40話
心のダメージに打ちひしがれるユウキに近付いてくる風の精霊。
「それでは契約を」
そう言うと、ユウキの前に右手を差し出してくる。
「えっと…握手でいいのかな?」
「問題ありません」
目を閉じた状態でそう言う緑髪の精霊。
風の精霊だっけ?なんか、プライド高そうな感じ?
見た目からも、なんか『私は神に近いなんちゃら』みたいな事言って最強技使いそう。
などと、ユウキに思われてるとはつゆ知らず。
「主様?」
「あぁ、ごめん」
つい考え込んでしまった、どうにもこのクセは止めないと…。
そう考えながらも右手を出して握手するユウキ。
傍目から見ると、小学生の男子と中学生の女子が仲良く手を繋いでいるようにしか見えない。
そんな繋いだ手が数秒程薄緑色に輝くと、直ぐに消え去る。
風の精霊は直ぐに手を離したので、ユウキは光の消え去った右手をジッと見てしまう。
コレと言って変化がある訳では無い。
「これで契約は終了…かな?」
「はい終了です、私はですが」
あ〜なるほど、それぞれ単体契約ですね、分かります。
少しだけ面倒だと思ったのはナイショの話。
そうやって右手を不思議そうに見ていると、次にやって来たのは赤髪の精霊だった。
歩いていようが止まっていようがウネウネと動く髪の毛が気になります。
「よし主様、次はオレの番だ」
「お、おう、俺っ子かぁ〜」
見た目が気ぃ強そうだったが、発言も解釈一致ってヤツだった。
気も強そうだし、喧嘩っ早いのかな、やっぱ?
そんなどうでも良さそうな事を考えながら右手を出す…が、何故か『火の精霊』はそれを無視してユウキに近付いていく。
「え?」
「マスター!!」
「主様?!」
気が付くと抱き締められていた。
いやホント、なんでだよ?一瞬の出来事だよ、これ?
待ってリリーナ、メッチャ怖い顔してるけど待てだよ待て!!
背はユウキより高いが胸がゴニョゴニョゴニョ〜な火の精霊に抱き締められながら頬に手を当てられ、そのまま…
「ちゅっ」
「「「!!」」」
後ろに控えるリリーナと、火の精霊の後ろにいる他の精霊達が驚き顔。
え、オレ?一応既婚者だから、額に接吻如きで慌てる訳無いじゃないかかかかか…おっとバグった。
「主様、オレとの契約は?」
「…分かった、契約する」
「ありがとよ」
ニッコリ笑った笑顔が可愛いケド…人間じゃないんたよな〜。
そんな事を思っているともつゆ知らず、ユウキの後ろでは、鬼の形相で火の精霊を睨み付けるリリーナと、「ズルい」発言を連発する風の精霊、「その手があった」と呟く光と土の精霊、何故か真っ赤な顔をする水の精霊と、何とも混沌具合が加速していた。




