267/ジョーVSヴァルケニオン
――私が、道標だよ。
全てが消滅する瞬間と、あらゆるものが生成する瞬間は、両義であった。
抜けた! そう直覚した時、ジョーが立ち向かっていた灼熱は霧散していた。
大王の第三本質能力・「真合滅砕」は、バラバラになった。
集積していたオントロジカが、流れ星のように宇宙の方々へと向かって飛び立っていく。
それらの光がどこへたどり着くのかはジョーには分からないが。
「S市」や東北の地が焼かれることは、もうないだろう。
ジョーが宇宙に佇んでいる。
藤色の球体に包まれた戦艦陸奥・朧が、宇宙空間に浮遊していた。
息ができる。宮澤ジョーも真実大王ヴァルケニオンもまだ生存している。
宇宙空間のような「別の世界でも人間が存在することを可能にする」。それが、ヴォストーク1号の最終概念武装「大気圏突破」の能力であった。
戦艦陸奥・朧を闘場として。
「これで1対1だ。さあ、戦おうぜ」
少年としては、珍しい、闘争の意志。
「真実大王が述べる世界の理よりも、祖父ちゃんと祖母ちゃんが残した愛が強いかもしれないこと。俺も、確かめたいんだ」
ジョーの渾身の右拳・加速超新星爆発拳を、ヴァルケニオンは今度は自ら左頬を突き出して受けた。構わないとばかりに、拳をふるったジョーの体めがけて右のボディーブローを打ち込んでいく。
ジョーは大王のボディーブローに軽やかに「乗る」と、跳躍。そのまま空中で前転し、かかと落としを繰り出す。しかしすんでのところで、大王の屈強な腕に防御される。
今度は大王の腕に乗ってバク宙。再び、間合いをとる。
一瞬の攻防の後、真実大王ヴァルケニオンは。
「認めよう。この『真実』さえ広大なる暗黒の中で朧げになった世界で、オマエは、強い」
息を吸って、吐いて、呼吸を整える。
ヴァルケニオンの述懐が続く。
「強い貴様にこそ我は手を差し伸べよう。この暗闇の中で、『正しい・優れた世界』が何なのか、貴様も分かったはずだ。我の創造せし真実の王国の、半分を貴様にやろう。我に、仕えよ」
「承服、しかねる」
「何故だ」
「どんなに正しくて優れていても。アスミが生きられない世界はごめんこうむる」
思い出したのは、自分でも意外だったけど、闘争とはちょっと違った一日の一風景。
「七夕の日に、エッフェル搭に聞かれても、夢ってやつが今一つ漠然としていた」
「何の話だ?」
「ひぃじーじの時代は、復興が夢だったらしい。だが、今なら言える。アスミでも存在してイイ、俺の夢はそんな、萬の色と萬の光が輝いている世界だ」
ジョーは自分という人間の寄る辺となる体のかたち――柔術の構えを取った。




