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異世界を戦車として進む  作者: 赤崎巧
2章 歪み
307/313

307.野営地作り・最後の支部

 皆には数日は待っていてもらうため、街道の川沿いにある広場でしっかりとした野営地を作り始めた。

 広場には元々野営地のようなものがあったと思わしき木壁や石積の残骸など痕跡があるので、それを基礎にするので念動力で周囲の土や砂利に石を念動力で集めて壁を作り、獣などに対して安全な防壁を作ることになった。

 自分が念動力で木材に石や岩を混ぜながらそれを土で固め、2mくらいの土壁を淡々と作り始める。跡地なので石や岩の残骸もあるので、材料自体は割と困らず余り地面を掘らなくても支えや元になるモノはあった。


「リョウ、もう少し石や岩を加えておけ」


 カイの助言も加えて石や岩が混ざった土壁を作り続ける。ちょっとした獣くらいでは乗り越えられず、壊す事が出来ないよう丈夫に、何か所かは周囲にあった倒木や捨てられていた馬車や荷車の残骸を崩れないよう基礎に入れ込む。

 野営地を守る外壁部分が出来上がったので、次は中央に元々立っていた木一本と積んでいた丸太を使って柱にし、縄を渡して屋根の一部になる様にカイとしっかりと縛る。

 次に皆で枝だけを折って集めたものを縄に渡して屋根を作り、虫駆除と虫よけを兼ねてしっかりと煙で皆が枝葉を燻して簡易的な屋根の出来上がり。

 以前しっかり休むときに作った野営地よりも立派に、自分が野営地を作っている間に、皆は野営地の中の準備を進めていく。


「それじゃ下ろすから、気をつけて」

「はいよ。 ゆっくりだよ」


 普段は荷車の中に片付けられているなめし皮を作る道具や干し棚、そして薬の調合道具、屋台車からは燻製台や調理道具と大分物が増えてきている。

 どれも生活するために皆の大事なモノ、自作したものもあるけれど、商会で売る物を作る為に購入したり、鍛冶屋でお金を払って作ってもらったりと、ステアー商会の料理と薬の製作にはみんなも予算をかけている。

 動物の毛皮でなめし皮を作るのも、みんなの服だったり寝床だったり、時折販売したりと商品の一つ。


「籠の用の蔓はあまりないから、採取しないと」


 あとは街道で留まる時に少しずつ集めた植物の蔓を使った編み籠、余り売れるわけではないけれど、時折旅人や町のご婦人たちが買っていくので、なめす皮がなかったり移動中に少しずつ作っている。

 男爵令嬢のベレッタさんが知る刺繍の絵柄を、簡単にまねた絵柄を一つだけ編み込むだけ、それでも皆自分が使う編み籠は気に入った絵柄を編み込んでいるし、服や食べ物を入れたり使っている。


「これは違います。 この書き方では意味が変わってしまいますし、何より相手に対して失礼です」


「うー、ん。 難しいですね」

「これでいいですか?」


 ベレッタさんはデュロとアキュラさんに文字を教えている。みんな簡単な読み書きは出来るのだけれど、正しい読み書きとなるとさすがに出来ず、正式な書面を記せるのは貴族令嬢のベレッタさんだけ。

 ベレッタさんとしてはデュロは気まぐれの善意、アキュラさんには薬の製法を記録してもらい、屋敷に戻った後でも問題なく作れるようにとの考えだった。

 野営地を作り始めて三日間ほどかかったものの、丈夫な土壁の中から外を見る事が出来る簡単な台座、馬車と荷車の残骸を使った動かせる門、大きな荷車を3台は入れられる広い中に、雨が降っていても一応焚火が使える地面を作った炊事場、土壁と屋根を除けば皆が協力して作り上げた野営地、これでそれなりに安心して教団へと向かえる。


「それでは行ってくる。 皆は気を付けてくれ」


 車体の上に乗ったカイを皆が送り出してくれる中、アルスト教団支部へと向かう。








 皆と野営地で別れてから四日、アルスト教団の支部などから手に入れた地図を目安に進んでいる最中。


「こいつら!?」

「例の奴ら……」


 巡回していたらしい2人のアルスト教団員に見つかったものの、車体の上に座っていたカイが投じたナイフが首に突き刺さり大声を上げる前に首を抑えながら倒れ動かなくなった。


「そろそろだ。 準備をしておけ」


「わかってる。 もう覚悟は、出来ていると思う」


 カイが車体から降りると、自分自身の車体を変更する。

 牽引できる車両も合わせ、自分は超重戦車マウス、牽引で重戦車ティーガーⅡにティーガーⅠを選び、追加で

M24軽戦車とM4A3E8中戦車を選択し、アルスト教団支部へと続く道をカイと別れて進む。

 北西最後のアルスト教団支部、真正面から行くわけにも行かず、夜を待ってみても警戒している教団の人達が減る様子はない。

 カイには救える人がいないか見てもらうため別行動、でもカイも無事な人はおそらくいないというのが前回の支部から考えで、前回の町の時はともかく助けられた人は居ない。

 エンジン音と履帯音を立てながら道を進み、丘に作られた立派な防壁と共に、周囲には魔薬の元になる植物の畑も隣接し、この支部が大きく重要な拠点と分かる姿が見えてきた。

 そんな音を立てていたのだから、当然教団員には離れたところからでも見つかり、夜だというのに篝火で非常に明るい防壁の上には、準備を整えていたアルスト教団が防壁の上に集まっていた。


「奴がきたぞ!」

「ドラゴンを全部出せ! 一度に戦わせるんだ!!」

「武器を持てる奴はハンマーを持て!」

「特製のゴーレムも出す! 魔術師は動かせ!!」


 騒ぎが大きくなるとともに、大きな咆哮と共に双頭のレッドドラゴンとグリーンドラゴンが教団支部から現れた。

 大きな翼を羽ばたかせながら迫ってくる大きな双頭のレッドドラゴン、グリーンドラゴンは開かれた門から地面を駆けながら突進してくる。それも1体だけではなくグリーンドラゴン3体と小型のグリーンドラゴンが10体もいる。

 前にアルスト教団の支部で、ドラゴンを育てたと言っていた人が本部には新しい母竜がいるとのこと、そして他の教団で小さい拠点を放棄して支部に戦力を集めているという話、これが本部を除いてかき集められた最後の戦力のはず。

 横並びに広がりながら落ち着いて狙いを定め、遠隔操作のティーガーⅡとティーガーⅠにM24軽戦車とM4A3E8中戦車の主砲攻撃によってグリーンドラゴン2体が撃ち抜かれ倒れるけれど2体だけ、小型の10体は先頭に居る自分目掛け襲い掛かろうと大口を開ける。

 車体と砲塔の同軸機銃を撃ち始め、小型のグリーンドラゴンは体を貫かれ倒れるけれど、通常のグリーンドラゴンには効果がほとんどないらしく、そのまま超重戦車マウスの車体になっている自分にぶつかってきた。

 グリーンドラゴンは前足の鋭い爪で車体を掴みながらそのまま大口を開けて砲塔に牙を突き立てようとするものの、少し歪み傷が付くくらいでそこまで痛いわけでもない。

 エンジンを全力で回した最大の馬力の念動力で無理やり引きはがし、グリーンドラゴンを主砲の前に移動させ撃ち抜く。雄たけびを上げながら血を噴き出し絶命したグリーンドラゴンの残骸で視界が隠れる中、遠隔操作車両の視界からは教団の門から5体のゴーレムが向かってくる姿が見えた。


「突撃! あのゴーレムを撃ち砕け!!」

「行け! 全力でぶつかれ!」


 馬車ほどの大きさと丸太のような大きな角、体当たりすれば防壁とか壊せてしまえそうな形と大きさをしている。

 ただしモヒカン商会長が作ったゴーレムのようにとても丈夫なようには見えず、車輪を見ても馬車用のモノを少し大きくしたくらいでなんとなく脆そうに見えた。5体のゴーレムの上で操縦する人は、大声を上げながら命令を伝えている。

 そのまま大きな鉄製の車輪を回転させ、大木のような槍が先端についた車両のようなゴーレムが、ハンマーを持ち走ってくる教団員達よりもずっと早い足で一直前に向かってくる。

 グリーンドラゴンの死骸をどかしている間、遠隔操作している戦車の主砲で4体のゴーレムを倒すけれど、砕ける鈍い音と共に1体が自分と激突した。

 超重戦車マウスは約187トンもある上に、ただの鉄ではなくて戦争に耐えうる鋼材で作られている、だから体当たりしたゴーレム側が砕け地面に散らばっていく。

 それでも決して逃げようとせず、教団の門からはハンマーをもつ教団員が次々と出てくると、彼らの祈る神の言葉を叫びながらハンマーを自分に向かって走り振り下ろそうとする。


「アルスト様の為に!」

「神は我らと共に在り!」

「アルスト様! 命を捧げます!!」


 男性も女性も、みな大小さまざまなハンマーを持ち、機銃で撃ち倒しても死ぬことを恐れなかった。余りの多さに撃ち続けていた機銃の弾が切れてしまい、教団員のハンマーが中央に居る自分を叩き始める。

 そのタイミングを待っていたのか双頭のレッドドラゴンは空から車体に降りると、一つの頭が砲身を噛み千切ろうと喰らい付き、もう一つの頭がほぼ接触するような距離で炎を吐きながら、両前足が砲塔を引きちぎろうとしてきた。

 体を引きちぎられそうな酷い痛み、前と同じく体の内部まで焼こうとする痛み、声こそ出さないけれど絶叫を上げてしまいそうになる。逃れるために痛みで牽引戦車の操作も上手くできない状態のまま、曖昧な狙いでも構わず自分を除くすべての戦車の主砲を自分に向け撃ち始める。


「ギャァァァァァ!!!!」


 ちゃんと狙わず発砲するので双頭のレッドドラゴンではなく、自分自身にも直撃し酷い痛みと衝撃に抑えていた痛みの絶叫を上げてしまう。

 どれだけ撃ったかわからないくらい続け、噛みついたまま双頭のレッドドラゴンは翼と左前脚を主砲で吹き飛ばされ、血をまき散らしながら力が抜けた体を車体の上に載せたまま動かなくなった。

 弾かれた砲弾やレッドドラゴンの火炎の息吹によって、近くにいた教団員は巻き込まれて死んでしまい、あとは教団に施設に残っている人達だけとなった。

 体が痛い状態のまま防壁を主砲で壊し、砕けた壁の残骸を踏みつぶしながら支部の防壁内に入ると、中はアルスト教団員でも子供ばかりが広場に沢山いた。たぶん戦えないだろう子供達が多く残っていたのだろうか。


「「「アルスト様! 今お傍に参ります!!」」」


 みな声を上げ小さなナイフを胸や首に次々と突き刺し倒れていった。

 ただ虚しさだけが募るけれど、それでも無理やり止めたところで、広場に30人以上は居ただろう子友達の考え方を変えられるような力があるわけじゃない。

 他に教団員が居ないか、自分が広場の前で陣取りながら周囲を遠隔操作の車両で見て回るけれど、人の気配も何もなくほぼ教団員全員で自分に向かってきたらしいことが分かった。遠隔操作車両で警戒を続けながらも死体を集め埋葬する穴を掘り、近くにある魔薬畑を携帯放射器で全て焼き尽くしながらカイが戻ってくるのを待つ。




 夜が終わり空が少し明るくなり始めた頃に、カイが石でできた砦から眠っている女の子を1人抱えて戻ってきた。


「遅くなった。 一人だがまだ無事な子供が繋がれていた」


 デュロよりも幼い女の子、手には繋がれていたような跡や顔にはあざがある。もう誰も助けられないと思っていたけれど、1人だけでも居た事に少しだけ心が救われた気がする。

 石で作られた砦や防壁を戦車砲で崩した後自重で踏みつぶして回り、ただの荒れた残骸だけになったあと、いつもと同じように納入一覧にある桜の苗木を一本取り出し、まとめて埋葬した場所に植え、その後にカイはいつも彫っている像を一つ置いた。

 身勝手な言い分であるとは分かっていても、彼らが安らかに眠れますように。


「戻る。 いつもの姿になってくれ」


 車体をAAV7に変えると後方の扉から中に入り、用意した布団にカイは子供を寝かせた。自分は遠隔操作車両を全て元に戻し、町へとゆっくりと向かい始める。


「手に入れた地図と聞き出した話では、本部はここから南西の海沿いにある。 近くに町や村はないようだが、一月ほど離れた場所にある町で皆と別れる事になるだろうな」


「一月は少し長いかな。 普通の馬車とかだと二ヵ月くらいかかるんじゃ。 そんなところに本部が?」


「奴らなりに本部を隠しているのだろう。 だがようやく一つ終わる」


 残るは本部のみ。教団のトップである アルスト とはどのような人物なのだろう。ここまで崇められ身や命を捧げさせ狂わせる人望、よほどの人物なのだろうか。


「その子、いつ頃目覚める?」


 車内に少しだけ意識を戻すと、布団で眠っている子供の傍で、カイは少し血で汚れた服を着替え座って休んでいた。


「明日の朝までは魔法で深く眠らせ心身ともに休めさせる。 牢屋で見つけた時は、かなり疲弊していたからな。 まずは眠る事が大事だろう」


「少し、静かに道を進むよ。 何かあったら言って」


「オレも少し仮眠をとる。 何かあれば起こしてくれ」


 カイは毛布にくるまりながら壁に寄りかかりつつ眠りについた。自分は意識を外に戻し、余り揺れ過ぎないように注意しながら来た道を戻る。

ざっくりとした説明

超重戦車マウス:

ドイツ製で記録上製造された世界最大のWWⅡ時代の戦車

とてつもなく重い・ひたすらに硬い・すっごく遅い・どでかい・砲が時代の割に強い


ティーガーⅡ 重戦車:

ドイツ製でWWⅡ時代の重戦車

当時はとても重い・かなり硬い・遅い・強い


ティーガーⅠ 重戦車:

ドイツ製でWWⅡ時代の重戦車

当時は重い・硬い・遅い・強い


M24軽戦車:

WWⅡ時代のアメリカ製軽量な戦車

早い・軽い・使い易い

戦後日本に供与されました。日本人の小柄な体格にあったらしい。


M4A3E8中戦車:

WWⅡ時代のアメリカ製中戦車

使い易い・大量生産・そこそこに強い

戦後日本に供与され、一時は生産もされました。

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