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84話

〜〜〜〜〜

大陸歴二千百七年、帝国歴三千七年、北東に位置する三大大国の一つと呼ばれる『ザクリア帝国』では、朝から大勢の者達が集まっていた。


黄金で装飾された玉座から見て左側に、きらびやかな衣装と装飾具を付けた人物達がいた。

それぞれが、親密な者達同士で集まり、何事かをヒソヒソと話し合っていた。


ある者は自身の納める領地の発展具合を話し、またある者は、今日集められた理由をそれとなしに聞いて回っている。

互いに隣り合う者達へと視線をまわしつつ、遠回しな嫌味の応酬をしている者達もいた。

それぞれが、他者からの情報を聞き出し、自身に有利になるよう動いている。


彼らは、このザクリア帝国において貴族と呼ばれる者達だ。

それぞれが派閥に別れ、足の引っ張り合いをしている。



そんな一団とは対照的なのが対面、玉座から見て右側に立つ集団だ。

それぞれが色鮮な左肩側のみのマント、ペリーズと呼ばれる物を纏い、整然と並んでいる。

腰には、宝石で装飾された剣を付け、直立不動でジッとしていた。

彼らも、近くにいる者達と、小声で話をしていた。

話題は専ら『何の為に呼ばれたか』だ。


彼らは、この帝国を守るザクリア騎士団の上位者達だ。

その内の何人かは、自分達の正面に立つ貴族達へと睨みを利かせていた。


このザクリア帝国において、貴族と騎士と言う互いに相容れない者達が同じ空間に集まる事は珍しい事だ。

何しろ、政治を司る貴族達にしてみれば、戦争と言う消費行動を行う騎士達など、『無意味な存在』と認識している。


その逆に騎士達にしてみれば、自分達の領地のみに心血を注ぎ込み、帝国全体の事を見ようともしない貴族達を『帝国に巣食う害虫』と認識している。


そんな二つの集団が、仲良くやれるハズも無い。

事ある毎に、予算の取り合いや国の方針を巡って、丁々発止なやり合いを行っていたのだった。


そんな仲の悪い双方が集められたのだから、理由は一つだろうと予想していた。


軍事を司る騎士団を呼び出したのは、何かしらの戦争行為の為。

そして、経済を司る貴族を呼び出したのは、それに対する戦費と領内からの兵士を出させる為だろうと言う事だ。


たからこそ、互いの雰囲気も対照的だ。


これ程の上位者を集めなければならない程の大戦争だと予想している騎士団と、それに対してどれだけの戦費を費やさなければならないのかと予想する貴族達。

片や『意気揚々』とし、片や『暗雲』としている。


ここに居る貴族達は、特に経済への発展を主目的としている者達だからこそ、戦争と言う消費行動への嫌悪感が拭い去れない。

勿論、軍と言う存在が無ければ、自分達の領地に被害が行くと分かっているだけに、真正面から非難する事は無い。


騎士団にしても、貴族の三男や四男等が多い為、戦争行為を批判する貴族達を苦々しく思っていても、排除する程とは思っていない。


そんな、互いに複雑な感情の元、皇帝陛下を待っていた。


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