虚しい朝
どうもおはようございます。
最近寝て起きると、その度に人間から離れていってる蓮です。
今日はルターナに言われるまでもなく分かりました。
なんでかって?
手足が黒く変色したんだよ。
しかもあれだからね?黒人みたいなのじゃないからね?
なんか光沢があって、めっちゃ硬いのカッチカチなのよ。
朝はビビったね、何事かと思った。
最初は手が腐ったんじゃないかって焦ったよ。
でも、動くし感覚あるしで、翼や角と同じように引っ込めることが出来たから、大丈夫だって思うことにした。
今は普通の肌だしね!
ちなみに真っ先に確認したけど変色したのは手足と背中だけで腹、胸、顔は無事だった。
だからどうしたってくらい変わっちゃったけどね……
そんな風にナイーブになってしまったので、寝てるルターナで遊─癒されるとしよう。
ルターナは横で俺の方を向いて横向きに寝ている。
昨日、向き合って抱き合って寝たからだ。
ちょっと恥ずかしいが、それ以上にルターナがかわいく見てえ仕方ない。
とりあえず頬をムニムニと触ってみる。
「………ん…………んん………」
ほほう、モチモチほっぺですな。
フニフニ。
プニ、プニ。
ミョイーン。
ほっぺに触るのに飽きてきたので趣向を変えてみよう。
なかなか起きないし何をしようか。
────『何してやがる』─────『何度起こしても起きないから永久に眠らせてあげようかと思って』───────『お前はバカか?バカなのか?バカだったのか?』────『バカは兄さんの方、高3にもなって遅刻するよ?』─────────
ほんの少し前なら当たり前のありふれた日々。
何故、今こんなことを思い出すのだろうか。
どうして、こんなにも心を強く抉るような虚無感を感じさせるのだろうか。
心がジクジクと痛み、自然と自分の手を見た。
黒く変色させ、元に戻す、また黒く変色させ、元に戻す。
何度も繰り返すうちに、気がつけばポロポロと涙がこぼれていた。
今になって変わってしまったと、寂しさを感じているのだろうか?
「……情けねぇ」
俺が寂しがってどうする?
泣くくらいなら、動いて足掻け。
息を深く吸い、ゆっくりと吐き、涙を拭く。
──────『や、約束ですよ?今度こそちゃんと守って下さい。』───────────────
あの時の約束を思い返す。
そう言えば守ると、言ってやれなかったな。
「ああ、守るさ、ちゃんとな」
だからもう少し待っていてくれ、すぐに迎えにいく。
ふと、咲にそっくりなルターナに視線を引き寄せられる。
ルターナの頬に触れ俺は───
口と鼻を手で塞いだ。
「………ん…………んん………」
ルターナがピク、ピクっと動く。
「………んん…ん…………んん?…………」
ゆっくりと目が開く。
目があった。
「……」
「……」
手をどけない?
「……」
「……」
手をどけなかったので離す。実にシュールだ。
「……」
「……」
そして、頭を撫でた。俺、なにしてんだろう。
「……ん」
「起きた?」
「起こされたの」
少し呆れながら言われる。
「まあ、起こしたからな」
「で?どうしたのよ?」
そう言いながら対面にいる俺の胸に顔をグリグリ押しつけてくる。
「どうもしない、ただの気まぐれだよ」
ワシャワシャとルターナの後頭部を撫でる。
「そ」
「そう言えば昨日も思ったが教会には行かないのか?」
「すぐ行く必要は無いのよ」
「そっか」
「なあ、今日は遺跡行く予定だったけどスキルの練習をしてもいいか?」
「あら、どうして?」
「ルターナのスリーサイズ知るためにどうしても全知が使いたくなった」
「そう」
そう言ってルターナはクスクス笑う。
「じゃあ、ご飯を食べたら行きましょうか」
「食べんのは、未だにルターナだけだけどな」
そろそろほんとに餓死しそうなんだけどなぁ。
最近は空腹も感じなくなってきた。
▽▽▽
それから4日間、俺はずっとスキルの練習をのみを続けた。
朝起きて砂漠に行きスキルの練習をし、夕方帰って寝る。
ルターナは朝と夜のみしか食べないようなので、俺と一緒に砂漠でスキルの練習をしていた。
ルターナのスキルは死神と言う固有スキルのみらしいが、スキルにならない、もしくは表れない技術を磨いたそうだ。
俺の方は練習をはじめて2日目で創造をクリア。
3日目で神技をクリア。
そして、4日目ついに───
「出来た」
全知をクリア。
まだ足はふらつくし、目眩は治っていない。
しかし、得た情報を認識できるようになった。
少し時間はかかるが、これで──
ピシッっと視界にヒビが入る。
「ぐぁぁぁ!!」
目に針のようなもので刺されるような鋭い痛みが走る。
はじめて全知を使ったときより酷い耳鳴りが聞こえ、頭が割れそうだ。
だがそれより…
ドクン!ドクン!!と心臓が強く拍動しはじめた。
まるで、全身の血管が心臓になったようだ。
(なんだ…これは?)
ヒビの入った視界に変なものが混ざりはじめる。
豪華に飾り付けられた室内。
端の方にボロボロの騎士が見える。
なんか高そうな赤い軍服?を着たダンディーなおっさんもいる。
(…宮殿?)
「ぐふっ」
ドクン!!!と心臓の拍動が更に強くなる。
それと同時にだんだん意識が遠くなりはじめる。
「くっ…そ…」
ルターナは今、俺の異変に気づいたようで近づいてきたが…
ズシン!!!と芯に響く衝撃が胸に響き渡り、カチリと何かがはまる感覚と共に俺は意識を失った。
ブクマが50人と言うことを知り感激です。
評価をつけてくださった方々にも心からの感謝を!