咲の変化
「それにしても、まさか勇者と言う存在に死体弄りが出来るとはね。しかも本人に自覚が無いときた、と言うことは先程の白騎士達は君の勇者としての能力によるものかい?」
そう言って話しかけてきた壮年の男は鎧を来ておらず、代わりに生地が厚く地味だが品の良い黒いローブを纏っています。
得体が知れなさすぎて不気味な男ですね。
気配察知にも未だに反応がありません。
そこにいるのにそこにいない、目を少しでも離したら見失ってしまいそうです。
勇者としての能力とはどういうことでしょう?
まあ、よく分からないなら言わない方が良さそうですね。
「……貴方に言われたくありません」
そう答えながらも新しい白騎士を警戒していると、警戒していることに気づかれたのか、聞いてもいないのに男は嬉しそうに白騎士についてペラペラ喋りだしました。
「これが気になるのかい?これも人間だよ。君達と同じ異世界人だ」
「………異世界人?」
"君達と同じ異世界人"と言うことは、私と海斗さんのように地球から連れてこられた人達という事なんですか?
「む?知らなかったのかね?この白騎士……いや白騎士達の素体は君達のような異世界人だ。君とは違い召喚に失敗した勇者を有効活用したんだよ」
「……召喚に…失敗した…?」
「そう。そうだとも!だからこそ君の召喚が成功したときは感動に震えたよ。君はこのような失敗作とは違う唯一無二の成功体なんだ!誇りに思いたまえ、今回の召喚はほぼ成功だ!残念だった事と言えば、もう片方の男は勇者ではなかった事と、何故か隷属魔法が効かないことの二点のみ。両方とも些事だ……」
性格の悪さが滲み出たような笑みを浮かべた男は、上機嫌に白騎士に命令を下しました。
「少し早いがこちらの準備もある程度は整った。───勇者を取り抑えろ」
その言葉を聞いた白騎士はスラリと剣を抜き、ヘルメットから見える焦点の合っていなかった瞳がこちらを見てきます。
ふと、目が合った瞬間、白騎士が視界から消えました。
「ッツ!?」
慌てて剣を盾にするように構えます。
ギリギリガードが間に合ったのか、骨に響くような衝撃が体を揺さぶり、踏ん張っても耐えられそうになかったので、適度に力を抜き滑るように後ろへ後退しました。
なのに、あっという間に追い付いてきた白騎士は、先程と同じく剣を振ります。
ですが──
──今度は綺麗に受け流し、すれ違い様に喉に一撃。
振り向き様にもう一撃。
体勢を崩したところで、聖剣に魔力を込めてヒビの入った鎧の隙間めがけて、剣を刺し込むように体重の乗った突きを放ちます。
「……………は?」
白騎士に命令を下した男は驚いて言葉も出ないようです。
その気持ち、とてもよく分かります。
私だってそうです。
体が勝手に動き、今、人?を殺したんですから………
「な、何で…………」
驚く男は隙だらけで、距離を詰めて剣を振るだけで簡単に殺せました。
「何ですか……これ?」
殺したことに対しても、私の心は微動だにしません。
「すっ…ステータス、オープン……」
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天堂 咲
種族:人族
年齢:14
職業:死◯の勇者
性別:女
LV1
体力:18900/18900
魔力:18900/18900
物攻:18900
魔攻:18900
敏捷:18900
物防:18900
魔防:18900
固有スキル
【勇者LV─】
【死者への冒涜】
【神降ろし】
【神技体得】
スキル
〈危機察知LV4〉〈気配察知LV4〉〈気配遮断LV3〉〈魔力操作LV4〉〈魔力感知LV5〉〈剣術LV4〉〈光魔法LV4〉
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固有スキル
【神技体得】
死○の勇者の固有スキル。
神の技を一時的に体得することができる。
数、質、時間は神との相性に依存する。
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「死○の勇者?」
神や死に関する力が多い事を考えれば、死○は死神でしょうか?
「どんどん人から遠ざかってますね」
それに付与されていた固有スキルが、いつの間にか自分の物になってますね………
ですが人のまま死ぬより、人をやめても生きていけるなら幾分マシでしょう。
とりあえず海斗さんと合流を───
───いえ、まず落っこちてる剣を拾っていきましょう。




