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17話 村長宅にて その壱

家の中へと入ると、そこは広い板張りの部屋だった。

なんか公民館っぽいというか、実際に村の公共的な用事で使う場所って感じだった。


「さて、あらためて はじめましてここの村長をしております、ロッドです。」

エルフの女性は木の机の前に立ったまま、向かい合う椅子にに座るように勧めてきた。

「はじめまして、タダといいます、あー・・・・旅の途中で迷いまして、うろついている内に

 ここらにたどり着いたようでこの辺のことは地理から常識から

 判らないことばかりでして、失礼な事を言うかもしれないのですが・・・・・。」

「ほほう、それはそれは・・・・・大変な事ですな、人族とお見受けしますが、そちらは・・・・?」

シングとペンタに視線を向ける村長が聞いてくる。

「シングドゥング・ドゥラスターフだ、これは息子のペンタルディム。今はタダの護衛として雇われてる

 まぁ、正直なところ タダに護衛なんていらないんだろうけどね。」

「ほうほう・・・・、それはどういう事でしょうか?」


「村長、タダ殿は凄腕だ、私は彼がホーンドベアを一人で一撃で倒したのを見た。」

そこにハニャさんが脇から会話に入ってきた。


「一撃・・・・? それは・・・・・。」

「事実だ、この目で見た、それに治療魔法も使われる。」

「治療魔法まで・・・・・、。」


あー、とりあえず、すでに見られちゃったのに関しては下手にごまかせないか・・・・。

「ま、まぁ 治療に関してはシングも使えますし、な、シング。」

「ん、 あ あぁ、いまだ低位でお恥ずかしい限りだが神官戦士として修行し、傭兵を生業にしている。

 出来れば・・・・・ 治療師として村に住めれば有難いのだが・・・・ この村には治療魔法の使い手が

 いないと聞いたのだが・・・・・。」

お、いきなり そこまで言っちゃいますか、シングさん。


「ふーむ、なるほど・・・・・、私達の村にとっては良いご提案ですな。とてもとても 有難いお話です。

 普通ではありえない程に。」

顔だけ笑ってる風に見えて、目が全然 笑ってない。感情が読みづらい。

どうにもその、なんというか苦手なタイプかもしれん。

お互いに無言になり、ちょっと嫌~な空気が流れて


「村長 ?」

「ロッド ?」

ハニャさんとビョルンさんが同時に村長に声をかける。


「何か問題があるのか ? 治療師が村に住んでもらえるのなら願ってもない事だろう?」

「そうだ、薬だけでは どうしようもない事はいくらでもある、嫌 実際あっただろう?」


ふぅ・・・・・ と息を吐いて村長は体から力を抜いたように見えた。

「そうですね、貴方達が揃ってそう言うという事は大丈夫ということなのでしょうね。」


「なにか、問題でもあったのか? 彼らはイリーだけでなくクキとコナーも助けてくれた恩人だ。」

ビョルンがそう言うと、ハニャが頷きながら

「彼らの周りには悪い風はない、良き行いをする者には良き流れに押されるものだ。」


「ふふふっ、流れに逆らうのは苦、多くして 果、少ない ですか。」

「うむ、詳しい事はのちのちで良い、我らは恩人を客人として遇すべきだ。」


当の俺達をほったらかしにしての、彼等の会話で 彼等は勝手に何事かを納得したらしい。

正直、会話の中のヒントが少なくて 村長に何を警戒されてるのか判断出来なかったので

こちらからどこまで話して良いものか判らなかったんだが、まぁ とりあえず

村への滞在は許されたと思って良いのかな?


「そうですね、まずは部屋を用意しますので、食事の支度が出来るまでゆっくりなさって下さい。」

「あ、ありがとうございます。」

「レーファ、お客様を客間に案内してもらえる?」

村長が奥の方に向かって言うと すぐにドァが開かれて中年の男性が顔を出してきた。

「続きの二部屋でいいんだね、マーグ?」

「そうね、お子さんのベッドは一緒でいいかしら、シングドゥングさん?」

「あ、ああ、面倒をかけてすまない、歩き詰めだったんで休ませてもらえるのは助かるよ。」

「ふむ、大変だったようですね、湯を用意しますので使ってください。」

レーファと呼ばれた男性・・・・おそらく見た目からだがエルフとかではなく人種?

柔らかな人当たりの良さそうな、使用人? あれ? だけどさっき村長のことをマーグって呼び捨てで

呼んでたような・・・・・、自動翻訳が効いてないって事は尊称とか役職名じゃないんだよな?


「ああ、紹介しておきますね、私の夫の・・・・・」

「ロッド・レーファです、マーグ・・・ マーガレット・コート・ロッドの夫です、よろしく。」


奥のドアから廊下を通り、案内された部屋に入り、シングとペンタはベッドに腰を下ろしてやっと肩の力を抜いた。

そして俺はレーファさんに続き部屋になっている隣の部屋に案内された。

「タダさんはこちらをお使い下さい、お湯はこのベッドの脇においておきますね。

 なにかあれば声をかけて頂ければ 私がまいりますので。」

「気を使って頂いて申し訳ない、えーっと、その レーファさんって村長さんのご主人というか 

 旦那さんなんですよね? 手を煩わせてしまって・・・・・」

「お気になさらずに、小さな村ですし、そんな格式のあるような家でもないんですよ。」

笑いながらシング達の部屋に湯の入った桶を運ぶレーファさん。

この家って かなり大きいと思うんだけど、使用人とかっていないのかな?

レーダーには・・・・・家の中には村長とレーファさん以外は俺達とハニャさん達だけか。

家が大きいのはさっきみたいに村の仕事として使うからってだけなのかな?


っと、お湯か、確かに土埃やら草やらで汚れてるし、有難く使わせてもら・・・・

いっけねぇ、ホーンドベアの死体、どうしよう? これってアイテムリストから出し入れする時に

手に触れてるから、アレを出すと血で汚れるんだよなぁ。

お湯を使うならホーンドベア(の死体)をだしてからのがいいか・・・・。


「あー、すいません 言い忘れてたんですが ホーンドベアをお渡ししておきたいんですが

 適当な場所ってありますかね?」

「ホーンドベア? 表に持ってこられたんですか? 解体するなら共同の水場が使えると思いますが

 運ぶのに人手が要りますね。ビョルンさんに誰か手配を・・・・・」

「あ、許可して貰えれば自分で運べますんで、案内をお願いしてもいいでしょうか?」

「は、はぁ じゃあマーグに言ってきますので、少しお待ち頂けますか。」


広間で話を続けていた村長とビョルン、ハニャさん達にレーファさんが声をかけると

すぐに話が通ったようでハニャさんが水場に案内してくれる事になった。


村長の家から裏側に進み、畑の間の畦道を進んで行くといくつかの平屋を過ぎた辺りで

少し広くなった場所に出た、ここが水場なのかな?


だいぶ薄暗くなってきているので見えずらいが、どうやら竹の様なもので水を引いているらしい。

村の共有の場所らしく、見た目で言うと神社の手水舎みたいな造りになっている。

下手に洗い物をするらしい場所があり、その手前が広く石を敷き詰めたようになっていて

そこにホーンドベアを置く様にハニャさんに指示された。

誤魔化す為に腰のポーチあたりに手をあててから、アイテムリストから選択してホーンドベアの死体を出す。

あー、やっぱりアイテムリストから出し入れする時に触れてないと駄目な所為せいか

手に血がついちゃったな。


「手間をかけさせてすまないな、後の処理は村の者に頼んでおくから

 村長の家に戻ろう。」


ハニャさんに先導され村長宅に戻り、やっと湯を使うことが出来て一息つけた。

「なぁ、シング お前さん、ここの村に落ち着くつもりかい? 最初は・・・・なんて言ったっけ

 別の村まで行くって話じゃなかったっけか?」

「ん? フェリオの方がでかいからねぇ、何とか入り込めればって思ってたんだけど

 ここが思ってたよりもしっかりしてそうな村だし、治療師がいないってのも都合が良いからねぇ。」

「やっぱりでかい街のほうが良かったわけ?」

「そりゃ、こんな辺境だもの、村の規模で安全に暮らせるか全然変わってくるだろう?」

「ふーん・・・・・」

確かに、村とはいっても丸太で作られた塀といい 想像してたものよりはどっちかって言うと

砦っぽい感じだしなぁ、ここの中なら魔獣とかにも安心していられるのかな・・・・・


しかし、魔獣は入って来れなくても人は別という事をすっかり忘れていたのが

のちのトラブルのスタートになるとは、その時の俺には予想できないのだった。


追われる身のシング達もそうだったが、俺というのが どのくらい怪しいのか

俺自身にはいまだによく判っていなかった。
















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