台風の影響②
台風で一泊を過ごすことになって、僕の気持ちは安定していた。
三人は僕のボディガードとして頑張ってくれている。
どんな時でも必ず、二人が僕の側にいるようにしてくれているのは嬉しいけど、そこまで張りつめているといつか倒れてしまうんじゃないかと本当に心配だ。
三人に対してしっかりと感謝の気持ちを伝えておこう。
今回のことで三人の負担をかなり増えてしまっているのは事実。
ここまでしてもらっているわけだし、何か欲しいものがあれば渡したりしてみるのもいいかもしれない。それとなく聞いてみよう。
三人には一人一人と話す時間を設けたいという理由で二人きりにさせて欲しいことを伝えたら、快く受け入れてくれた。
―――――――
まずは花里さんと二人きりになった。
「花里さん」
なるべく花里さんの目を見て、自分の気持ちがしっかりと伝わるようにする。
「いつも僕の側で護ってくれてありがとうございます」
「葉山くんがお礼を言うようなことじゃないよ。だってあたしはあたしの意思で葉山くんの側に居るだけだから」
「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、しっかりとお礼は言っておきたいんです。日頃の感謝は伝えておかないと、相手には伝わりませんから」
言葉は口から出して、相手に伝わらないと意味がない。そうでもないと相手には自分の気持ちが伝わらず、関係がねじれてしまうなんてことはある。
「そこまで言うなら素直にその気持ちを受け取るね。ありがとう」
「本当にありがとうございます」
まずは言葉だけでも気持ちを伝えられたのはよかったと思うべきかな。
「それと花里さんには日頃からお世話になっているし、何か僕にできることだったり、買えるものならお礼として渡したいんだけど…」
「あたしは本当にいらないと思ってるけど…そういう答えを葉山くんは求めているわけじゃないよね」
ここは遠慮なく、何か欲しいものを言ってもらえた方がこっちとしても気が楽になる。
『いらない』の一点張りをされると僕としても何をしたらいいのか分からない。前世で思い出せる範囲の自分という存在はあまり異性に対して贈り物をしているような人間ではなさそうなのだ。
そうなると適当に僕が選んだプレゼントだと逆にいらないものを渡してしまう可能性も高い。それよりかはしっかりと相手に好きなものを聞いてから渡した方が失敗する可能性は限りなく、ゼロに近くなる。
「だったら…少しだけ葉山くんとくっ付いてもいいかな?」
「はい、それが花里さんの望みなのであれば」
すると花里さんは少しずつ僕との距離を縮めていき、あっという間に触れ合う距離まで来た。
翌々、考えるとここまで女性に近付かれたことはほとんどない。仮想空間ではもっと密着することもあるけど、あくまであの世界は現実じゃないからこそできる。
生身の体でここまで異性と密着するのは…さすがに緊張する。
「ほ、本当にいいんだよね?」
「はい。大丈夫です」
これを花里さんが望んでいるのであれば、その望みを叶えてあげるのもお世話になっているものの責任でもあると思う。
花里さんはなぜか背中を合わせてきた。
「花里さん?」
「こうしていてもいいかな?」
「それが花里さんがしたいことならいいですよ」
「ありがとう、葉山くん。しばらくこうさせてもらうね」
背中越しにお互いの体温を感じれる。
その後もずっと背中を合わせながら他愛のないような話をしたりした。勉強についてやお互いの好きなことなど、本当に普通の会話。
でも、そんな普通の会話が心地よかった。
友人と呼べるような人と話すのがここまで良いものだとは思ってもいなかった。
異性と普通の会話を肌が触れ合うような距離感でできる程に信頼関係を築けたことが嬉しい。
「本当にいつもありがとうございます。僕のために」
「…これはあたしが葉山くんのことを護ってあげたいと思っているから、やっているだけだよ。だから、葉山くんは護れていればいいの。絶対にあたしが葉山くんのことを護ってあげるからさ」
前世だったら花里さんの言葉は男性が女性を口説く時に言ったりするんだろうけど、この世界では女性の方が言ったりするんだろう。
少し変な気分になるものの、花里さんの『絶対に護ってあげる』という気持ちは痛い程伝わって来る。
改めて、花里さんと出会えてよかったと思った。




