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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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初めての出征 ⑲

「何? 精霊? またやったのか」

「・・・やろうと思って、やったわけでは・・・」

 逃げ帰った領主館で緊急事態だと執務室へ突撃した私に、要所だけを掻い摘まんだ報告を聞いたお母様は呆れた顔をして、お父様は諦めたような顔でこめかみを揉んでいる。


「分かった分かった。何が有ったのか、落ち着いて最初から話してみろ」

「・・・えっと。住居建設のお手伝いが終わって領主館へ帰ろうとしたら、北門の外で新領民たちが“獰猛くん”の前に集まっているのをルナリアが見付けて」

 私の説明にルナリアだけでなくお父様も頷いた。


「ああ。何やらゴーレムに向かって祈ってると報告が来ていたな」

「それでアンリカを見に行かせたんだがな」

 アンリカさんがお母様の指示でタイミング良く現れたのは、問題発生の予兆として新領民たちの奇行が報告に上がってのことだったらしい。


「・・・アンリカさんが来る前にバルトロイさんが私たちを見付けちゃって、魔法の話で問い詰められそうになったところをアンリカさんが助けてくれたんだけど」

「今度は新領民たちに囲まれたと?」

 先読みしたお父様の予想に頷いて返す。


「・・・最初は“獰猛くん”を壊さないで欲しいって嘆願だったんだよ」

「“獰猛くん”? まあ呼び名は何でも構わんが、あんなもんを残せだと?」

 私のネーミングセンスに何か言いたそうなお母様が、新領民たちの嘆願内容に眉を顰めた。


「・・・巨大な魔獣から守ってくれた“守護の巨人”の強さに、安心感を抱いた新領民が多いからって」

「都市内を穴だらけにする“守護”とは何だ? 馬鹿馬鹿しい」

 お母様は鼻息一つで笑い飛ばす。

 ごめんなさい。それは“獰猛くん”ではなく私の仕業です。

 懐が深いお父様はお母様の言い草に苦笑する。


「そう言ってやるな。守ってくれるはずの国に裏切られて逃げてきた民たちだ」

「それは分かっているが、それならアレを操って戦ったフィオレを讃えるべきだろうが」

 国に裏切られた、か。

 新領民が「自分たちを守ってくれるもの」に縋る気持ちは、私たちが想像するよりも強いのかも。


 個人が所属する国や民族というコミュニティ単位が及ぼす影響は、意外と強いものだものね。

 現に私は今でも日本人だった頃の思考回路や判断基準を捨て切れずに居る。

 個人のアイデンティティを構築する基礎として、国や民族というものの存在は非常に大きい。

 ん? 国? 民族?


「・・・あっ、そうだ。その嘆願を持ってきた人は名前に“エ”が付いて無かったんだよ」

「“エ”とは何の話だ?」

 またよく分からないことを言い出したと言わんばかりに、お父様が首を傾げる。

 でも、これ結構大事な話だから。


「縁起担ぎの風習か何かだと思うんだけど、エクラーダでは名前か家名に“エ”が付いてることが多くて、恐らくなんだけど、家名に“エ”が入ってる人の方が家格が高い傾向が有るんじゃないかと」

「“エ”か・・・。そう言われれば、そうか?」

 記憶を探るようにしたお父様は、肯定しつつも確信が持てない様子だね。

 指摘した私自身が推測の域を出ない観察結果だと考えていたから、今まで黙っていたわけだし。

 同様に記憶を探ったお母様は反論を見付けたようで、お父様に指摘を入れる。


「グリズの爺さんは名前に“エ”は入っていなかっただろう」

「ああ。将軍はエクラーダ王国出身ではなかったからな」

 ところが、お父様はお母様の反論に首を振った。

 お父様の否定に、初めて聞く情報だったらしいお母様が目を丸くする。


「そうなのか?」

「あの御仁はジュノー王国が陥落した際にエクラーダ王国へ逃れたと本人の口から聞いた」

 故人との思い出をお父様は懐かしそうに語り、お母様はアッサリと頷く。


「そうか。死んだ爺さんの話は、まあ良い。それでフィオレ。その嘆願を持ってきた男が何だ?」

「・・・たぶん、元・官吏か何かじゃないかな、って。名前を訊いたら家名を伏せて答えなかったから、何かの事情は抱えて居そうだったけど」

 知識層だとは感じたけど、学者さんって感じでは無かったからね。

 お母様も関心を持った様子で思案顔になる。


「ほう? 粛清を逃れた官吏が同胞の代表者をしているのか」

「・・・まだ、ちゃんと聞き取りが出来ているわけじゃないけど、エクラーダ系新領民の取り纏め役として取り込めば、マリッドさんの仕事が楽になるんじゃないかな」

 コミュニティとのパイプを持つことで意思疎通が出来れば、統治しやすくなるのは必然だろう。


 同様の考え方は日本にも大企業の会社役員という形で存在した。

 労働組合の幹部を経営陣の一人に抜擢することで、労使交渉で組合側の反発を抑え込む手法だ。

 あれは別に経営陣が労働者をコントロールしようとしているわけではなく、意志決定の内情を見せて議論に参加させることで事前に摺り合わせて労使交渉を楽にしましょう、って根回しのためだった。

 私の意図を理解したお父様が納得顔で頷く。


「ふむ。その男は使えそうだな。もちろん、背景を調べて問題が無ければだが」

「・・・ミセラさんたちに調べて貰おうかと考えたんだけど、この件はサーシャさんたちに調べて貰う方が良いか迷ってる」

 ロス家傍系のミセラさんたちも、忍者を自称するサーシャさんたちも、間諜としての能力は持っている。


 他国からの難民という懸念事項には宰相さんも関心を持っているだろうから、そういった意味でもサーシャさんたちに任せる意味は有ると思うんだよね。

 国家経営の中枢を担う宰相さんに情報を流すことで懸念を減らせられれば、王都方面の人たちも安心するはずだ。


初めての出征⑲です。


小家族会議!

次回、承認!?

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