82話
別世界であったとしても、海はあるだろう、そう思っていたユウキ。
彼としては、地面の上に浮遊大陸を落とせば、どれだけ頑張っても死者が出ると考えていた。
それはそうだろう。
この浮遊大陸の大きさは、キング·オブ·キングオンラインのゲーム内であれば、64✕64の小マップの集まりに過ぎない上、データ上の存在だ。
しかし、現実になった以上、そんな巨大な塊を地面の上に落とせば、大陸自身の自重で自壊してしまうだろうと予想していた。
ゲームの中で、全てを『崩壊』させておきながら何を言っているのかと自嘲しながら…。
大きなため息を一つ吐くと、意識を海と思われる物へと向ける。
表れたそれは大きく、今、マップに映し出されている時点で、浮遊大陸の三〜四倍の大きさはあった。
それでも、もう少しだけ粘り、更に沖合へと進んで行く。
それと言うのも、もし、この海と思われる物が、ただ単に巨大な湖の類であれば、折角着水出来たとしても水深が足りず、浮遊大陸分解の原因になるかもしれないと思っていたからだ。
浮遊大陸の下部部分だが、約十メートル程の岩盤で覆われているらしい。
これは、リリーナから大陸の状態を聞いた際、教えてもらった部分だ。
つまり、水深十メートル以上あれば何とかなる方針だ。
それより深過ぎた場合どうなるかは賭けになるが、浅いよりはマシだ…そう思いながら沖合を目指す。
目指すと言っても浮遊大陸は自ら動かない。
この世界の惑星の自転に任せている為、東から西へと移動しているように見えているにすぎない。
後は自転速度に期待するだけの話だ。
それと同時にもう一つの懸念もある。
海…と思われるこの下へと降下した際の高波の影響だ。
さっきから、浮遊大陸の下に見え隠れしていた地図を見ると、建物らしき物体が見えていた。
つまりそこには『知的生命体』がいると言う事になる。
それが、自分達と同じ人間なのか、或いはエルフやドワーフよ様な存在なのかは分からないが、何かしらが存在していると言う事になる。
そんな世界で、いくら沖合であって浮遊大陸程の巨大な塊が、減速せずに落下すればどうなるか…。
そこは想定としか言えないが、恐らく数メートル規模の高波が発生し、湾岸に多大な被害を出すだろう。
さすがにそれは見逃せない。
この知らない世界で、今後どのように付き合って行くか分からないが、少なくとも今の時点で敵対する必要は無い。
そう考えるからこそ、出来るだけ沖合に行って、高波の被害も最小に抑えたいと思っていたのだった。




