208/277
208/八月十四日3~消えた蒼い線
今日もネットカフェに泊まる。
狭く区切られた個室の中で、ジョーは虚空を見つめている。
(割りあてられた奇跡は、もう終わりだって、何だよ)
結局自分はイジけているのだ。大切だと信じたものが、ここで終わりだとどうしようもなく否定される現実を前に。
こんなみっともない自分を、叱咤してくれる存在に思い当たった。だけど彼女ももういない。
苦しくてどうしようもない時に、それでも勇壮なるあり方をジョーに補強してくれていた、背骨の蒼い線ももう、消えていた。
(そうだ。エッフェル搭。愛想を、つかされたんだった。違うな。彼女は悪くない。優先順位を付けただけだ。分かってる。俺だってそうだ。それは、正しい)
金色の髪をなびかせる、凛としたエッフェル搭の姿が思い浮かんだ。どうしてあそこまで自分に助力してくれたのか、詳しいことを聞きそびれていた。だけどもう、問うことはないだろう。
信頼は築いてもいつか壊れる。
暗闇の中は冷たい。暖を取るものも、寄りかかれるものも何もない。
悲しみにくれた中、ジョーは一人の人間としてこの宇宙に問うように言葉を発した。
「どうしてこの世界に、キセキは定量しかないんだ……」




