92.「チェーンチューン ――獣人探索+⑪――」
主に高い段差を飛び越える時、ミズハは腰に装着したチェーンワイヤーという装置を使用する。
かつてクリスタルを使用していた頃の、瞬間移動に極めて近いあの機動力を取り戻すために。
実際にはとても全盛期を再現できるレベルの代物ではないが、両手がフリーになるという利点を考慮すればこれが最も有用な装備品になった。
この装置には推進力を発生させる機構が備わっていない。
ガスを溜めて噴射するための筒でも備え付ければ良いのだろうが誰もそこに考えが至らなかった!
ではどうやって空中を高速移動しているのか。
一つは使用者の脚力による地面を蹴り出す力。
もう一つはワイヤーの伸縮による引張力。
特にこの森のように空中を連続して飛び続ける場合は後者の引っ張る力が重要になる。
「人間の体をワイヤーで引っ張るには相当の負荷が掛かるのではないか?」と開発当初から言われ続けてきた。
使い続けたせいで腰の骨を壊した者もいた。
それをサポートするために使用者はコルセット等を巻いて体をガチガチに固めている。
使い物にならなくなった右側の装備を取り外す。
するといくらか体が軽くなったように感じた。
本当ならもう片方のワイヤーも外し、100%の力で周囲を取り囲む獣等を一掃しておきたいところ。
「でも今は追いかけるのが先だ」
破損した装置を木の上に立て掛けて、ミズハは片側のワイヤーのみでさらに奥へと進んでいく。
誰もそこに考えが至らなかった=作者が至らなかった、ということで(笑)




