第3話 初めての取り調べはカツ丼から
無機質な部屋。蛍光灯の白だけが刺す。
「……ここは?」
パイプ椅子に座らされ、優太は落ち着かない足を揺らした。
向かいには、さっきの少女が座っている。制服姿で、戦闘時とは違う穏やかな印象。
「驚かせてごめん。私は天田。
少しだけ質問に答えてもらうよ。怖くないから」
柔らかい笑顔。だが目は真剣。
「まず確認。あのスーツ姿の男に心当たりは?」
「ないです。初めて見ました」
「そう……わかった」
――ピッ
天田の胸元の通信機が鳴る。
『天田、至急。第三会議室へ』
「了解。すぐ行きます」
彼女は優太を一度見つめる。
「大丈夫。すぐ戻るから、待ってて」
短く言い残し、部屋を出た。
ドアが静かに閉まる。
「はぁ……帰れるよな……?」
思わず弱音が零れた、そのとき。
ガラッ。
「よぉ、こっからは俺が相手するぜ」
着流し、大刀一本、寝癖。
どう見ても取り調べに向いてない男が現れた。
「よろしく〜」
ドカッと向かいへ腰を下ろし、
当然のようにカツ丼を置いた。
「まず食え食え。頭動かんだろ?」
「なんでカツ丼……?」
「取り調べっぽいから」
いや雑。
「で、お前さ。何者?」
「……高校生です」
「うん、それは見りゃ分かる」
塚原は箸をくわえ、目を細める。
「記憶処理が効かなかった。
つまり……普通じゃない」
「……」
(やっぱ俺……)
「まあ心配すんな。困ったら俺がなんとかする」
――コン、コン
『対象ノ生体情報ヲ採取シタイ。入室シマス』
「来やがった……」
塚原が舌打ちした直後、
白衣の男が入ってきた。
瞳だけ異様に光り、笑っているのに温度がない。
「すぐ終わるよ」
額にスキャナーをあて──
――ピッ……ピ、ピピピピピ!!!
「……なるほど」
舌なめずりするような笑み。
「非常に、興味深い。
完璧な個体だ」
(……聞き捨てならねぇ言い方)
「終わりか?」
塚原が低い声で問う。
「ええ。異常なし。
彼は“普通の人間”ですよ」
白衣は名残惜しそうに退室していった。
(絶対、何か知ってる)
優太の背筋が凍る。
「帰るぞ」
塚原が優太の肩を掴む。
「え?どこへ……?」
「気分転換。外の空気だ」
軽く笑うが、声が震えていた。
「安心しな。変なとこ連れてかねぇよ」
そして小声で囁く。
「──ここにいたら、マジで喰われるぞ」
優太は黙って、その背中を追うしかなかった。




