46話
「それでは、暫くの間離れますので」
「うん、ありがとう」
「本当に少しだけです」
「うん、分かっ」
「何かあったら大声で呼んで下さい、絶対です」
「…」
過保護過ぎん?リリーナさんや。
オレ、この玉座の間から離れんよ?ってか、今いる場所、高さ三メートルはある座席部分だよ?飛べないオレは、ただのヒロシだよ?(いや誰だよ?)
「本当に少しだけですからね?本当ですからね?」
「………」
なんだろう、子供離れしてない母親なのか…心配性の親なのか…単純にオレの信用が無いのか…どれだろう?
〜〜〜〜〜
座席部分で胡座をかいてたユウキは、リリーナが大扉を開けて出ていった事を確認すると、周囲を見渡す。
広い玉座の間、左右には複数の扉があり、リリーナの話によれば、それぞれ通路と小部屋があるらしい。
「後で案内してもらおうかな」
そう呟くと、それぞれの扉の上にある窓を見る。
白いレースのカーテンが掛けられており、その先にはテラスがある。
テラスに行くには、少し遠回りになるが、左右の扉から通路に出て、その途中にある階段を登った先らしい。
何その面倒な作り?っと、ユウキの頭の中には疑問符だらけになっていた。
リリーナ曰く、空から襲撃された場合を考えた作りだとか…いやいや、空から襲撃って、羽でもなければ…って、羽持ってる種族、この世界に沢山居たよ。
その窓も、さっき精霊が出入りに使用してから、カーテンが掛けられ、外からの視界を遮っている。
『精霊…いない…よな?いないよな?』
声に出すと、いきなりワッと出てきそうだったので心の中で確認する。
数秒待って、何もない事を確認すると、姿勢を正して一つ息を吸う。
そして、あの伝説のお約束セリフを一言。
「す、ステータス?」
ボソリと呟いた一言だったが、某有名RPG 風に言うなら『しかし何も起こらなかった』と表示された事だろう。
顔を真っ赤にさせたユウキだったが、周囲を見るも何の変化も無い事から
「声、小さかったか?」
っと、別方向へと進んでいった。
「ステータス!」
先程よりも大きな声を出す…が、やはり何の反応も無い。
そこからは吹っ切れたのか、徐々に声が大きくなっていき、最後には
「ステぇ〜タぁ〜ス!!」
叫び声のようになっていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…ダメだ…やっぱ出ない」
息も切れ切れになりながらも、ユウキは座席部分にゴロリと転がる。
息を整えながらも思考は色々と考えている。
『ステータスの表示がされない、それは何故?ゲームの世界では無いから?なら、リリーナかココに存在するのは?彼女だけがゲームの関係者?でも浮遊大陸もあるし…ダメだ、分からん』
知り得る情報が少ない上に、やるべき事は多過ぎ、どれから手を付ければ良いのか、どう手を付ければよいのか、ユウキ自身は混乱の極地にいた。
だから、その状態に気付くのが遅れた、遅れてしまった。
頭の下に感じる柔らかい感覚。
『あ〜これ、似たような事がさっきもあったな〜』
そう思いながら目を開けると、笑顔を向けるリリーナの姿があった。
「「………」」
互いに見つめ合う事ニ分、先に口を開いたのはユウキだった。
「いつから居た?」
「少し前です」
「少し前って?」
「扉を出た後、少ししてからです」
「……聞いてた?」
「何をですか?」
「オレの叫び声」
「??」
頬に左人差し指を当てて考え込むリリーナだったが、パチンと軽く手を叩くと
「あ〜先程の叫び声ですか?
はい、聞こえてました。確かステー」
「うわぁぁぁー忘れろぉー!!」
バッと跳ね起きるとリリーナの口元を平手で押さえて懇願する。
ここに、ユウキの黒歴史がまた一つ追加されたのだった。




