「ええ・・・ダングレン隊長の奥さんとお嬢さんです。」


イシャルティの目から大粒の涙が零れ落ちる。


「とても良い奥さんでした。隊の皆で良く美味しい食事を御馳走になったんです。お嬢さんはとても人懐っこくて、ダングレン隊長はいつも娘に手を出したらぶっ飛ばすって・・・。こんな・・・こんな事ってあって良いんですか?絶対に許せない・・・。どんな理由があったって、私はこの悲劇を起こした奴がいるならこの手で殺してやります。」


イシャルティの悲しみと復讐に燃える目の鋭さに、アーデは思わず顔を背けた。


「他には誰もいない様ですね・・・。」


アーデの言う通り、中央の祭壇と二人の遺体以外何も無い。

壊れた扉に触れるとアーデが言った。


「鍵は誰が閉めたんだろう。」

「ダングレン隊長だと思います。隊長はタブレ地区長でもありましたから、各避難場所の鍵は自ら保管していました。おそらくお二人のご遺体をこれ以上傷付け無い様にここへ置いて鍵を閉め、脱出する為に教会を後にしたのだと・・・。」


イシャルティは二人の遺体に祈りを捧げると静かに立ち上がり、目を見開いたまま呟いた。


「階段の遺体・・・。何かあったんだ。脱出する時に何か。」

「まだ生きている可能性はあります。行きましょうイシャルティさん。」


アーデは真っ直ぐイシャルティの目を見詰めた。


「・・・・アーデ様。ええ、行きましょう!」


イシャルティの目に少し柔らかさが戻った気がした。

人の心に呼び掛ける。

これが勇者アーデの力なのだろう。

俺達はもう一度、二人の遺体に祈りを捧げ部屋を出た。

扉を閉め、壊してしまった鍵の代わりに、持っていたナイフを取れた取っ手の穴から壁に突き刺し固定した。

そして、階段を登ろうとした次の瞬間。

ガァァァンと言う音が上から聞こえてきた。


「メイアス!」


グリムの叫び声。

俺達は階段を駆け上る。

飛び出した広間では隠し扉を守るようにグリム達が武器を構えて立っている。


「どうした!?」


俺が訊くとグリムが俺の顔をチラリと見た。


「入口から何か―。」


言い切る間も無く教会の扉がガァァンと鳴り、歪む。


「・・・何かが扉を壊そうとしてる。」


アーデが言うとリテルが頷き、アーデの背に隠れる。

再び扉に衝撃が走ると、次に鳥の様な声が鳴り響いた。


「コカトリスだ!」


ミシェルが叫ぶと、その顔には突入時の恐怖が蘇っていた。


「逃げるぞ!イシャルティ、他に出口は!?」


俺が叫ぶ。


「ありません!窓も1階は全て塞がれています・・・。それに破れたとしてもおそらく外はゾンビに囲まれているでしょう。」

「くそっ!コカトリスよりゾンビの方がましか・・・。」


ここから生きて出るには、コカトリスに気付かれずにゾンビを蹴散らして逃げるしかないだろう。


「グリム、先行して皆を誘導しろ。イシャルティ、しんがりを頼む。俺とバッガスはギリギリまでここで待機。コカトリスを出来るだけ引き付ける。さぁ行け!」


グリムが駆け出すと、勇者一行が慌てて付いて行く、イシャルティもあとに続いた。

だが、階段を半分も上らないうちに、先行するグリムが弓を構えた。


「何かいる!」


グリムは階段を上った先にある目的の部屋を見詰める。

少し開いた扉の隙間から除く無数の赤い目がグリム達を凝視している。


「・・・戻って。」


グリムがゴクリと唾を呑み込むと小声で言った。


「え?何―。」


すぐ後ろのクリアが訊き返す間も無く、扉がガタガタと揺れたかと思うと弾かれたように開き、バジリスクの大群が溢れ出て来た。


「急いで!」


グリムが叫び弓を放つ。

事態を理解した後続が一斉に階段を降りる。

俺はその様子を横目で見ると歯を噛みしめた。


「くっ・・・バジリスクだ・・・クソッ万事休すか。」


目の前の扉はもう破られそうだ。

2階からはバジリスクの大群。外はゾンビか。


「メイアスさん!逃げ場がありません!」


1階へ戻ったイシャルティが剣を抜く。

アーデ達も転げそうになりながら俺達の後ろへ隠れた。


「グリム!もういい!こっちへ来い!」


俺が叫ぶ。

グリムはいまだに階段をゆっくり後退しながら弓でバジリスクに応戦している。

だが、壁を伝うバジリスクはグリムを囲もうとしていた。


「グリムさん!逃げて!」


アーデが叫ぶ。

クリアとリリが前に出ると弓と魔法でグリムの退路を作ろうとする。


「ダメ!敵が多すぎる!」


クリアが必死で弓を放つ。


「もうヤダァァ!」


リリが泣き言を言いながら魔法を放つ。


「グリム!」


俺が叫ぶとグリムはチラッと俺を見て微笑んだ。

そこへバジリスクが一斉に飛び掛かる。

それを見計らった様に、グリムは階段の手摺を踏み台に空中へ飛び出した。

空中で体を捻ると弓を引き、先に球状の物が付いた矢を放った。

矢はバジリスクの赤い目を目掛けて飛び、ぶつかった瞬間小さな閃光を発したかと思うと大爆発を起こした。

爆音が教会内に響き渡り、俺達は耳を塞いだ。

グリムは音も無く1階へ着地すると俺の顔見てニヤリとした。


「ビビった?」


そう言ってグリムは俺達の元へ駆け寄ると再び弓を構えた。


「お前!爆発するなら先に言っておけよ!耳が馬鹿になるわ・・・。」


俺はキーンと響く耳鳴りを振り払おうと頭を振った。


「メイアスさん!」


槍を構えたミシェルが叫ぶ。

グリムの起こした爆炎を突っ切るようにバジリスク達が1階へと駆け下りてくる。

あれだけの爆発を物ともしないくらいに二階の部屋からどんどん溢れてくる。


「来るぞ!」

読んでいただき有難うございます。次話も読んでいただけたら幸いでございます。

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