19話
カツカツと音が響く通路をテンポよく歩くリリーナ、ピンと伸ばされた背筋は威厳もあるしカッコいい事だろう…『俺をお姫様抱っこしていなければ』だけど。
徐々に言葉少なくなったリリーナ、もうすぐ奥にある扉に到着するとなった今ではか完全に無言になっている。
心成しか表情も固い…あれだ、強張っているって言うんだっけ?垂れ目なのは変わらないが、口元がキュッと絞られている。
「リリーナ?」
「この扉の先を左に行った奥、玉座の真下に当たる部屋が『指揮所』になります」
何かあるのかと聞こうと口を開いたら先に言われた。
こ〜ゆ〜のを『機先を制する』って言うんだっけ?(全然違う)
そんな下らない事を考えている間に扉が開かれた。
扉の先は、ちょっとした部屋になっていた。
位置的には、城の角部分に当たる所かな?右側が少し丸くなっており、上へと続く螺旋階段がチラリと見えている。
アレを登って行くと四隅の角にあった見張り台部分に行けるんじゃないかと予想。
そして左側、今通って来た通路と似た感じになっている。
ただし、少し違う部分もある。
今通って来た通路は、中庭側は壁が無く、手摺が設置してある吹き抜けだった。
その逆側は、壁と等間隔に設置された扉があった。
リリーナ曰く、あの扉の先にはそれぞれ小部屋があるとの事。
本来であれば城勤めの人々用の部屋であったり、事務作業者用の事務所のような場所らしい。
生憎と、それぞれの部屋が使われた事は無い。
「マスターが優秀ですから」
いや、その理屈はオカシイ!!
どういう訳か、この浮遊大陸上で行われる政治活動を全て俺がやっていた事になっている。
いや何でさ?リリーナを含めた面子がやってたんじゃないの?
「しかし、指示を下さったのはマスターです」
どうやら自分の預かり知らぬ所で指示が出ていた模様…いや、そんな訳ないでしょうが!!
「税に関して、街に住む各種族の長が、マスターの名の下責任持って集めてます。我々は、集められた税を管理し、金庫へと納めるのみです」
指示出した覚えも無いのに、俺の名前だけが一人歩きしていやがりましたよ。
それにしても税金取ってたんだ。
「元々マスターは質素倹約でしたから、税を取っても集まるばかりで…」
キング·オブ·キングオンラインの仕様で言えば、月に一度、自分の領地となっている規模や状況、そこに住むNPC住民や街、村の数によって運営側に費用を払うシステムだったハズなんだが…。
ちなみに、俺の浮遊大陸だと、領地の規模はデカいが、そこにある街や村の数が他の浮遊大陸に比べて少ない為、維持用の費用は少なかったりする。
一番多いのが平地型の浮遊大陸で金貨十万枚以上だったりする。
海洋型の浮遊大陸である俺のトコは、金貨二千枚と破格だ。
しかし、リリーナの話によると、この運営側に払っていたハズのお金が、全て国庫に入っている状態になっているらしい。
「うわぁ〜、金庫開けたくないなぁ〜」
とんでもない金額がありそうで怖いです。
「?」
「いや、気にしないでくれ」
俺の呟きに不思議そうな顔を向けてくるリリーナ。
うん、カワイイじゃないかコンチクショーめ。
まぁ、税の話は後回し、今は指揮所に行き、この浮遊大陸のコントロールが取れるか確認するのが先決。




