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桃髪の暗殺者  作者: 村山龍香
#4 赤髪の技術屋
12/54

11.高すぎる修理代

「で、どうするんですか?龍一さんから3万ドル回収するんですか?」

「んなことできるか。あの神社に風穴開けようとした情緒も知らねえボケナスどもからせしめるんだよ。火中の栗を拾うとか言ったがこっちから丸焼きにしてやる。修繕代くらいは払わせるよ、身をもってな。…でだ。龍二、お前はこの女と一緒に奴らのアジトを割り出せ。私と真希と助っ人一人で全員膾にしてやる。証拠隠滅もいらねえ、ただの戦争だ。」

「助っ人?」

「お前は会ったことある奴だよ。」

そういうと、再び電話をかける。

「もしもし、舞花か?」

『ああ、龍香か?一つ言っとくけど桜花なら貸さないよ。賭博と飲酒の罰の執行中』

「あんな馬鹿に用ねえよ。修繕代代わりにあの馬鹿どもに天罰を与えに行く。いくら納めりゃ来る?」

『…200万で考える。桜烏の試し斬りも兼ねてな』

「即金で出してやる。悪くねえだろ」

『わかった。社務所で打ち合わせよう。』

「うちのデカブツに奴らのアジト割らせるから、割れたらまた電話する」

『わかった。切るぞ』

電話は切れた。電話をかけた相手の名は、真希は知っている。

「舞花って、あの黒い巫女服着たあの舞花さんですか?」

「そうだよ。他に誰がいるんだ」

「あの人そんな強いんですか?桜花さんの方が強そうな」

「真希、人を見た目で判断するなよ。…見れば納得するよ」


それから数日後。如月神社の社務所に、女達が集まった。

「…さてと。今回は一週間くらい前にこの神社に鉛玉ぶち込みやがったアホ共の掃討を目的として三人で突撃に行く…真希は見学に近いから実質二人だな。」

「龍香さん、でも私達三人じゃ銃に対応できなくないですか?リボルバーじゃ流石に数人銃遠くから打たれたらいくら腕あっても」

「その通りだよ。そこは悩みどころなんだ。」

舞花はその中で一人頭を抱えていた。警備会社の二人が悩みだすと同時に、舞花は顔を上げる。

「…仕方ないか。実はタダで雇えて腕が滅茶苦茶立ってありとあらゆる銃火器に精通した奴がいたりするんだ。そいつ連れてくる。」

「そんな都合のいい奴いるのか?タダでってのが怪しいな」

「タダで連れてこれるよ。あまり見せたくはないんだけどな。」

「まぁわかったよ。ただタダでってんなら追加料金はなしだぞ。」

「別にいいよ。弾薬代はそいつから召し上げるし。」

随分龍香にとっても舞花にとっても都合が良すぎる話であったが、それは当日に納得する形となる。


その2日後、シェリルの追手の組の殲滅計画を実行する当日。

「...よし、準備は整った。龍二、今日は下の事務所にいろ。うちの事務所に連中が殴り込みに来たら表の社員と一緒に追い払え、いいな?」

「了解です姐さん。任せといてください」

龍二は表向きの事業においても籍があり、龍香と代わり番に表の警備会社にも顔を出している。賞与の支払いやあまりにも顔を出さないことを不審がられないための仕事のうちの1つ。そして龍香が表向きの事業を警備会社にしてる理由が、有事の際正規の警備員による相手側武装集団の無力化のためである。龍香達の事務所に踏み込もうとすればたちまち裏社会とは縁のない男達が抑え込みにかかる。防衛策の1つであった。

「シェリル、悪いが私らが帰ってくるまで外出は控えてもらう。お前がこっから出てったら私らはタダ働きだ。奥の部屋で大人しくしてろ。電話には出るなよ。」

「はいはい。わかったわ。」

「じゃ、真希お前が運転な。2人乗せるからハイエースで行くぞ」

「わかりました。現場では何すればいいですか?」

「お前は何もしなくていいよ。だから運転させるんだし。ただ足だけは引っ張るなよ。見学はさせてやるけどトチッて攫われたら迷いなく私らは見捨てるからな。振りじゃなくて本当に助けない。護身だけは自分でやれよ。」

龍香の冷たい語気に嘘は無いことは付き合いの上でわかっている。その言葉に頷く以外にはない。

「...はい」

「行先はとりあえず如月神社だ。」

先の断りを入れた上で、2人は神社に向かった。


如月神社では舞花が既に待機していた。

「時間の五分前か。キッチリしてるな。」

「余計な時間は使いたくねえからな。ところで銃使えるタダで雇える助っ人ってのはどいつだ」

「ああ、それね。出てきな。」

そう言うと、社務所から出てきたのは茶髪に前髪を左右非対称に分けた大柄な巫女。龍香がその女の姿を見違えるはずもなかった。

女は、如月桜花だった。しかし戦いに向かうというのに普段使っている太刀は背負わず、代わりに大きめのケースを持ち、後ろには散弾銃(ショットガン)を背負っている。

「は?桜花?ていうか黒烏はどうした。」

「あんな荷物いらねえよ。...まさか()()で呼ばれるたァ思わなかったよ。しかもタダ働きとはふざけてやがる」

「うるさいよ桜花。地下室で石畳の上に正座させられたり気絶するまで水も飲めずに護摩行やらされ続けるのとどっちがいいんだ?うん?」

「へいへい。弾薬代くらい連中から巻き上げられるように頑張るよ。は〜金がかかる」

愚痴りつつも、ケースを車に積み後部座席に乗り込む。舞花も続いて乗り込み、車は敵地に向かい進み始めた。



「なんであんな所に喧嘩を売ったんだ!いくらシェリルの技術が惜しいとはいえあんなとんでもない神社に...!」

「で、でも半殺しでもいいから連れ戻せって言ったのはボスじゃ」

「時と場合によるって言葉を知らねえのか!うちらみたいな下部組織があんな所に攻め込まれたら助けても貰えないし一貫の終わりだ!!」

さる海外マフィアの日本の下級支部では今後の身の振り方を論議していた。議題は数日前に鉛玉を打ち込んだ神社とそこにたまたまいた殺し屋の女をどうするかについて。

日本の裏社会で龍香はそれなりに名前が知れている。どこの組にも所属せず、承諾した依頼は確実にこなし用心棒としての心得も部下共々非常に長けているということを、下っ端はともかく小規模とはいえど組の幹部レベルならば知らないものの方が少ない。

金を積んで一時的にでも味方にできればその時間は安寧を得られる、という専らの噂。しかしそれは裏を返せば。


敵に回したら例外なく死を覚悟するべき、ということ。


究極の人斬りを敵に回したことを理解しているこの組の組長は気が気ではなかった。報復に来られたら、組員総崩れでは済まない。その時待っているのは全員が暗い冷たい土の下へ帰ること。

しかし、無情にも終わりを告げる音がその部屋には鳴り響く。ドアを強く叩く音が聞こえてきた。

「もしもーし。如月神社のものですが本殿の修理代の徴収に参りましたー。大人しく鍵を開けてくださーい。」

部屋の中の空気が凍りついた。


一方、ドアの外。もちろんいたのは龍香達4人だった。

「もしもーし!」

ドアを叩いてるのは桜花であった。龍香と舞花は刀を構え、臨戦態勢を整えていた。

「間違いなく居留守だな。どうするよ、龍香?」

「こういうナメた真似する奴は普通に刻むだけじゃ物足りねえな、そうだろ舞花?」

「ああ、いっとうの絶望を与えて伊邪那美命様に相見えるようにしてやろう」

そうして、ある程度時間を開けた後。桜花は背中の散弾銃をドアに突きつける。

「喋り終わって5つ数える前に鍵開けてください。自分で死ぬか私たちの気紛れで死ぬかくらいは選ばせてあげましょう。」

そういう桜花は丁寧な口調ながらも右の口角を上げ不気味な笑みを浮かべている。普段の不良巫女としての面しか知らず、場馴れもそこまでしていない真希は恐ろしさも覚えるような笑みだった。

「...おい、丁寧に話してやってるのに聞こえねえみてえだな。...返事をしやがれこのド三一共がァァァ!!」

ついに痺れを切らした桜花が散弾銃の中に込められたスラッグ弾を解き放つ。スラッグ弾で壊したドアを蹴破ると即座に自動連射のサブマシンガンに持ち替え、見境なく見える人間全員を打ち伏せる。

「私らいらねえじゃねえか、なんだこいつ」

「これを見るのは初めてか。実は桜花は刀使うより銃使ったほうが強いんだよ。」

「畜生、こうなったら破れかぶれだ!行け!」

弾が切れたタイミングを見計らい、龍香と舞花に刀を持った男やバットを持った男が襲い掛かる。その男たちを二人は一振りで4、5人を纏めて一撃の下で斬り伏せる。一撃の下で鮮血を捲き散らし十数人の男たちは物言わぬ骸へと成り果てる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。死なない程度に加減してやる必要がないのさ。」

「こんな大勢でかかってきた割に張り合いないねえ。桜烏の試し斬りにもならないよ」

実質的に三人で踏み込んだに近しいこの状況において、真希も開いた口が塞がらない程の圧倒的な制圧力であった。人数の差など、まるで感じさせない。

「さて、残りはあんただけだ。」

「ま、待ってくれ。部下の不始末で」

「さっき嗾けたよな?言い訳をするドンに有能な部下はついて来ねえぞピザ野郎。もう部下がいたって関係ねえけどな」

「故郷に家族が…!」

「故郷の香りなら星になってから堪能しな。あばよ」

これ以上の聞き苦しい言葉を龍香は聞き入れる気はなかった。首に無慈悲に闇烏を振り下ろし、男の首と胴を切り離す。

「…さて。人も消え失せただろう。財産全て巻き上げてこの地下室の入り口完全に塞いでずらかるぞ。異人どもの地下墓所カタコームをこんなところで作るとは思わなかったよ」

「龍香、これだ。米ドルだけど10万単位であるね。日本円にすれば今回の損失位は補填できるだろう」

「半分やるよ。半分で私の労賃くらいにゃなるだろう。2万ドルなんてはした金でこんなゴミ共斬れるかってんだ。持ってなきゃ最悪だったからリスキーだったけどな」

そうして家探ししている中。舞花の斬った中の1人が呻き声を上げながら動き始める。しかし、その力なく動く男は武器を求めては動かない。

「助け…助けて…くれ…」

「舞花、お前殺り損ねてんじゃねえか。神職のし過ぎで腕鈍ったんじゃねえのか。」

「あらあら。前なら一振りだったんだけど。」

「訓練ぐらいしとけよ。おい真希、仕方ねえから()()()()()()。」

「はーい。」

真希が返事をし、救いを求める男に歩み寄る。男を前にしてしゃがみ、男に笑顔を向ける。

「怖かったでしょうね。痛くて辛いですよね。()()()()()()()()()()

笑顔のまま、内ポケットから拳銃を取り出し発砲する。乾いた音と共に男の眼球を貫き頭蓋骨を貫通した弾丸は男の脳漿を周囲に撒き散らす。

「うふふ。何もしてないと仕事してる感覚ありませんからね」

発言に相対して平気で男を過剰攻撃オーバーキルした上にその結果生まれた新たな骸に対し恍惚の笑みを浮かべる真希に、舞花は恐怖を覚える。とてもその振る舞いは、20を過ぎてもいない少女のするものではない。

「…龍香、あの子よく連れ回してるなとは思ったけどお前どういう教育したんだ?怖いんだけど」

「刀人に向けて振り回す刀鍛冶の巫女には負けるよ。あのぐらい価値観ぶっ壊さねえと殺し屋なんかできねえだろ。…よし、取れるもんは取ったし帰るぞ。修繕代くらいはこれで補填できるだろ。あとは情報売る頭脳職の仕事だな。」

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