表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正しい宇宙の歩き方  作者: コンタクトメガネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/13

第7話「流星飯店 地球支店、皿洗いから始まる宇宙生活」

 夜。流星飯店の裏口。

 ネオンが風に揺れ、街が青紫に滲む。


「優太」


 塚原が、くしゃっと折り目のついた紙切れを差し出す。


「困ったら、ここに連絡しな」


「……電話番号ですか?」


 数字だけでなく、見たことのない記号も並んでいる。


「地球のスマホじゃ繋がらん。

 こっちの電話がないとダメだ」


「そんなの持ってないですよ!?」


「まあ、お守り代わりだ。持っとけ」


 ぽん、と頭を軽く叩き、片手を上げる。


 照明の中、塚原は夜に消えた。


 頼りになる。

 なのに少し、遠い。


 

* * *

 


 案内されたのは、店の2階にある仮眠スペース。

 簡易ベッドと薄い布団。

 地球とは違う匂いの空気。


 仰向けになり、スマホを持ち上げる。


 通知:無し

 電波:圏外


(……本当に、夢じゃなかったか)


 疲労が瞼を落とし、意識が沈んでいく。


 

* * *

 


 翌朝。

 仕込みの音で目が覚める。

 包丁のリズム。湯気の香り。


(始まる……)


 階段を降りると──


「おはよ!」


 チャイナ服のお団子ヘアの少女が手を振る。


「アタシ、リィン。看板娘ね〜。よろしく」


「あ、染夜優太です」


「ユータね。覚えた〜」


 次に、割烹着の女性が丁寧に会釈。


「私はガーコ。洗い場担当。よろしくね」


(落ち着いてるけど……なんか迫力ある)


 ふわりと光文字が浮かぶ。


『ナイだよ (^_^)ノ』


「うわっ……!」


「気にしない〜。ウチの透明店員だから」


 そして六本腕の店主が振り向く。


「俺がダコ。店長だ。

 日本語しか使えないなら、まず洗い場だな」


「はい!」


「今日はランチまででいい。

 ガーコに教わりながら覚えろ」


(今日からここで働くんだ……)



* * *



「新人くん、そこのウォッシャードロイド使っていいわよ。

 私は手で洗った方が早いの」


「手で……?宇宙の機械より速いんですか!?」


「水と経験よ。覚えておきなさい」


 チャッ、チャッ、チャッ。

 皿が次々と積まれていく。


(……勝てる気がしない!!)


 しばらくして──

 優太はガーコの背中に丸みを見つけた。


(あれ……甲羅?)


「ガーコさんって……河童、ですか?」


「そうよ。よろしくね」


(本物だ……!うわ、すげぇ……!)


 視線は上へ──

 頭のお皿。


「その……お皿って、触ったらどうなるんですか?」


 空気が止まる。


「優太くん?」


「はいっ」


「それは、とっても大事な場所。

 勝手に触ったら──」


 にこり。

 目だけが笑っていない。


「怒るわ」


「すみません!!!」


(絶対触らない……!)


 

* * *

 


 ランチ営業終了。

 みんなで賄いを囲む。


「いただきま〜す!」


 リィンが元気よく箸を進める。

 優太も一口──


「……うまっ……!」


「でしょ〜? 店長、料理神だから」


 気になっていたことを口にする。


「皆さん、日本語……普通に話せるんですね」


「アタシは地球人ね〜。中国出身。

 塚原さんに日本語教わったヨ」


「塚原さんが!?」


「人助け好きだからネ〜」


 ガーコが付け足す。


「私は日本で少し暮らしていたの。

 人間社会も、まぁ慣れてるわ」


「すご……」


 ナイの光文字がぽん。


『ぼくも地球出身 (^_^)ノ

 いろいろあって今この姿 (・ω・)』


(いろいろ……めっちゃ気になる……!)


 最後にダコ。


「日本語が使える知り合いが多いだけだ。

 必要だから覚えた」



* * *



 食べ終わると、ダコがリィンに指示する。


「午後はユータを街へ連れて行け。

 住む場所の案内も頼む」


「早上がり確定!? やった〜!!」


 こうして優太の新生活は──

 本当に、動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ