35話
「申し訳ありませんでした」
顔を擦りながらそっぽを向くユウキに土下座するリリーナ。
その周辺をフワフワと浮く妖精達。
意識が飛んだユウキに気付いたリリーナが、半狂乱になりながら揺すって起こそうとし、それを止めようとする妖精と言い合いをする…と言う、何ともカオスな状態になっていた、ついさっきまでは。
騒ぎに気付いたユウキがリリーナを諌めて今に至っている。
簡単に言えば『ムスッとした顔で怒っている』所だ。
そんなユウキに、正座状態から土下座するリリーナを見ると、何とも言えない顔をしてしまう。
っと言うのも、リリーナの種族『有翼族』、その中でも自ら『天有族』と名乗る彼女達は、とてもプライドが高いと言われていた。
勿論ゲームの中での話だが。
有翼族、キング·オブ·キングオンライン内で『翼を持ち意思疎通の出来る人型』と言う者達を引っくるめて呼ぶ総称だ。
例えば、鳥の顔に人の体、背中に黒い翼を持つ『鳥翼族』、別名『バードマン』や、全身を鱗に覆われ、顔が蜥蜴に似た『竜翼族』事『ドラゴニュート』などがいる。
そんな中でリリーナ達の一族は『天有族』を自称している。
実はコレ、ゲームプレイヤーである『異邦人』が原因となっているらしい。
運営会社曰く、『有翼族の中でも希少な彼女達を初めてみた見た異邦人が「天使様」と言い、それを聞いた彼女達が由来を聞いた結果内容を気に入り、以来自らを「天より選ばれし一族『天有族』と呼ぶように」と言う設定』にしたとか。
それと同時に『プライドが高く、他の有翼族を下に見る傾向にある』と追加された設定の為、彼女達の一族の村に行くと、かなりアレなセリフを聞かされる事になる。
その為『戦力としては優秀だがNPCキャラと会話はしたくない』と言うプレイヤーも多く、彼女達の村へと行こうとする人はとても少ない。
そんな一族のリリーナがリアルな人となったらどうなるか…実はそこが気になっていたユウキだったが…。
『このポンコツ具合を見ていると、そこまで心配する必要は無いのかな?』
どういう訳か、上目遣いでコッチを見てくるリリーナを見ると、警戒していた自分が馬鹿らしくなってくる。
はぁ〜っと一つため息をつくと
「もういいから、許すから顔を上げてくれ」
と言ってしまう。
オドオドしながら顔を上げるリリーナを見ると、本当にプライドの高い天有族 (自称)の一族なのかと思ってしまう。
『この辺りもゲームとの差異と思っていないといけないのかな?』
腕を組み、ついつい考え込んでしまうユウキに、スッと近付い来る者達がいる。
それに気が付き警戒の色を見せるリリーナだったが、ついさっきのやり取りからユウキへと手を伸ばす事を我慢する。
さすがに連続で怒られれば、リリーナとて三日は落ち込む自信があった。
それをユウキが知れば『何に対する自信だ』とツッコミを入れた事だろうが…。
「主様、御目文字叶って光栄に存じマス」
「やけに古風な挨拶だなぁ〜、それが君達の挨拶なのかな、えっと…精霊さん?」
ユウキのその言葉に笑顔を返すと、優雅に腰を落として自身のスカート部分を軽く持ち上げる、所謂カーテシーと言う行動だ。
「敬称など不要です主様、私達は精霊、この地に住まう精霊デス」




