第1話 地球の片隅、チャーハンは宇宙を呼ぶ
湯気が立つ。
炒め油の香りが鼻をくすぐる。
「はい!チャーハン大盛り一丁!
優太、今日も元気ないね〜?」
リィンが笑顔で皿を運んでくる。
ここは 流星飯店(地球支店)。
街外れの、知る人ぞ知る中華屋だ。
どこか異国の匂い。
なんとなく不思議な客が集まる。
でも──
(……気のせいだよな?)
チャーハンをひと口食べながら、
優太はちらりと周りを見る。
カウンターの端で骨つき肉を噛む
筋肉ダルマみたいな巨躯の男。
(いやいや、肌が緑なんですけど…)
奥の席では
スマホで麻婆豆腐を撮り続ける
影のように黒い肌の美形。
(そういうコスプレかなんかだよな……?)
気づかないふりをし続けて数日。
でも、違和感は濃くなる一方だ。
学校にも行けていない。
養護施設にも戻れていない。
(俺、いつからここにいるんだっけ……)
――カチャン。
向かいの席のコップが
ひとりでに少し動いた。
「……ナイ?」
空中に光る文字が浮かぶ。
『ただいま』
「どっから来たんだよ……」
姿は見えない。
でも、確かにそこにいる。
いつも突然現れて、突然消える。
それがナイだ。
『チャーハン、一口ほしい』
「勝手に食おうとすんなよ!」
『えへへ』
(えへへじゃねぇよ! どこから手が伸びてるんだよ!)
ツッコミながら、
優太はもう一口チャーハンを食べる。
「……ここってさ、本当に普通の店?」
「もちろん普通だよ!
宇宙一おいしい中華屋だからね!」
「宇宙って言っちゃってるよ!?」
優太の突っ込みは店内に虚しく響く。
だが──彼はまだ知らない。
この店の “普通” は、宇宙基準。




