25.帰り道
「気分が悪い・・・・・・」
余りの嘔吐感に砲身を下に向けると、主砲弾が音もなく一発地面に落下。吐けないわけじゃなかったみたい。吐き出した砲弾は1分くらいで消滅していった。
追加で2発ほど吐いた後、少しだけ嘔吐感が治まり落ち着いてくる。
もしかしたらPTSDというものになるかと思ったけど、鋼鉄の体と一緒に精神もやっぱり強くなっていると思う。辛いけど、なんというか耐えられないわけじゃない。
「落ち着いたなら埋めるぞ。 このままにしておくと獣が集まるし病気も広まる。 人の味を覚えた獣は厄介だからな」
カイは吊るされていた人々を降ろし、飛び出していた目や舌を戻している。
自分も念動力で広く深く穴を掘り、機銃でばらばらにした教団員達を放り込んで埋めてしまう。
その間にカイが教会の中や吊られていた死体を引き摺ってくると、新しく穴を掘りなおし、一緒に集めて埋めていく。
全てが終わるくらいには夕暮れになり、3人の女性はほとんどその場から動かず、怯えながらじっとしていた。
「リョウ、車内に仕舞ってある食べ物を出してくれ」
ハッチを開き、中からカイが買って置いた皮袋を取り出す。
カイは皮袋を受け取ると、中から水袋と乾燥したパンを取り出し、三人の女性に差し出した。恐る恐るながら受け取ると、すぐには口につけなかったが、飢えていたのか一人が食べ始めると、後の二人も食べ始めた。
カイはその様子を見たあと再びその場を離れ、往復して教会から食べ物や布類を持ってくる。
「リョウ、教会周辺の崖を崩してくれ。 入り口を塞がないと盗賊のネグラにされてしまうからな」
「わかった」
主砲弾を榴弾に切り替え、教会周辺の壁を砲撃し入り口周辺を完全に塞いでしまう。飛び散り落下した岩石で、すこし教会が壊れてしまったけれど、これ以上誰かに壊され汚されてしまうよりは良いと思う。
「お前達」
三人は集まって怯えながらカイを見ている。酷い目に会ったのだとは思うけど、本の知識以上にどんなめに会ったのかは自分には分からない。
「安心しろ。 オレも女だ。 カンドの村まで送ってやる」
驚き信じられないような顔をしている。普通に見ればカイは中世的な美形、女と言われてもそう簡単には納得できないと思う。
珍しく鎧と上着を脱いで、カイが女性らしい体格を見せると、やっと安心したらしく、その場で気絶するように三人は眠り始めた。
随分と精神的に追い詰められていたみたい。
「カイ、その三人どうする?」
「硬殻のギルド長にでも話してみよう。 リョウ、何か載せられるモノに変われるか?」
「M24軽戦車を出して牽引するよ。 木で囲えば3人くらいは大丈夫だと思う」
74式戦車から光が分裂するように離れていくと、後方1m離れた場所にM24軽戦車が現れた。
体は一つ、74式が基本なのに視界の感覚が二つあって凄く妙な感じがする。
74戦車なら体のようにあれこれできたけど、牽引していると外部操作をしているみたいで、なんとなくおぼつかない。
「今ロープを集めてくる。 その間に木でも集めていてくれ」
念動力が届く範囲の木を掴んでは適当なサイズに整える。念動力が思ったよりも便利、手と同じ感覚で扱えるのに、怪我をする事無く木材加工が出来てしまう。
そこそこ器用だったのもあるし、枝を取り除いて形を力で整え、M24軽戦車の上に簡単に組みつけていく。後はロープでしっかりと括りつけてしまえば、たぶん崩れることはないと思う。
「できたのか」
カイが集めてきたロープで、木枠をぐるぐるに縛り上げると、教会から持ってきた布や毛皮を敷き詰め一応出来上がる。
「リョウ、三人を載せてくれ。 村に戻る」
丁寧に三人を持ち上げ、M24軽戦車の上に作った木台の上に載せ、出来る限り丁寧に山道を下る。暗闇に周囲が覆われる中、眠る女性達をカイはどこか優しく見ていた。
ざっくりとした説明
PTSD:
精神的傷を負うほどのきつい体験で、何度も何度も思い出して苦しむ。簡単には直らず、投薬にカウンセリングなどが必要。
気合とか根性とか素人の慰めなんてなんの役目にも立ちません




