250.ダンジョン式 地下施設
「少し遅くなった。 落ち着くように眠らせ、結界を張っておいたから大丈夫だろう」
しばらくたってカイが穴をくぐって戻ってきた。
「眠らせたって、それ大丈夫?」
「並の人間では破れない結界を作るのに時間を要した。 名のある魔法使いでも破るには二日程度はかかるだろう。 穴をふさぎ直して教団殲滅にもどるぞ」
開けた穴を再び大きな岩で完全に塞ぎ直し、再び地下のダンジョンに降りていく。
地下に居りて半日、何か所もの部屋や通路で教団員の命を奪い、通路に死体を積み上げながら進むけれど、どこか心苦しい。
ろくでもない教団だし、存在するだけで周りに害悪をばらまくのだけれど、それでもやはりどこか命を奪う事に抵抗がある。
地下3階にある最後の部屋に入ると、そこは飾り立てられた豪勢な部屋、衝立のようなもので区切られているけれど、かなり広いので幹部と言うか責任者の部屋だろうか。
しっかりと部屋を見てみるとただし隅の方に半分塞がれた階段があるから、まだ階下はあるみたいだ。
「くそ! 来るな! 来るなぁ!!」
叫び声をあげながら槍や石を投げる豪華な装飾を付けた教団員、おそらく幹部だと思うのだけれど、カイが下種な物を見るような目でナイフを投げ、胸に突き刺さるとうめき声を上げながら倒れた。
後ろに付いていた綺麗な服を着た女性の人達、この人たちも被害にあった女性達と同じなのだろうけれど、特別待遇を受けるだけ従順で綺麗な人たち、この人たちはどうしたものだろう。
しかし倒れた教団員の持ち物をあさりだし、持っていたと思われる袋を開くと、奪い合うようにその中身を口に入れていく。
見た感じ何かの粉っぽいのだけれど、まさかこれが。
「……魔薬か」
カイが近付いても、上機嫌な表情でどこか目が虚ろなままその場に座り込んだまま動かない。
薬に侵され通常とは異なる精神状態になっているのだろうか。
カイが袋を取り上げようとすると、突然立ち上がりカイの腕を掴み袋を奪い取ろうとし始めた。その表情は先ほどまでとは異なり、鬼のような形相に変化したのが怖い。まるで何かに憑りつかれているみたいだ。
「手遅れだな。 魔薬なしではもう耐えられないだろう」
カイが袋から手を離すと、再び中身の粉を摂取し上の空になっている。放っておいてもこのまま、薬が作られていない以上切れて苦しむことになるのだけれど、地球のマヤクみたいな対処方法でいいのかもわからない。
「カイ、この人たちは」
「中毒者の対処の方法など知らないな。 お前の世界でも私の世界でも」
自分もTVと本で読んだくらいしか知らないから、治療する手がない。
「この人たちは、どうしようもないわけ……なのか。 自分は無力だなぁ」
戦車として力はあるけれど、それは戦いの力であってそれ以外は持っていない。ただの一般社会人の知識程度では、出来ない事なんて沢山ありすぎる。
生前が医者とか軍人とか科学者なら違ったのだろうけれど、それこそ自分はどこにでもいるような普通の人だった。
「狂死するのも哀れだ。 せめて楽に死なせてやる」
カイが何かを唱えると女性たちはその場に倒れて眠り始め、徐々に足元から石化していく。
これが楽な死に方なのかは自分にはわからない。それでも薬の中毒から狂死するよりかは、楽だとは思っていたい。
「リョウも周辺にある教団支部の場所が掛かれている地図を探してくれ」
カイはもう頭を切り替え、周辺の棚や机をひっくり返すように中身をあさり始めている。
「わかった」
自分も探すために奥の衝立を倒すと、そこには下半身丸出しでベッドの上で倒れている、まだ10代前半と思われる男の子が居た。
日本でも戦国時代には男色があったわけだし、世界でも昔は高貴な人たちには意外と一般的だった。だから、アルスト教団内でも男色な教団員が居てもおかしくはない。
おかしくはないのだけれど、色々な意味で頭が冷めた。
「……なんか、もう怒りも収まったよ」
アルスト教団は元々ろくでもないし、全滅させると決めていたけれど、どこか引っかかっていた枷が外れたようにすっきりした。
これからは迷いも怒りも後悔もなく、アルスト教団員を無感情で排除できる。




