物語の始まり
イヴェットの結婚式は、よく晴れた花盛りの季節だった。
父とバージンロードを歩き、フランソワの元までたどり着く。
「大切にしろ。これは私の娘だ」
「もちろんです」
輝かんばかりに色っぽい新郎の笑顔に鼻で笑った父は、あの日以来すっかり涙もろいイヴェットを見下ろす。
翡翠の瞳には、優しさと愛情と、ほんのわずかな寂しさが揺れている。
「何かあるごとに帰って来なさい」
「そんなに何もありませんよ、義父上」
「何もなくとも帰って来ればいい」
「いえまあ、顔は出しますけど」
「なんなら出戻りでも構わない」
「なんてこと言うんですか……」
父とフランソワのやり取りに、ふふと笑うと、二人はようやく安堵したように息を吐いた。
「イヴェット」
「はい」
雨のように花びらが舞う中、新郎のあたたかな手に娘を預けながら、父は言う。
「おまえは私の誇りだ。幸せになりなさい」
ありがとう。父様。
また涙が溢れて、フランソワが差し出してくれたハンカチを受け取りながら、イヴェットは夫となる人に寄り添う。
────大丈夫。もう、わたくしは大丈夫。
筋書きのない、この手で描く物語をゆくのだ。
恐れながら、怯えながら、慄きながら、それでも。
ぬくもりあふれる、家族たちと共に。
お粗末様でございましたm(*_ _)m




