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6番地 セゾニエ村訪問

いよいよ、アパートの扉の向こう側――異世界へ足を踏み入れます。

ボールペン1本が引き起こす、ちょっとした経済パニック(?)をご覧ください。

 リアルな異世界を目の当たりにした牛込は、さっきからずっとテンションが高い。


「なあ、これ向こうから外行けるんだよな?」

「行ける」

「行こうぜ、早速!」

 

 急展開が過ぎるだろ。


「俺パス」

「えー、なんでだよ」

「危ないかもしれないだろ」

「大丈夫。危なくない」

「お前の基準は信用ならん」

「セゾニエ村の中なら安全」

「村なの!?」

「私別に世捨て人じゃない。心外」

 

 結局押し切られて行くことに。

 フローリングと石床を区切る境界の前に立つ。

 たった一歩、それだけではあるが……俺はため息をついた。


「……行くぞ」


 一歩踏み出す。

 空気が変わる。匂いが違う。もっとも俺にとっては知っている、薬草の匂いだが。

 牛込も続いて入る。


「うわ……すげえ……」


 クロエに案内されるがまま、扉へ向かう。

 それにしても寝室以外はまだ散らかってるな……後で大掃除コースだな。


 扉を開けて外に出ると、そこはのどかな村だった。

 木造や石造りの家。畑。井戸。遠くには森。


「まさにファンタジーじゃん!やべえ!!」

 そう言ってあちこち写真を撮りまくる牛込。

「お前マジでSNSとかに晒すなよ!?」

「そんな火種になるようなことしないって。オレにだって線引きはあるぜ?」

「そういやお前ネットリテラシーだけは滅茶苦茶きっちりしてたな……」

「"だけ"は余計だろ"だけ"は。お、綺麗な花あんじゃ――痛ってぇ!?」

「あ、それ無闇に手を出すと噛みつく……って遅かったか」

「おい村の中なら安全って言ってなかったか」

「人間相手には傷一つつけられないから大丈夫」

「ならいいか」

「よくないよォ!?」

 

 村人が珍しいものを見るような目を向けた。


「オレら浮いてない?」

「さっき騒いだのもあってめちゃくちゃ浮いてるな」

「大丈夫。そこまで気にしない」


 村人めっちゃ見てるけどな?

 

 ――ふと、単純な疑問。普通に話してるけど、コイツある意味では外国人なんだよな……?

 

「クロエ、翻訳魔法みたいなのはないのか?」 

「あるにはある。けど、アキヒサとタツヤ相手には使ったことない」

「え、それってつまり……」

「言語は同じ。この国(リュンヌ王国)の住人なら普通に通じる」


 そういや俺の漫画普通に読んでたなコイツ……。

 そんなことを考えながら先ほどの村人がいた方を見ると…………まだいる。


「あの半分引きこもりなクロエちゃんが二人も男の人を連れてるなんて……!遂に春が来たのかしら?」

「「そういう関係じゃない(です)」」

「その割に息ピッタリじゃない」

 

 異世界でも牛込と同じようなことを言われるとは……。


 村を散策していると、牛込が商店を見つける。

 俺が止める間もなく突っ込んでいったぞアイツ……。ほぼ間違いなく日本円使えないだろうにどうするんだ。


「こんにちはー!」

「いらっしゃい。……見慣れない格好だけど、異国からのお客さんかい?」

「まあそんなところッス!見た感じ、ここは八百屋さんですか?」

「そうだな。何か気になるものでもあったかい?」


 ……気付けば、俺も八百屋にダッシュしていた。牛込が何かやらかさないか不安だったのであって、異世界の食材が気になったとかではない。断じてない。


「……おぉうびっくりした……兄ちゃんのツレだろ?」

 そこはちょっと確信あるのかよ。内心でツッコミを入れ、黒いナスのような野菜を手に取る。

「一応友人です。ところで、これはどうやって食べるのが美味しいですか?」

「オーベルか。ちょうど今頃が旬なんだが……油を少し入れて炒めるのがオススメだな。3本で5バナでいいよ」

 

 円じゃないのは十分予想できたが……いざ聞くと高いのか安いのかよく分からない。一人で考えても仕方ないので、少し離れたところにいたクロエを呼ぶ。

 

「こっちの"バナ"と日本の"円"を比べられるようなものってないか?」

「んー……近所のパン屋で売ってるパンが1つ5バナだった」

 

 コンビニのパンと比べると……このオーベルは3本で150円ぐらいか。もっとも、金がないと意味はないが。

 すると、やり取りの様子を見ていたらしい店主が助け舟を出してくれた。


「なんだ、兄ちゃん達クロエちゃんのツレだったか。しかしあの『ズボラな魔法使いの弟子』がまともな男を連れて歩いてるなんて、明日は槍でも降るのか?異国から来たんならそっちの何かと物々交換でも構わんよ?」


 そうは言っても150円ぐらいのものなんて……ボールペンぐらいしか持ってないが、仕方ないか。


「こんなものしかないですが……」

「どれどれ……これは……筆記具かい?」

「ええ。ボールペンというんですが」

「うーむ………………」


 店主が試し書きしながら何やら考えこんでいる。流石にダメか……?


「釣り合わないよ!?こんな精巧なもの、どう安く見積もっても3000バナはするでしょ!?」

「いえ、母国では本当に5バナぐらいで売られてます」

「兄ちゃん達の国の技術どうなってんの!?」


 まさか「オレまた何かやっちゃいました?」的なシーンをリアルで見ようとは。


「オーベル3本だけじゃ申し訳ないから」と、さらに野菜を押し付けられた。食費が浮くのはありがたいが、流石に処理しきれるか分からない量だ。


 時間も遅くなってきたので帰宅。……帰宅でいいんだよな?こんがらがってきた。

 

「いやー、すげえな異世界。また行こうぜ」

「二人ならいつでも来ていい」

「お前はセゾニエ村の何なんだ」

「住人」

「それはそうなんだがそうじゃない」


 牛込は満足そうに帰っていった。

 静かになった部屋で俺は思う。


「……日常ってなんだっけ」

 あとこの大量の異世界野菜どうしよう?

異世界の野菜「オーベル」をゲットしました。

ということで次は、手に入れた食材を調理する「飯テロ」回です!

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