94話
ニアキス達が席について一時間程、ようやく会議が始まった。
とは言うものの、最初は今回の司会役になった代表による挨拶から始まり、各都市の現状把握や予算案、それらに対する質疑応答と何時も通りの展開となった。
『何かしらの問題が発生したんじゃないのか?』
ニアキスがそう思っていると、最前列の席に座っていた代表が、手を上げる。
「発言許可をくれ」
「はいどうぞ、アントニウス様」
アントニウスと呼ばれた二十代半ばの男性が席を立つ。
彼は、この都市国家同盟の中でも五番目に力を持つ都市の代表だ。
彼の都市では、市民に対する税が高く、その税で大量の傭兵を雇っている事で有名な人物だ…悪い意味で。
アントニウスの都市からの逃走者は多く、隣接する都市からは迷惑の一言で済む。
何しろ、税が高過ぎて逃げるような状態だ、周辺都市に逃げて来ても生活する為のお金を持っていない事が多い。
更に、自分の都市から市民が逃げ出させないよう傭兵達に見張らせている。
逃げ出した市民を発見した場合、好きにして良いとの命令すら出していると言われる程、悪質な運営をしている。
それでも代表としていられるのは、代々のアントニウスの一族が貯めた金の力に過ぎない。
それに彼の都市は、この砂漠の多い大陸でも数少ないオアシスを中心とした耕作地域の為、他の都市に対して圧力を掛け易くなっている。
当然ながら敵も多いが、彼に付き従う者達も多い、厄介な存在だ。
ヒョロリとした体付きのアントニウスが席を立ち、中央に居る司会を睨み付ける。
「今回の緊急招集、その目的は何だ?まさか今までの連絡事がそれなどと言わんだろうな?コッチも忙しいんだが?」
左唇を上に吊り上げながら声を荒げるアントニウス。
忙しいのはココにいる全員がそうなのだが、今回に限ってはアントニウスの言い分は間違っていない。
何時もの彼であれば、ただイライラしながら文句を言うだけなのだが…アントニウスの視線の先には三十代前半と思われる男性が椅子に座っていた。
彼の名はバレシオス、この都市国家同盟の中でも一番に位置する代表だ。
彼の収める土地は巨大な港街であり、更に莫大な資金を使ってガレオン級の大型船を多数備えている。
実際、バレシオスの周囲に居る者達は、彼を実質的王として扱っている。
それに反発しているのが、アントニウスの一族とその取巻きの面々だ。
都市国家同盟の一位と五位の代表が、この手の会議でやり合う姿が日常茶飯事だった。
とは言うものの、ギャーギャーと騒ぐのはアントニウス側だけであり、バレシオスの方は立て板に水状態、全く相手にもされたいないのだった。




