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二
歌い終わった椿に人々が口々に賞賛の声をかける中…。
――――失敗したな…。
景政は一人、心の中で少し後悔した。
ああいった形でしか想いを交わせなかったとはいえ、彼女の歌声を他人に………しかも一番憎い奴にまで聞かせるはめになったことに。
自分が聞きたかったというのが一番の原因だが、あんなに綺麗な歌声を自分以外の者にも不覚にも聞かせてしまった。
無意識に浮かれていたのかもしれない。
――――安易に提案するものではないな
そう。
彼女の魅力など、引き出してはいけない。
あの男に興味を持たれるようなことは避けなければいけなかった。
椿はまだ、あの男の嫁候補なのだから。




