49.本当の目覚め、私のイチオシ!1
メリアーナが誘拐されたときのお話と
悲しい表現があります。
苦手な方はご注意ください。
「……」
窓から入る陽の光の明かりを感じてゆっくりと瞼を開く。
前もこんな感じで起きたことがあるような…。
長い時間寝ていたような気がする。
しばらくぼんやりとしていると、声を掛けられた。
「あぁ!お嬢様!」
「…ロジー?」
私が目を覚ましたことに気づいたロジーが、涙を流しながら私に駆け寄る。
「心配いたしました!体調はいかがですか?」
「…大丈夫よ。少し体が重たい感じはあるけど」
ここは私の部屋ね。
「あ、綺麗なお花ね……」
私の好きなピンクと白の薔薇が飾られてある。
「ストライブ侯爵家のレイ様からお嬢様にですよ」
「レイ様が…」
徐々に意識がはっきりと戻ってきた。
私はどうやって帰ってきたのかしら?
あのあと…どうなったの?
私はジャガーに……?
サァと血の気が引き体が震える。
「す、すぐに主治医を呼んでまいります!」
私の異常を察したロジーが部屋を出て行き、すぐに家族と主治医が部屋に急いで入って来た。
「メリア!!」
涙を流しているお母様の肩を抱きながら側にきてくれたお父様。
そして、今にも泣きそうな顔のお兄様。
皆、とても心配してくれている。
お父様にレイ様が連れて帰ってきてくれたこと、ヴァリテ様、リエッタ様、サナエラ様も一緒に探してくれたと聞いた。
「ご心配をおかけして申し訳ございません…」
そして、ジャガーがジャムに含ませて私に食べさせた睡眠薬は身体への負担は少ないとのことで安心した。
あとは打ち身や打撲があり数日は安静にしていた方がいいそうだ。
レイ様が助けてくれたのね。
「……レイ様」
ジャガーにはできるだけ抵抗したけど、私が眠ったあとは何をされたかが分からない。
こんなこと心配させた家族にも言えないし。
泣きそうになってしまったので、部屋にひとりにさせてもらった。
レイ様に会いたい。
でも…まだ会ってもらえるの?
コンコン
「メリア、入ってもいい?」
しばらくして、お兄様が様子を見にきてくれた。
「はい。…大丈夫です」
涙を拭い顔を整える。
「少しだけいいかな?」
特にお兄様は学園祭で起きたことだった為、責任を感じている。
「メリア、無事に帰ってきてくれて良かった。私のせいだ。本当にすまない…!!」
お兄様が私の両手を握りしめた。
「いいえ、お兄様のせいではありませんわ。ジャガー様がこのようなことをするとは誰も思いませんもの。それに学園の警備に関しては学園側の責任です」
「メリア」
「私の大好きなお兄様は生徒会長として立派にお仕事をされていました。私の自慢のお兄様ですわ」
だからそんな顔をしないでと微笑む。
「メリア!!」
お兄様に優しく抱きしめられた。
「お兄様…リエッタ様とサナエラ様にこちらに来ていただくことはできますか?」
「しかし、まだ安静にしなくては」
「大丈夫です。少しおふたりにお伺いしたいことがあるのです」
「そうか、分かった」
お兄様はすぐに連絡を取ってくれるように手配してくれた。
* * * * *
「もう大丈夫なの?」
「大変だったわね」
次の日、ふたりはすぐに来てくれた。
「うん。来てくれてありがとう。こんな格好でごめんね」
ベッドの上からまだ出られないので、ネグリジェにショールを羽織っている。
「まだ安静にしてないといけないんでしょ?気にしないで」
早苗様は優しく気遣ってくれた。
「攫って眠らせるなんて卑怯なヤツよ!!」
里英ちゃんがすごい顔して怒ってる。
「!!」
それを聞いて体がビクッと反応した。
途端に涙がポロリと流れてくる。
「え?アイツにもしや何か…」
里英ちゃんが焦って固まる。
「できるだけ抵抗したけど、だんだん力が入らなくなって…」
思い出すとまた涙が流れた。
早苗様が背中を撫でてくれる。
「私は力が入らなくて、もう駄目だって…!もうレイ様に会えなくなるかもって!」
涙が止まらないよー!
「気づいたらこの部屋にいて…。私が眠ってるあいだに…アイツに何かされちゃったのかな?怖いけど、教えて……うぅ…」
「そっか。聞いてなかったか。それは怖かったね」
里英ちゃんがため息をついた。
「レイ様が助けてくれたって聞いたわ。でもこんなこと誰にも聞けないし、聞くのも怖いし!もし、もうレイ様に嫌われてたら、どうしよう!!」
「…どうして嫌われたらイヤなの?」
「え?」
顔を上げて早苗様を見る。
「『イチオシ』は『お兄様』でしょ?じゃあ、いいんじゃない?」
お兄様?
そう、私の大好きなお兄様がいればよかった。
でも今は…。
「…イヤ。レイ様に、会いたい」
レイ様に会いたい!
あの綺麗な濃い紫色の瞳を見たい!
またあの笑顔を見せて欲しい!
手をギュッて握って欲しい!
抱きしめて欲しい!!
優しいあの人に……。
「私、レイ様が……」
好き…。
「もう分かったでしょ?」
「…うん」
赤い顔で頷く。
ふたりがクスリと微笑んだ。
「睡眠薬入りのジャムを食べさせられたけど、あとは何もされていないわよ」
「え?本当に?」
「あなたが必死で抵抗したあとは、ストライブ様が駆けつけたからね」
「そうだったんだ。…でもまだ会ってくれるのかな?」
ホッとはしたけど、不安でふたりに訪ねる。
「今すぐにでも会いたいと思ってるはずよ!」
里英ちゃんは私の顔の涙をハンカチで拭いてくれた。
それから里英ちゃんは泣きそうな顔をしてギュッと私を抱きしめた。
「え?」
里英ちゃん?
「もう!本当に心配したんだからね……」
里英ちゃんの体が震えている。
泣いているの?
「前世の時、前田さんには突然会えなくなってしまったのよ。暴走した車が向かって来た事故でそのまま…」
「……そう…だったんだ」
早苗様が悲しい顔をして前世のことを教えてくれた。
私は覚えていなかった。
それからふたりは私の体調を心配して早めに帰り、またお見舞いに来るわねと言ってくれた。




