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タブレ地区 ④

今回も少し残酷な表現がありますので、苦手な方はご注意ください。

「何てことだ・・・街の人達が・・・。」


イシャルティが苦悶の表情を浮かべながら剣を抜いた。

近付くにつれて見えてくるその姿には生命が感じられない。

ゆっくり歩いてくる人々の目は白く濁り光が無く、バジリスクの毒による吐血が衣類にベットリと付着している。


「し、死体・・・?」


ミシェルが俺達に習って槍を構えた。


「リリ・・・怖い。」


リリがミシェルの背にしがみ付く。


「グール?」


勘の良いクリアはグリムの隣で同じく弓を構える。


「いや・・・グールじゃない。」


俺が答える。

グールは魔族が寄生している。

だが、奴らとてバジリスクの猛毒に侵された死体に寄生する事は無い。


「おそらく・・・ゾンビだ。」


俺達は逃げ場のない一本道で前後をゾンビ達に囲まれてしまった。


「ねぇ、ゾンビって事はさ・・・。」


グリムが何かを言いかける。

言いたいことは分かっている。

それがこの一連の出来事の中核だろう。


「ああ、間違いなく黒幕がいるな。」


俺が言う。


「く、黒幕?」


アーデが訊く。


「死体が動く理由はこの世界で2つ。魔族が寄生するか、人が操るか。ゾンビは後者だ。」


俺が答える。

そう、あれらがゾンビという事は、操る誰かがいるという事。

そして、おそらくはノン国をバジリスクに襲わせたのもそいつだ。


「もしかして、すべては何者かが仕組んだ事・・・という事ですか?」


イシャルティが黒幕を思い、怒りで歯を食いしばる。


「そうだろうな。バジリスクが国を襲うなんて自然では有り得ない事だ。最初からおかしいと思っていた。これで確信したよ。」


俺は大剣を強く握り締めた。


「メイアス!突破するぞ!」


バッガスが吼える。

目の前に迫るゾンビ達は、街の人達の悲しい姿。

死んでもなお苦しみ続けている様なその姿はあまりにも悲痛だ。


「リリ。ゾンビは火に弱い。お前の魔法で突破口を開くんだ。」


ミシェルにしがみ付くリリがビクリとした。


「やだ・・・やだよ。出来ない。」


リリは目を強く瞑り、ミシェルに隠れた。

見れば勇者一行の顔は皆蒼白で、完全に戦意を失っていた。


「仕方ないか・・・。」


俺はリリの頭を軽く撫でると大剣を構え前に出た。

俺は甘いな。


「グリム、イシャルティ、後ろを頼む。俺とバッガスで突破口を開く。全員離れるんじゃないぞ!」


そう言い終わると同時に俺は飛び出し大剣でゾンビを薙ぎ払った。

嫌な音と伴に血や肉片が飛び散る。


「胸糞悪りぃな。」


目の前には10歳くらいの少女。

可哀そうに、苦しかっただろう。


「・・・ごめんな。」


俺は大剣を振り下ろした。

目の前で起こる惨劇にミシェルがうずくまる。


「うぅ・・・うぇぇぇぇっ。」


ミシェルが堪え切れずに吐いた。


「ミシェルぅ・・・うぇーん。」


隠れる物が無くなりリリが泣き出した。


「バッガス急ぐぞ!」


俺はそう言いながら老人の首を撥ねた。

バッガスは巨体をうならせゾンビ達を蹴散らして行く。


「今だ!行くぞ!」


俺の掛声で一斉に走り出す。

人間の内臓を踏む感覚が足を伝う。


「吐きながらでも泣きながらでも進め!」


俺は大剣を振るい皆が逃げるまでゾンビを切り続けた。


なんとか街外れまで走り続けた俺達は、やっとのことで教会が見える場所まで辿り着いた。

疲労困憊の勇者一行は皆無言で座り込んでいる。

バッガスの背にしがみ付いていたリテルの手は恐怖で固まり、離すのに一苦労した。

俺達は一呼吸置くとすぐに教会へ向けて歩き出す。

歩きながら俺は考えていた。

黒幕は誰なのか。

こんなことをする理由はなんだ。

勇者一行を狙っての事か・・・。

そもそも依頼自体が仕組まれていたとは考えられないだろうか。


「教会はもうすぐです!」


イシャルティが言う。

この男も怪しい。

いきなり同行を求めた事、タイミング良くバジリスクやコカトリスが現れ俺達が孤立した事、ゾンビを操る奴がいるとすればそう遠くは無いはずだ。

目を離す訳にはいかないな。

そうしてようやく辿り着いた教会は不気味に静まり返っていた。


「ここ・・・なの?」


グリムが辺りを警戒する。


「はい・・・教会はここしか無いはずです。」


そう言ってイシャルティは教会の戸を叩くと叫んだ。


「ダングレン隊長!私です!イシャルティです!」


固く閉ざされた戸は沈黙したままだ。


「どこか入れる箇所は無いか?」


バッガスが言う。

俺達は教会の周りと警戒しつつグルリと廻ってみた。


「駄目だ。どの窓も中から板で打ち付けている。外からの侵入を防いだんだろうな。」


俺は試に窓の板をグイと押してみるがビクともしない。

どうやら板を打ち付けた後、さらに家具等を使って易々と破壊されないように押し付けた様だ。


「バッガス。破れないか?」


怪力のバッガスならば可能だろうかと俺は訊いてみた。


「やってみよう。」


バッガスは頷くと腕を振り上げた。


「あ!待ってあそこ!」


それをグリムが止めた。指差すのは二階の窓。


「開いてますね!」


イシャルティが嬉しそうに言う。


「バッガス。私を放り投げて。」


グリムは弓を背負うと短剣を手に取った。


「よし、グリム。中から入れる方法を考えてくれ。」


俺が言うとグリムはウインクをしてバッガスの手に乗った。


「いくぞ!」


バッガスの掛声と共にグリムの身体が宙に舞う。

そのまま音も無く二階の窓の中へと消えて行った。


「グリム!どうだ!?」


俺は声を張り上げる。

だが、返事が無い。


「おい!どうした!?」


もう一度声を張り上げる。

次の瞬間。

ドォォォォンと言う強烈な爆音と共に爆風が二階の窓から噴き出した。


「きゃあああ!」


リテルとリリが同時に叫ぶ。


「な・・・・!グリムゥゥゥ!」

読んでいただき有難うございます。次話は、現在本業が立て込んでいるので、少し間を開け投稿する予定です。もし余裕があったら投稿しますので、読んでいただけたら幸いです。

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