86.復讐者
「……そうだ。 娘をそんな眼にあわせた連中を……、そして殺したあんたを許せない!」
再び剣を握り締めるとゆっくりと立ち上がる。
「そうだ。 怒りで体を動かせ、死のうとせずに敵を殺す事に動け!」
再び怒りの表情でカイに斬りかかる。なんとか目で追える位の早さだけど、体ではたぶん反応できない剣撃が始まり、念動力で止めることも出来ずただ眺める事しか出来ない。
でも止めたほうが良いような、カイにしては妙に煽っているし、何か理由がありそうだから止めないほうが良いような。
それから相手の女性が体力切れで動けなくなるまで数分間、剣同士のぶつかり合いで激しい火花が飛び交う戦いが行われた。
少しずつ火花が散る量が減っていき、女性の剣士が離れる。
「少しは怒りを吐き出して落ち着いたか」
「…………」
肩で息をしながらその場に座り込んでいるけど、その眼はずっとカイを睨んでいる。
鬼気迫るものがあって、視線がこちらに向いていないというのにとても怖い。
「オレは奴らを壊滅させる為に行動しているが、仲間に成れとは言わない。 奴らを叩く手助けをしろ」
「誰が……、娘を殺したあんたなんかと」
「では一人でやって何も出来ずに死ぬか? オレが金を出してやるからアルスト教を叩く組織を作れ。 全てが終わっても気持ちが変わらないなら、その時オレを殺しに来い」
「……私はあんたを殺すよ。 それでも組織を作れって言うのかい」
「そうだ」
少しの間沈黙が
「分かった。 アルスト教の奴らを潰すまでは、あんたを殺すのは待つ」
無理な気がするけど、素人目に見てもカイは余裕を持って防いでいたし、相当腕をあげるか毒でも使わないと不可能じゃないかなぁ
「リョウ、中にある金の入った袋を全部出せ」
言われたとおり、車内に入っているお金の入った大きな皮袋を2個取り出す。
幾ら入っているかは知らないけれど、依頼を完了したり魔物の素材を売ったり、簡易トイレの権利費をもらったりしたから、結構な金額が入っているとは思う。
「そいつ、ゴーレムだったのか」
「これを使って、武具を揃えるなり人を雇うなりしろ。 支部を潰していればいずれオレとまた会うことになるだろうが、それまで生き残り復讐することだな」
「ふんっ。 言われるまでも、生き残ってあんたを殺してやる!」
皮袋を掴むと女性は歩いて去っていった。
少しの間見せた弱々しい雰囲気もなく、ただ強い憎しみだけを感じた。
「持ち逃げ しないかな?」
「奴の頭にあるのはもう復讐だけだ。 復讐を果たすまで自殺する事も自暴自棄に成る事もない」
まさか、自殺させないためにわざと復讐者に仕立て上げた? でも、カイ自体に危険が及びそうだけど、そこは大丈夫なんだろうか。




