52.男って……
噴水から溢れ出している水は、浄水器から補充した水よりも透明度が高くて、透き通り輝いてみえる。本当に湧き水というか聖水っていうものなのかも。
10分ほど経つと町長みたいな人達も集まり、女神さまをみたとか噴水が蘇ったとか口々に話している。あと少し後押しがあれば信仰として広まりそうだけど、あんまり広がりすぎても悪用する人たちが出そうで怖い。
「カイ、皆まだ残っているけど、どうする?」
服を着替え終わったカイは一休みをしていた。
「一言いっておこう。 せっかくの神事を無駄にされては困るからな」
カイがハッチを開けて出てると、何人もの人達が崇めるように集まる。
「おぉ、女神様の化身だ!」
「女神さま!」
カイはとっても嫌そうな顔をしながら砲塔から降りる。なんていうか気持ちは分かるんだけど、もう少しだけ愛想ってものを。
「オレは旅の神官だ。 女の子が女神の神官であり、加護も与えられている。 妙な事をすれば罰が下ると覚えておけ」
旅の神官かぁ。とりあえずそれで町の人たちが納得するならいいけど、大抵の人は欲を優先して話を聞かないと思うんだけどなぁ。カイは強めの口調ではっきり言っているけど、どこまで通じているかな。女神様の加護がどれくらいのものかはわからないけれど、子供なわけだし口八丁手八丁で騙しそうなんだけど。
「信仰を失い、蔑ろにすれば再び噴水は枯れる。 決して子供も噴水も無下に扱わないことだ」
今まで水路に繋がっていた川の水よりもずっと綺麗だし、水路さえ清浄に保てばそのまま飲めると思うけど、どうだろうかなぁ。今まで信仰もなくしていた人達がいきなり出来るかな。
「大事に致します。 町長としてちゃんと引継ぎ、皆にも周知いたします」
町長と名乗る人はその場に跪くように両手を合わせ、カイに祈ろうとしている。
「祈るなら噴水のほうを向け。 神官ではなく女神に祈れ」
カイは車体から降りると、自分に向って祈っている人達に噴水のほうを向くように促すと、町長たちも噴水のほうを向き直り思い思いに祈り、5分ほどして残っていた人達も町に戻っていく。
少し疲れたような表情を浮かべながらカイはため息を吐く。
「美しいお嬢さん」
なんか女性慣れしてる声の方を見ると、他の人達が祈っている中、カイの方に近づいて来る男が居た。
金髪で中々の顔が整った男、服装もそれなりに装飾もされていて、パーマー子爵邸で見た服装に少し似ているけど貴族の人かな。
でも、視線がカイの胸部に向いているし下心しか見えない。嫌な予感がするし止めた方が良い気が。
「近付くな。 切り捨てるぞ」
振り向きもせず威圧が篭った声でカイは言うけれど、それでも笑顔で近づいて来る。
誰が聞いてもかなり不機嫌を超えた声だと気付くと思うんだけど。
「最後の警告だ。 近付くと殺す」
まだ噴水近くに居た人達も雰囲気が変わったカイの声に振り向き青ざめている。
どうしよう、カイが怖くてとめられない。
「神官のお嬢さん。 そう冷たい事を言わずに」
男の腕がカイの肩に触れようとした時、カイは剣を抜いて肘から先を切り落した。
「えっ? ぎゃぁぁぁぁ!!」
数秒間何か起きたのか分からなかったようだけど、血が噴出し悲鳴を上げてその場に倒れた。




