85.恨みは死ぬまで
鎮魂碑を刻み終えて、周りの土を固めて屋敷の前に立てる。
これで酷い目に遭っていた人たちの魂が少しでも救われれば良いけれど。
「アルスト教徒共! 私の娘を返せ!!」
突然の怒鳴り声に振り返ると鬼のような形相をしている女性が剣を持って立っていた。胸当てや額当て、手や足にきっちり鉄の防具つけた冒険者みたいだけど、話して分かるような状態にみえない。
「娘か。 居たとしたらあの残骸の下だ」
カイは屋敷の残骸のほう指差す。
これちょっとまずいんじゃ、間違ってないし嘘も付いてないけれど、まるで煽っているようにしか聞こえないんだけど。
「おのれぇぇぇ!」
剣を振り上げてカイに斬りかかって行く。
きっちり武具を身につけているのにかなり早い。今まで見たことある中で一番かもしれない。
「ほぅ」
カイは何か感心しながらも余裕を持って剣を抜いて受け止める。
「よくも、よくも娘を!」
鋭い鉄同士がぶつかり合う甲高い音を立てながら、凄い形相で剣を押し込んでいる。
「お前の娘かは知らないが、奴らの屋敷に何人も捕らえられ、性奴隷にされていた。 すまないが、ダルマにされ心が死んでいたので、楽にさせてもらった」
「そんな……」
表情が絶望したものに変わり、そのまま剣をその場に落とすと座り込んでしまった。
子を持つ親ってこんなに子供の事でこれほど感情が変わるとは思わなかった。甥と姪くらいはいたことあるけど、未婚で死んだので子供に対する感情は自分には良くわからない。
「娘がもう……」
剣を掴むと刃を自らに向けて突き刺そうと動かした瞬間、カイは剣を掴むとそのまま動かないように抑える。
「死ぬつもりなら、アルスト教団を潰すのを。 同じ者を作り出さないよう戦え」
「娘が居ないなら……、そんなことに何の意味もない……」
うーん。完全に心が折れてしまってる。親とはこういうものなんだなぁ。自分は死んだとき両親はすでに居なかったけれど、先に死んでいたら同じようになっていたのだろうか。
「娘を好き勝手に玩んだ連中が生きていて良いのか。 復讐せずに満足できるのか。 私なら相手を許さない! 決して!!」
カイなりにやっぱり怒りを持っていたみたい。
自分は、何よりも覚悟がまだ出来てないというか、怒りは覚えたけどそこまでではない。どこかやっぱり他人事になってしまっているのだろうか。




