283.王都での時間
カイは木像を車内で削る中で、いつもとは異なり下側から中心に向けて穴を彫り開けていた。
「とっておきって、それを使うの?」
以前にダンジョンを潜ってコアを破壊したときの欠片。中に欠片を押し込み丁寧に塞いでいる。
「これで、像を介せば今より少しだけ女神の声が聞こえるだろう」
置いてカイが祈ると像は全体から光を放ち、綺麗というか神々しささえ感じる。木を削って作った像だけど、とてもそうは思えない。
「ダンジョンコアの破片ってそんな力があるんだ」
「砕けてしまえば、残る意志を増幅する力を利用は出来る。 ダンジョンを維持する意思はすでに喪失しているからな」
二個ほど作りソミールレイル夫人に贈答する用意をしていると、昼食会、もちろん顔を出す事はないのだけれど、多くの料理を用意する事になり呼び出された。
以前と同じように庭の隅でみんなと集まり、自分は庭の隅で遠巻きに見ていると、夫人は子女などを相手に話をしていた。
やはり体調が悪いらしく、病気などについて話をしている。そばには神官の服装をしているカイとハープを奏でるアキュラさんが控えていた。
「えぇ、ですから瀉血しても良くはなりません。 私も瀉血をせずに良くなりましたもの」
「それでしたら、医術士から貰ったこの丸薬があります」
子女の側に使えていた人が、テーブルの上に箱を置くと開いた。見えないけれど何かしらの薬が入っているんだとおもう。
「その丸薬、本当に効くのかしら。 どなたかで試して効果があったことを確認しまして?」
「それは、医術士からこの病にはこの秘薬が効果があると」
時折聞こえてくるのは食事の事や瀉血の話、錬金術師や医術師から進められる謎の作用のとても高いお薬、その事を夫人は全て不要や余計悪化すると言い切り、像に丁寧に祈りを捧げては声を聴いてどうすれば良いか伝えている。
子女の人達もお礼を言っているようで、側に使えていた人がお礼らしい品物を置いて下がっていった。
ソミールレイル侯爵だって本当にイイ人ってわけじゃない。権力もあるし利権もあるし独占欲だってある、だからお味噌についても前に契約したリンド商会についても、ソミールレイル侯爵夫人が直筆の書面によって、味噌の販売について話を付けて侯爵独占になっている。
それは献上した特性バターミルク石鹸もそうだし、生地なんて絶対他で売らないように言われた。それでも他の侯爵以下の貴族や商会に、襲われないという安全と引き換えで決して悪い物じゃない。
毒見が行われても暖かい料理は思ったよりも好評で、副料理長の人が素直にエイケさん達に教わりながら、料理を作り続け夕方になる頃には昼食会から移行したお茶会も終わり。
お礼と言うものはないけれど、副料理長から良い食材の選び方をエイケさんとアウグさん教わることができた。満足げのエイケさんとアウグさんなので、お礼はなくてもいいかな。
一方でアキュラさんは少しだけ疲れたみたいで、荷車に戻ると中でぐったりと寝ているらしい。カイは相手が女性だけだったのであまり疲れた様子はない。
それから再びソミール侯爵家から呼ばれることもなく、オーダーした馬車の完成を待っている間、茶を作っていたダリエルさんとアウグさんが話し合い、燻製と同じようにお茶の蒸気で干し肉みたいなのを作れないかと思いついたらしい。
それは蒸し料理だと思うのだけれど、お茶でやると何になるのだろう。香木みたいに匂いが付くのだろうか。
実際エイケさん達が協力して作ってみるとかなり予想外の者が出来た。
「なんか思ったのとは違うものが出来たね」
「でも、凄く美味しそうですよ」
「いつもより良い匂い」
鶏肉の果実皮の蒸し焼き。かなり上出来だったらしく、あっという間に蒸し肉は皆が食べてしまった。
「お茶だったけど、ただの水でも美味しいのかな」
「これは試してみないといけないね」
「やってみましょう!」
「あたしは、蒸した茶葉で何か作れないかやってみます」
そもそも研究と言うか、チャレンジする事に皆躊躇がないし、よほどお金がかからないかぎり誰一人止める事もない。
だからみんな色々試しては失敗と成功をしつつ、新しい物を産みだしていた。
「あぁ! 匂いを付けるつもりがこげちゃった!!」
さっそくお茶を燻して何かを作るつもりだったアウグさんが失敗したみたい、もちろん失敗も大いにあるのだけれど。
二日一回だけ露店を開いて数日、注文していたゴーレムを受け取りに商会に向かった。
出来上がったのは3x2mくらいの石ゴーレムでなんとなく自分に似ているというか、横に向けた角みたいなものがある。
車輪は鉄でしっかりと作られ片側4輪で力も強そう。
「オーダー通りだ。 ひたすら頑丈に作ったが、戦いには向かねぇからその辺は理解しとけよ。 溝にはまったりしても動けるよう車輪は増やした。 それでもダメなら自分でなんとかしな」
相変わらず口調は悪いけれど、モヒカン商会長は真面目に作ってくれたらしい。
イルレさんが支払いを行い、渡された小さな道具を受け取ってイルレさんが命令すると動き出した。これで馬車さえ買えば護衛してくれる人達の生活場所は用意できる。
次に広場に行くとまだ制作中の巨大荷車を見に行くと、お店の作業場には巨大な物体が出来つつあった。
「おう、まだ出来上がっていないぞ」
こちらに気付いた馬車屋の親方さんは、ハンマー片手に歩いてくる。
完成度はまだ7割みたいだけどそれでも八輪と車体は出来上がり、立派と言うかごっつい荷車となっている。
「車体の重要な部分は鉄を使ったが、8輪のおかげで思ったより軽く丈夫にできとる。 予備の車輪も作っとる」
「これから車台なら、良い木を使って長く持つように頼むよ。 長旅だからね」
馬車をイルレさんが眺めながら説明を受け、気になるところや材料を話したりと確認している。
「色々鍛冶師に頼むんでな。 高くはついているが思いどおりに出来ている。 もう少し時間と金を貰いたいが大丈夫か?」
「いいですよ。 ここまで掛かった分だけでも先払いしますのでお願いするよ」
イルレさんが金貨で支払い、馬車屋の親方さんは受け取ると頷きすぐ部下みたいな人に発注をかけた。
「あぁ任せときな。 潤沢に予算がありゃ色々やれるからな」
馬車屋で作られる皆が過ごす場所、出来上がった後自分も何か出来る事はないか考えよう。




