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21話

「マスター!!」


悲鳴をあげながら、リリーナが半円状の床下へと飛び込んで来る。

そこには、半円状に凹んだ床でゴロゴロと転げ回るユウキの姿があった。


「痛っ、目が痛い!!」

「マスター」


リリーナは、直ぐに暴れるユウキを抱える。

リリーナ腕の中でも両目を押さえて体をクネらせるユウキの額に左手を当て、一言『ヒールし』と呟く。


先程の『ライト』の魔法よりも小さな淡い光が、ユウキの額を中心に全身へと広がる。

すると、ジャージからはみ出ていた皮膚の傷までもが、まるで映像の逆再生のように治っていく。


両目を押さえていたユウキも、急に痛みの引いた事で手を外す。

キョトンとした表情で両目をパチパチと開け締めする。


「今のはリリーナの?」

「はい、癒しの魔法ですマスター」


自分の魔法でユウキにケガをさせてしまった事による罪悪感から目を伏せてしまうリリーナ、だが


「おぉ〜すっげぇ、魔法すげぇ」

「はい?」


リリーナの腕の中から、それはそれは笑顔で『凄い』を連発するユウキに、思わずたじろぐリリーナ。


「あの…怒らないのですか?」

「へ?何で怒るの?」


てっきり、目の前に光を出した事に怒られると思っていたリリーナだったが、何とも思っていなさそうなユウキの態度に疑問を呈す。


「いやだって、目を眩ませたのは俺のせいだし」

「ですが、光をマスターの近くに出してしまったのは私のせいです。それが無ければ、マスターはこんな酷い目に合う事も無かったのに」


そう言うと、顔を伏せていると


「でも治してくれた、ならそれで良いや」


ニッコリ笑ってそう言うユウキ。

その言葉に驚いた顔を上げてしまうリリーナだったか…


「マスター、お人好し過ぎますよ」


呆れた声音でついついそう言ってしまった、悪気があった訳では無いのだが、失礼な物言いだと感じた。


「うん、俺もそう思う」


ユウキのそんな返しに互いに顔を見合わせ、思わず声を出して笑ってしまった。


『こんな素直に笑ったのは初めてかも』


そう思うリリーナだった。



〜〜〜〜〜


「さて、それよりも…だ。ここが指揮所で間違いない?」


クスクスと上品に笑っていたリリーナに、コホンと咳払いを一つしてから聞くユウキ。


「…はいマスター、その通りです」


表情を改め、真面目な顔をするリリーナ。

その返答から周囲を見回す。

凹みしか見えない。

丸く削り取られた床、その凹みの中心位置に立つ自分、記憶通りならココには巨大なクリスタルが浮かんでいたハズだった。

しかしそこは、丸い凹みのみ。


「クリスタルも土台部分から無くなっているのか」


そんなボヤキがため息と共に出てしまう。

何しろ、現時点でこの浮遊大陸を制御出来る手段が他に思いつかないからだ。

ゲームであれば、大陸が常時フワフワと空中を浮いているだけで何とかなるが、現実世界でとなったら浮いているだけでは問題がある。

自分の思い通り…とまでは言わないが、ある程度の移動が出来る制御方法は欲しい。


「さて、どうしたもんだか…」


今いる世界で、浮遊大陸がこれからも浮いていられる保証は無い。

何らかの時点で落下する可能性もありえる。

そんな時に大陸をコントロールする方法が一切無いとしたら…


「冗談じゃない、そんな未来はお断りだ」


凹みをよじ登り、部屋の内部を確認する。

正面には、何処ぞの有名宇宙戦艦の操舵席と、主人公がなんちゃら砲を撃つ為の席があった。

ただし、その席の前にある機器類は、一切の反応が無い。


左右を見れば、同じような機器類が設置されている。

ただし、ちゃんと立体的な代物としてそこにあった。

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