精霊姫 ㉔
お陰さまで、書籍版、第1巻・第2巻、予約受付開始しました!
特典SS付きで、Amazon様・BOOKWALKER様のほか、各種電子書店サイトでも順次予約受付開始しております!
イラスト・挿絵をご担当いただいたのは「かわく」先生です!
フィオレ・フレイアのビジュアルをご覧になりたい方は、各サイトの「予約受付中」の商品ページでご覧になれます!
こりゃあ、難民も働かせて自分たちの住居を建てさせるしか無いな。
仕事はたくさん有るけど、どこもかしこも圧倒的に人手が足りていないのだから。
ウォーレス領が輸出している岩塩も干し肉も売れ続けていて資金は潤沢に有るはずだし、建材が足りなければコピペ魔法で土を大量生産すれば、建物本体は土魔法で緊急量産できるはず。
ただし、建物本体は作れてもドアも窓枠も付いていないものは、ただの箱に過ぎなくて、住居とは呼べない。
もっと暖かい南国風味の気候なら、入口や窓にカーテンを吊すだけでも住居として成り立つかも知れないけど、いくら季節による寒暖差が小さく温暖な気候でも、ウォーレス領には四季らしい四季が有る。
霜が降りたり雪が降ったりはしなくても、ドアや窓がなければ冬は寒いんだよ。
住居として人が住むなら、当然ながら内装も家具も必要になる。
工兵部隊の魔法術師さんたちとエレーナさんとノイエラさんに手伝って貰えれば、建物本体の数は何とかなる?
私も手伝うのだから、何とかしてみせる。
それでも建具や家具の生産と設置は人手が足りない。
「・・・再確認だけど、難民にも働いた分の賃金は出せるんだよね?」
「もちろんだとも。領民になった以上、元からの領民とも賃金に格差は設けない」
「・・・分かった。ありがと」
お礼を口にすれば、お父様は優しい目で首を振った。
「・・・難民は私が説得するよ。たぶん、私が説得するのが一番だから」
「大丈夫か?」
「・・・やってみないと分からないけど、頑張る」
心配そうに訊くお父様に頷いて返す。
煽って、励まして、脅して、お尻を叩けば、何とかならないかな。
いやいや。私が弱気になってどうする。
何としても働かせて乗り越えないと。
私が決意を新たにしていると、難しい顔で腕組みをしたルナリアが、首を捻って考え込んでいる。
「んー?」
「どうした? ルナリア」
心労が重なるお父様にとって最大の癒やしであるルナリアの頭を撫でながら、お父様がルナリアを覗き込む。
「結局、住居って、どれだけ建てなきゃいけないの?」
「まだ分からん」
ゴール地点を問うルナリアに、肩を竦めるお母様が端的に答えた。
「ええ?」
「難民の―――、移住民の家族構成が分からんのだ」
怪訝な顔で首を傾げるルナリアに、遠い目になったお父様が答えて、状況を理解した私も遠い目になる。
なるほどなあ・・・。
住居を用意するにも単身者と家族連れでは必要になる住居の広さが違う。
「・・・あー。そりゃあ到着してみないと分かんないなあ」
こうして私たちは、勝利条件もハッキリしない戦いに挑むことになった。
だって、詳細を把握している人が誰一人として居ないんだから。
命からがらバタバタと脱出してきた難民の家族構成なんて把握できているわけが無い。
混乱で離散家族が発生してしまっている可能性も高いし、住居を割り当てられる際に離れ離れになった家族の居場所を確保しておきたいと考えるだろうことも人情だ。
現状の家族構成の実態よりも、難民たちが広い住居を希望する可能性が有るのだ。
大切な家族のために、というその気持ちは責められるものではない。
以前の私なら「みんな困ってんだから状況を考えろよ」と醒めた目で見ていただろうけど、大切な家族を得てしまった今の私には気持ちが分かってしまう。
その人情が実態の把握を困難にする。
実態が把握できなければ、何をどれだけ調達すれば良いのかが分からなくなる。
どこまで泳げば良いのか、足元に何が居るかも分からない、底の見えない夜の海に泳ぎ出すのは誰だって怖い。
難民たちも怖いだろうけど、私たちも怖いんだよ。
物も人も時間もリソースは有限で、限られたリソースを遣り繰りして結果に結びつけなくてはならない。
その責任を負うのが為政者というものだからね。
しかも、前回の難民は王国民だったけど、今回の難民は異国人だ。
そりゃあ、みんな神経質になる。
そう言ってる私も異国人だったけど、前回までとは難民の総数が違う。
流入する側も受け入れる側も、神経質になっている人たち同士が顔を突き合わせれば何が起こるか分からない。
「じゃあ、行ってくるわ!」
「おう。頼んだぞ」
「・・・うん」
ルナリアと並んで、ぐりぐりと撫でられる。
トラブルが起きる前にと、お母様たちとの家族会議を終えたルナリアと私は訓練場へと戻る。
精霊姫㉔です。
実態と人情の相克!
次回、教化!?




