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9. ミリアとサシで話をしたところ

悪役令嬢を演じることは止めようと思った私だけど、ミリアとはどうしても話をしておく必要性を感じた。

ヒロインがティアナからミリアに変わった可能性も捨てきれなかったからだ。

現段階で、オスカー殿下はミリアを好きにはなっていないけれど、万が一ってこともある。

私は思い切ってミリアを呼び出した。


「ミリアさん、単刀直入に聞くわ。あなたはもしかして前世の記憶がある?」

「ゼンセ? 記憶? 何ですか、それ。ゼンセってどういう意味ですか?」

ミリアはきょとんとする。


「じゃあ質問を変えるわ。ヒロインとか悪役令嬢とか聞いたことは?」

「う~ん、よくわかんないです」


ここで前世のゲームの話は出せないので、昔、聖女様が書いた小説を引き合いに出す。

「ほら、100年前に異世界から来た聖女様が書いた小説にもあるでしょう? ヒロインが悪役令嬢に虐められるけど、真実の愛で幸せになる話。あれよ、あれ」

その言葉にミリアはくすりと笑う。

「ごめんなさーい。私、古典作品は読まないんで。興味ないんですよねえ。まあ、古典に限らず、本もあんまり読まないっていうか。すぐ頭が痛くなっちゃうし。繊細なんですよ、私」

ミリアの答えに愕然とする。


(えっと、じゃあ、ミリアはヒロインだとかそんなの意識せずに、オスカー殿下に近づいたと言うことかしら…。)


「じゃあもう1つ質問。ミリアさんはオスカー殿下のことを愛しているの?」

「う~ん、愛しているって言うより、なんか一緒にいたら得かなって思って。私って顔は可愛いし、光の魔力もあるじゃないですか。それにプラスして皇太子とも仲がいいってなると、私の価値はますます上がるでしょう? みんなに自慢もできるし。それってお得じゃないですか。うふっ」

またもや愕然とする。


ミリアのおしゃべりは続く。

「でもねぇ、オスカー殿下っていまいちノリが悪いっていうか。あんまりいい反応しないし、最近、ちょっと飽きちゃったんですよねぇ。だからもういいかなって。

それで、今度はアレン君と仲良くなろうと思って。アレン君は第一騎士団長の息子さんだし、私、赤い髪の男性って好きなんですよね。なんか情熱的な感じしません? 

あ、私がアレン君狙いっていうのは、まだみんなには内緒ですからね。うふふ」

彼女の言葉に、さらに愕然とする。


第一騎士団長の息子アレン・ギブソンは確か、ゲーム内では攻略対象の一人だった。

彼はケガの手当てをしてくれたティアナに惹かれていくはずで…。


「えっと、アレン君はもしかしたら、ティアナさんのことが好きかもよ。だってほら、ケガを治してもらっていたし。あれがきっかけになってとか」

「え~、それはあり得ませんよ。彼、ティアナさんのこと、完全に怖がっていましたもん。まあ、その気持ちもわかりますよね。私もティアナさんとは関りたくないですもん」

「そう…なんだ」


やはりシナリオは大きく変わっている。


「それに私、別にアレン君にこだわっているわけじゃないんです。超お金持ちのカーティス君とか、風魔力で学年一位になったハロルド先輩とか、仲良くなりたい人、いっぱいいるんですよね。」

「ミリアさん、あなたそんな移り気だと、誰かに恨まれますわよ」

「えー、そんな怖いこと言わないで下さいよ。うふふ。

でも意外ですね。エリザベスさんが私のことを心配してくれるなんて。見かけと違って、案外お人よしなんですね。じゃあ、私、これからイアン君と待ち合わせなんで、失礼しますね。」


疲れた。ドッと疲れた。

オスカー殿下のことでヤキモキしていたのは私だけ。

ミリアはアクセサリーか何かを選ぶような感覚で、彼に近づいていただけだった。

なんだそれ。

私、馬鹿みたいじゃない。


でもこれで色々はっきりした。

ミリアは皇太子妃狙いじゃなかった。

ティアナもオスカー殿下を避けている。他の攻略対象とも親しくない。

それに今のところ、聖女にもなりそうにない。

聖女候補になりそうな人もいない。

じゃあやっぱり、悪役令嬢はもう必要がないってことよ。

私はただ純粋に、オスカー殿下を愛したらいいってことよね。


むふふふふ。

遂にこの時が来た。

私、悪役令嬢の呪縛から、遂に解き放たれたんだわ!

やったわ!やったわよ!!

これからは、いいえ、これから先もずっとオスカー殿下を愛でて堪能しまくれる!

バンザーイ!!バンザーイ!!


「…えっと、一体、何ごと?」

その声は、オスカー殿下!


(恥ずかしい所を見られた!彼、どんな表情で私を見ているんだろう…)

バンザイ状態の手をゆっくり下ろし、ぎぎぎぎっと振り返る。

彼はちょっと笑って私を見ていた。


「何か嬉しいことでもあったの?」

「えっと…はい。お恥ずかしいところをお見せしてしまって。あの、こんな私ですけど、嫌いになったりしませんか?」

「何だい、今更。僕たちは婚約者だろう」

「そう、ですわよね」

「ところで、今から図書室に行こうと思っていたんだ。一緒にどう?」

「はい、喜んで」

私は彼にエスコートしてもらって図書室へと向かった。


う~ん、なんか引っかかるんだよね、さっきの会話。

私のことを嫌いにならないかって聞いた時、彼は、

「何だい、今更。僕たちは婚約者だろう」

と言っただけで、すぐ話を変えた。

以前から何となく気になっていたんだけど、オスカー殿下の口から「好きだ」・「愛している」という言葉を聞いたことがないんだよね。

これまで一度も。


私はオスカー殿下のことが大好きだけど、彼はどう思っているんだろう。

婚約者だからという理由だけで私と一緒にいるのかな。

貴族同士の結婚なんて所詮そんなもんだとよく聞くし。


ああ、彼の気持ちを聞くにはどうしたらいいの?

聞いてもし「好きじゃない」って言われたら、私、立ち直れる?

ああ、もう、どうしよう。

一つスッキリしたと思ったら、また次のことが気になっちゃう。

私の悩みは深まるばかりだった。

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