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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
1章 旅立ち
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9.護衛のお仕事

 クァン村への往復護衛依頼を受け、片道一日半で着く。依頼料は5万200ビタ、高いのか安いのかいまいち分からないけど、カイがこれでいいというなら問題なし。

 集合場所の村の入り口で近くでゆっくりしていると何事かと道行く人はこちらを見てくるけど、カイが堂々と車体に座っているので止められる事はない。


「ところでギルド登録は何で決めたの?」


 他の人に聞こえないようカイに小声で話しかける。


「私が女である事を一目で見抜き、一手剣を振るったが受け止めて見せた。 あれなら信用できるので登録した。 何よりもギルドマスターは先ほどの女傑だ」


 ギルド内でいきなり剣を振るった上で登録、それも先ほどの女性がギルドマスターと言うのだから、なんか常識が違いすぎて混乱してくる。


「カイがそれで良いなら登録はいいよ。 それとリヤカーに積んでいるもので今回追加で稼ごうと思う」


 カイはリヤカーの上に乗ると扉を開いて中を確認しすぐに用途に気付いたようだ。


「あぁ、これはトイレか。 移動できるのは便利だが、周囲を警戒しにくいのは欠点だな。 仲間が居なければ使える代物ではない」


 トイレから出ると次はテントの中を軽く覗きこんでいる。


「こちらは個人用の天幕か。 面白いがこれも仲間が居なければ使えないな。 両方とも今回の依頼中なら使えるだろう」


 柔軟だけど実に戦士らしい考えというか、説明されれば凄く納得できるというか、やはり平和ボケしている世界から来た自分とは違う。


「寝るのは車内の方が安心だが、トイレは使えそうだ。 オレが入っている間は周囲を警戒してくれ」


「わかったよ。 ところで鎧だと脱ぐの大変じゃ」


「来た。 7人」


 カイの言葉に黙ると村のほうから5人の男達と2人の女達が馬車と共に向ってくる。ファンタジー的に見て男達は3人が戦士で2人が魔法使い、女は2人とも戦士で槍使いみたいだ。


「そちらが硬殻のギルドから来た奴か。 優男とは弱小ギルドは人手不足かよ」


 少々柄が悪い男がこちらを睨みながら話し続ける。


「まっ、弱小ギルドは俺達 森の騎士 の手伝いをちゃんとするんだな」


 カイはまったく相手にしていないというより馬鹿な男を相手にする気が元よりない。自分はカイに憧れに近いものを持っていたのでイライラするのだが、喋る訳にもいかずただじっとしていた。

 小太りな商売顔が張り付いた商人が馬車から降りてくる。


「まぁまぁ、それでは依頼内容を最終確認しますよ」


 黙ったまま雇い主である商人の話を聞いていると仕事内容が分かってきた。

 隣村までの馬車と大きな荷馬車1台と馬車1台の護衛、依頼料は前払いで一人8万 後払いで10万の合計18万、馬車なので片道1日半掛かり、食料は依頼主持ちで護衛も8名で草原の道を通る。ということらしい。


「よし、それじゃ俺達が前衛と中衛をやる。 女達と硬殻のギルドから来たお前は後衛だ」


 襲ってくるのは盗賊と獣、護るのは依頼主家族と荷物、食料は雇い主である商人持ち。後の護衛方法はこちらに任せるらしい。ただ良く分からないのが男達は固まって話をしているのに、女2人は話に加わらず離れた場所で状況を見ているだけ。同じギルドなら出発前に打ち合わせの話位してもいいと思うのだけれど、もしかしたら仲が悪いのかも知れない。

 出発するときには馬車の前に3人と挟むように2人、荷馬車の後ろに3人の護衛体制となった。一言も話さないので詳細はわからないけど、お互い牽制しあっているのか、どうも男達と女達の雰囲気と言うか空気が悪い。

 最後尾をリヤカーに載せられた荷物を引っ張りながら走っているので、後ろから襲われるとしたら自分が一番なのが少し怖いけど、ただドラゴンが相手でも歪む程度だったので獣や盗賊くらいなら傷がつくくらいで耐えられると考えて大人しくしている。

 半日ほど走り続け、夕刻になると馬車が止まる。木の板や杭で囲まれた簡単な野営地らしいものが作られており、普段から往復するときはここを利用しているみたいだ。


「今夜はここで休息をとるが、夜番は前衛・中衛・後衛の順に行う。 休憩場所は勝手に決めてくれ」


 馬車と荷馬車を野営地に入れると遅れて野営地に入ると門が閉められる。本当に小さな野営地で囲いとヤグラ以外はキャンプの跡があるだけで何にもない。

 男達は薪を組むと手ごろな場所に陣取ってしまう。なんというか余り協力的とは思えない。


「リョウ、あのあたりを踏み固めたらトイレとテントを降ろしてくれ」


 言われたとおり雑草が生えている周辺を数回往復して踏み固め、その後轍になった跡を軽くカイが踏み固めなおすとその上にトイレとテントをリヤカーから降ろす。

 興味を持ったのか女戦士の二人が遠めに見ているが、ギルドが違う上に見慣れぬ物に若干警戒しているようだ。


「使ってみるか? 移動式トイレと小型天幕だ」


「トイレ? それが?」


「本当なら便利ね。 ちょっと使わせてもらおうかしら。 扉を見張っていて」


 カイと同じように短く髪を揃えた女戦士はトイレに入るともう一人の短髪の女戦士が少し離れた場所で見張っている。少しして満足そうに出てくると2人は交代した。


「あれは便利ね。 でもあなたのものだしやはり幾らか支払った方がいいわね」


 そう言うと銅貨で200ビタ、二人合わせて400ビタを取り出すとカイに渡した。

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