第8話 オタク文化は銀河を越える①
昼下がりの、未来と魔法の匂いが混ざる街を、優太はリィンと歩いていた。
「ここが ETG。
地球の上にある、別空間だヨ」
「別空間……?」
「街は空間魔法で作ってる。
でも空は技術。太陽も月もプロジェクター!」
(魔法と技術……普通に共存してるのか……)
「困る前に、まず必要なモノ!
翻訳機、買いに行く!」
着いた先には大きな看板。
──六合電機
《全種族対応の便利を、あなたに。 六合電機》
(普通に良いキャッチコピーだ……)
* * *
店内は賑やかで、見慣れない家電ばかり。
形は似てるのに、用途は謎。
「翻訳機コーナー、コッチ〜」
リィンが指さした先。
店員がこちらに気づき、インカムで何かを呟く。
──すぐに、その男は全力で走ってきた。
「ッッ地球端末だッッ!!」
「えっ」
「その長方形!! その角!!
その絶妙な重量!! 地球製スマホ!! 本物!!」
(スマホ見ただけで分かる!?)
男はピタッと姿勢を正す。
「失礼しました。
私は レグ。
六合電機の店長。サイボーグ、機鋼星メタロニア出身です」
「ど、どうも……染夜優太です……」
「素晴らしい……!
地球の技術は原始でハイテク!!
ロマン!!」
「店長、落ち着いて……」
リィンが小声で止める。
「で、優太は日本語だけ?
なら翻訳機必須ね〜」
「はい……それと、地球のスマホって使えなくて……」
「回線も規格も違うネ〜。でもスマホ大事、取っとく!」
「安心しなさい、人間!!」
レグが胸を叩く。
「ここには“異世界言語”すら翻訳できる機械がある!!
文明差など、我らがブチ壊す!!」
「ブチ壊さないでほしい……!」
レグはショーケースの奥から、
小さなイヤーカフ型の装置を取り出した。
「《多次元翻訳イヤーカフ・第7世代》
脳波連動で翻訳ラグほぼゼロ。
地球語→全種族語対応」
「た、高そう……」
「新生活割!!半額!!」
「あるんだ新生活割!!?」
リィンが肘で軽くつつく。
「優しいヨ〜。店長、地球好きだから」
(サイボーグなのに、すごい人情味……)
優太は翻訳機を手に入れた。
世界の言葉が、届き始める。
──新生活のスタートラインが、
少しずつ形になっていく。
* * *
「ここがユータの新しい家!
505号室〜!」
「……うわ、鍵まである……」
部屋はシンプルなワンルーム。
でも、ちゃんと“生活”の匂いがした。
「日本の家と似てて安心するでしょ〜?」
「あ、まあ……確かに」
「荷物、後でまとめて持ってきてネ〜
じゃ、アタシ店戻る! また明日!」
「あ、ありがとう!」
ぱたぱたと階段を駆け下りるリィン。
静寂が訪れる。
(これから……俺、一人で……)
不安と期待が胸に渦巻いた──その時。
「ピンポーン」
「は、はい!?」
ドアを開けると──
長い耳。端正な顔立ち。
そして、萌えアニメ風パーカーのイケメン。
「地球の住人、だな?」
「えっ」
「俺は 504号室の エルド。
異世界語の翻訳、今は通じてるか?」
翻訳イヤーカフのおかげで、
ゆっくりと意味が理解できる。
「は、はい。染夜優太です」
「ユウタ! よろしく!
……地球の漫画、好きか?」




