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京成沿線Add9 瀬戸拓海の生活再生ファイル

作者:酒井 光菜
最新エピソード掲載日:2026/05/13
家計簿には、愛情の赤字が載っていない。
瀬戸拓海は、京成沿線を拠点に活動するファイナンシャル・プランナー。
住宅ローン、教育費、保険、介護、相続、副業、離婚。人が人生の節目で抱える金の問題を扱う男だ。

だが、拓海が見るのは預金残高や年収だけではない。

通勤時間。
家事負担。
保育園の送迎。
夫婦の沈黙。
子供に怒鳴った回数。
親への仕送り。
眠れなかった夜。

彼は、家計簿には載らない「生活の赤字」を独自の解析システム〈Anonymous Balance〉で可視化する。

第一の相談者は、住宅ローンの仮審査に通った若い夫婦。
数字の上では家を買える。だが、拓海が弾き出した結論は冷酷だった。

「買えますよ。数字の上ではね」

拓海は他人の生活に潜む破綻を暴き、時に救い、時に傷つける。
しかし、その夜、彼のシステムはありえない解析結果を表示する。

【解析対象:瀬戸拓海】
【配偶者への未返信時間:六十一分】
【直近七日間の娘との対話:推定十二分】
【家庭内負債:算出不能】

他人の生活を再生してきた男自身の家庭が、最も深い赤字を抱えていた。

京成沿線、上野、船橋、津田沼、西千葉。
街の片隅で、今日も誰かの生活が静かに破綻しかけている。

これは、FP・瀬戸拓海が、数字では救えない人生を、それでも数字から救おうとする物語。
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