精霊種 ⑯
「テツさんも訓練するべきです」
「あ~・・・。まあ、そうなんだけどな」
「・・・というと?」
言葉を濁すテツさんの態度に、らしくないなと違和感を感じる。
バツが悪そうにテツさんはガシガシと頭を掻く。
「魔素は多いらしいんだが、俺は魔法の感覚がよく分からなくてなぁ」
「・・・だから魔法が使えないと?」
「そうなんですよ! 体内の魔素は分かるのに使えないと言うんです!」
言い訳がましいテツさんの言い分に、ケイナちゃんが憤慨した様子で訴えてくる。
ほほう? テツさんにも意外な弱点が有ったね。
元が強すぎて弱点になっていない気もするけど。
もしかして、テツさんは肉弾戦専門なのかな?
投石でショージョーを倒したっぽいことは言っていたから、嘘は吐いていないけど、自分の弱点を黙っていたんだね。
慎重な立ち回りは良いことだし、別に構わないけど。
「・・・ははぁ。そうなんだね」
私の体験上、魔力の存在を“熱”という形で知覚できているのなら、試行錯誤すれば魔力は自分の意志で動かせるようになる。
もしかすると個人差が有るかも知れないから、“熱”として知覚しているのかは分からないけどね。
「・・・確かにテツさんの体内保有魔力量はメチャクチャ多いと思うけど」
「ああ。キミは他人の魔素が分かるんだったね」
視線で確認してくるレイクスさんに頷いて返す。
テツさんだけじゃない。
レイクスさんもケイナちゃんもメチャクチャ体内保有魔力量が多いことは、アクティブソナーを通さなくても肌感覚で感じ取れる。
ケイナちゃんが不満を零すのも納得で、ここまで魔力量が多いのに魔法が使えないというのはおかしい。
「練習は続けてるんだがなぁ」
ケイナちゃんに責められてテツさんが困った顔をする。
魔法を使おうとする意志は有るんだね。
なのに魔法が使えない?
「この話題になるとケイナが機嫌を損ねちゃってね。そんなわけで、術式を使えるようにするのをキミも手伝ってくれると嬉しい」
「・・・出来るかどうかは別として、お手伝いぐらいは構いませんよ」
テツさんがが魔法を使えるようになったら、とんでもなく強くなりそうなのにね。
きっと黒龍王の下へ到達するための助けになるはず。
私だって協力することは吝かじゃないよ。
元同胞ってだけじゃなく、ケイナちゃんたちやロブウッドさんたちを助けて、私たちの下まで導いてくれたのはテツさんだもの。
テツさんが私たちのもたらしてくれた恩恵は、とても大きい。
テツさん自身にも恩恵を返してあげたいからね。
何にせよ、体内に保有する魔力を知覚できているとケイナちゃんが証言していて、テツさん自身が否定しない以上、知覚は出来ているんだろう。
その上で、魔法の発動に必要なのはイメージだ。
魔力をイメージで変化、あるいは変質させて現象を起こすのが魔法というものだもの。
イメージはより明確な方が良い。
じゃあ、何をイメージするのか?
実現して欲しいと望む“現象”だよね。
ん・・・? “実現して欲しいと望む”?
ちょっと待って。私、魔法を使うときに“望んでる”っけ?
いやまあ、望む現象をイメージしているのだから“望んでいる”ことになるのか。
ただ私は、“出来る”あるいは“そうなる”と疑わずに現象をイメージしているわけで、それを“望んでいる”と表現することには違和感を感じてしまう。
「ふむ・・・」
何が原因?
私と同じように自分の体内に魔力の存在を感知できていて、私は魔法を発動できるけどテツさんは発動できない。
その違いはどこに有るんだろう?
私が魔法を発動する際のプロセスをもう1度思い返してみる。
体内の魔力を押し出して、掌握しつつ、イメージを固める。
発動を意識すれば、制御下に有る魔力を用いて魔法は発動する。
5段階かな。
どこかの段階で躓いているのだろうけど、どこだろう?
あれ? 待って待って。プロセスの他にも何か見落としてるな。
“望んでいる”か、かな?
しっくり来ないなぁ。
さっき何を考えてたっけ?
“出来る”? あ。コレかな?
魔力の放出は魔力の知覚と同じで体感的なものだから、出来ているか出来ていないかはテツさん自身が一番ハッキリと認識できるはず。
何なら、魔力が目に見えるレイクスさんに視て貰って放出できているか確認して貰えば良い。
掌握できているかは干渉できるか私が試してみれば分かるだろう。
日本の義務教育で基礎的な科学反応や物理法則を学んでいるのだから、テツさんが現象をイメージ出来ないとは思わない。
魔法の発動もまた体感的なものだし、現象が具現化するかどうかで成功か失敗かは分かる。
何となく思うんだけど、もしかすると、テツさんって魔法を信じて居ないんじゃない?
精霊種⑯です。
テツを考察!?
次回、リポップ!?




