27.トイレの売却と次の村へ
カイの話ではリンド商会に提供しても大丈夫だろうという判断に至ったらしい。販売の権利として金貨50枚、一台の販売毎に銀貨9枚、銀貨1枚を契約保証人としてギルドが受け取る。
安売りしても良かったのだけど、正当な価格がつかないと商業的に問題があるらしい。
「これが試作品です。 見てください」
リンド商会によって運ばれてきた試作の簡易トイレ、職人の会心の出来らしい。
座るところは陶器で作ったらしく見た目が昔のトイレっぽい。それでも壁はある程度彫り物のされた木壁で作られ、お金がある商家や貴族でも使う事に躊躇がなさそう。二段ほど地面より高いのは、下の排泄物容器が大きな壺っぽいモノのせいだけど、いままで壺や桶に直接していたよりもきっといいと思う。
「良い出来ではないのか。 特にオレが言う事はない」
職人は満足したのか良い笑みを浮かべ、下働きの者達に簡易トイレを荷車に載せるよう指示を出している。これからさらに調べてどんどん改良を施していくんだと思う。材質は無理だと思うけど、後は創意工夫次第かなぁ。
「カイ、次は荷物輸送の依頼やってみない? すごく運べるようになったから稼げると思うよ」
「そうか。 新しい村に行くついでにあれば受けておこう。 なんにせよ、この周辺にカルト教団が無い以上長居は無用だ」
その日は久しぶりにカイは早めに眠りに着いた。安全な村の中とはいえ車内だけど、やはり突然攻撃を受ける可能性が著しく低いところが安心するらしい。
もうちょっと自分が頼りがいがあるだけ強ければいいんだけど、眠るときくらいしか役に立てないのがちょっと情けないかな。
翌朝、カイは目を覚ますとギルドに顔を出し、何か依頼を受けてきたみたいだ。
「次の町はアプルという、ここから馬で五日ほどで着くそうだ。 依頼はリンド商会、本店にトイレの材料を隣村まで明日運ぶ。 運べるだけ運んで欲しいそうだ」
ちょっと離れているけど、馬で五日くらいならさほど遠くないかな。それからカイと買い物して周り、防寒用の毛皮の毛布、食料などを買い込み、準備を整え昼ごろにリンド商会を訪れた。
商人の話では、職人はすでにアプルの町に馬で向っており、残るは物資を運ぶだけの状況みたい。
店の裏には木箱に納められた大量の木材と粘土が詰まれており、満載までトラックとトレーラーに積み込む。
「凄いゴーレムですな。 我々も欲しいものです」
リンド商会 カンド支部長、荷馬車と比べて膨大に積み込まれた資材を眺めながら感嘆のため息をついている。
「いくら金を積まれようと譲るつもりはない」
「当然ですな。 私とて何があろうと譲る事はないでしょう。 しかし」
「しかし、なんだ」
「領主から徴発命令を受けた場合はなんともし難いところです。 どうかお気をつけ下さい」
相手が権威を持っているならやっかいかなぁ。大事になってお尋ね者になったら身の隠しようがないし、人間を相手にやりあうのは勘弁して欲しい。
「気をつけるとしよう」
カンドの村を離れ、土道をのんびり進んでいく。舗装されていない道なのでゆっくりと走り続け、それでも馬車よりは早いのだけれど、時折やわらかい道にタイヤを取られたトラックを牽引し、思ったよりもぜんぜん進めていない。
戦車も相変わらずかなりの轍を作ってしまっているし、ちょっと心苦しい。




