回復してあげます!
私が生まれ変わったのは小さな農村の村長の家だった。家族は両親に兄が2人と姉が1人。貧しくもなく、それほど裕福でもない。食べるものには困らないが、贅沢するほどの蓄えはない様子。
家族の仲は良好。兄姉とは年が離れているため末っ子の私を猫可愛がりしてくる。
長閑な農村で争いや揉め事もなく、村人も気質が穏やかで平和だ。
ありがとう、この世界に転生させてくれた人。
ここならなんとかやっていけそうです。
私のスペックは現在こんなもんだろう。
◇名前:チィーナ(チィ)
◇年齢:5 歳10ヶ月
◇地位:村長の娘
◇HP:MAX
◇MP:不明
◇満腹度:MAX
◇攻撃力:猫パンチ
◇防御力:パリパリに乾燥した昆布
◇知性:年の割に賢いと評判(実年齢+21)
◇精神:いつか鷹のようになりたいと望む鶏=チキンハート
◇運:悪くもなく、良くもない
◇魅力:金髪碧眼、田舎で一番の美少女、都会にいくとその辺にいそう
◇特殊能力:回復
別にこれはステータスバーが見えるとかそんな能力でみたわけではない。なんとなく自分を客観的に捕えて作ってみただけだ。
ステータスが見える能力があったらもっと正確なデータがあげられるが、今のところそんな能力は私にない。
MPについては今のところあるのかないのかさえわからない。ただ、ハザマの空間でお願いした回復術はちゃんと備わっていた。
まだ人に試したことはないが、弱っている植物に手をかざし「治れ」と念じると萎れていた花が一瞬でまた咲き誇った。
何度も実験してみたが、特にMPらしきものが減る感覚もなく、力を使ったからと言ってエフェクトが出るでもない。
回復以外にも何か力は使えないか試してみたが、特に手から火も水もでない。いろいろポーズをとって試してみたけど、まったく何も発動されなかった。
特殊能力といっていいのは回復能力だけのようだ。
だが、この能力。果たして人の目に曝してもよいものなのだろうか。
この年になるまで周囲を見てきたが誰も特殊能力なんか使っている様子はない。
もし私が回復能力を使ったらどんな目でみられるのかな?
人ならざる力をもつ魔女扱い?
神の御使いとか聖女様扱い?
なんかどっちに扱われても不幸にしかならないな。
できるだけ使わないで生きていったほうがいいのだろう。
そう、決めた途端に事件は起きたのだ。
「母さん、大変! ユリウスが森でベアーに襲われて大怪我しちゃったの!」
私より8歳年上のマリ姉があわてた様子で玄関の扉を開けた。
マリ姉に続いて長男のジーク兄さんが次男のユリウス兄さんを担いで入ってきた。
ちなみに長男は私と11歳離れていて、次男は7歳年の差がある。
長男(16)→長女(13)→次男(12)→私(5)
「へへっ、ちょっと油断しちゃった」
笑いながら血だらけの右腕を抑えるユリウス兄さん。
「まったく、繁殖期のベアーは凶暴になるから安易に近づくなって初めに言っただろうが」
肩からユリウスを下し血で濡れた上着を脱ぐジーク兄さん。
そこにマリ姉の声で母さんがやってきた。
「あらあら、結構深くいったみたいねぇ」
血だらけの息子をみてものほほんとしている。
「マリア、キッチンの棚から小瓶を1つ取ってきてくれる?」
母さんはマリ姉に小瓶をとってくるように話すと玄関の掃除をしはじめる。
「うん、わかった!」
マリ姉は小走りでキッチンに向かった。
ってえええええええええええええ!?
ちょっと母さん!?
大怪我してるユリウス兄さんほっといて掃除?
絨毯の染み落ちるかしらって、気にするとこ違うでしょう!?
はっ、そうだよ。こんな時こそ私の出番でしょ。今回復の力使わないでどうするの。やるなら今でしょ!!
「に、兄さんっ……その怪我私が回復してあげます!」
ユリウス兄さんに駆け寄る。
しかしユリウス兄さんのもとに到達する前にジーク兄さんに抱き止められる。
「チィは汚れるから近づいちゃダメだよ」
何をおっしゃる! そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!
「心配してくれてありがとうな。ほんっとにチィはいい子で涙がでるぜ。怪我が治ったらまま事付き合うから、今はちょっと離れてろな」
いや、だから。今こそ私が力を使う時なんだって。だから放してください。
「はい! 持ってきたよ小瓶」
マリ姉が持ってきた小瓶を母さんに渡す。
「ありがとう。さ、飲みなさい」
小瓶のコルクを抜くと母さんはユリウス兄さんの口に小瓶を突っ込んだ。すると瞬く間に血だらけだった腕の傷が跡形もなく治癒された。
うええええええええええええええ!?
何それえええええ。
目を真ん丸に見開き固まる私。
そんな私の顔を覗き込むように見るジーク兄さん。
「ん? どうした。ああ、チィは『エリクシア』の効果を見るのは初めてか。すごいだろ。なんでも直してくれる万能薬なんだ」
エリクシア。万能薬。え、そんなものあるなら私の回復能力とか意味なくない?
「うっし! 元通りだぜ。さあ、チィおいで、魔法使いごっこするか?」
全快したユリウス兄さんが両手で手招きする。
「う、うん」
唖然としたまま、ユリウス兄さんのもとへいく。
その後ほのぼのと兄妹でまま事しました。
兄姉のスペック
◇名前:ジーク(兄さん)
◇年齢:16歳
◇地位:村長の息子、長男
◇攻撃力:若手ナンバーワン、プロの傭兵にスカウトされるくらい
◇防御力:親父の拳骨くらってもビクともしない、殴った方が逆にダメージ食らう
◇知性:賢い、都会の学校に行くべき
◇精神:ダイアモンドに憧れる鋼レベル
◇運:MAX
◇魅力:黒髪碧眼、田舎で一番の美青年、やさしい、都会にいってもモテそう
◇名前:マリア(マリ姉)
◇年齢:13歳
◇地位:村長の娘、長女
◇攻撃力:不審者を拳一撃で仕留められる
◇防御力:ふつう
◇知性:年の割に大人びてる
◇精神:しなる竹のように強く柔軟
◇運:MAX
◇魅力:黒髪碧眼、田舎で一番の美女、やさしい、都会にいってもモテそう
◇名前:ユリウス(兄さん)
◇年齢:12歳
◇地位:村長の息子、次男
◇攻撃力:若手ナンバーツー、プロの傭兵にスカウトされるくらい
◇防御力:親父の拳骨くらっても踏ん張れる
◇知性:あまり賢くはない、年相応
◇精神:鋼に憧れる鉄レベル
◇運:アンラッキー
◇魅力:金髪碧眼、田舎で一番の美少年、都会にいくとその辺にいそう