再会 ⑧
「「「「「お疲れさまです!!」」」」」
「・・・お、おお。みんなご苦労さま」
声、デッカ!
馬上の騎士様たちの元気すぎる挨拶にちょっと引きながら労う。
みんな20歳ぐらいかな?
ビルさんよりも少し若い感じで、アスクレーくん部隊の新人さんたちよりも少し年上な感じだ。
ベテランの域に入りつつ有る年齢のビルさんが率いているのだから部下なのだろう。
そりゃあもう、パワーが有り余ってる年頃なんだから、元気なわけだよね。
「本隊へ戻るぞ!」
「「「「「はっ!」」」」」
ビルさんの指示に元気な答えが返って、すかさずルナリアが声を掛ける。
「ご苦労さま! 気を付けて戻るのよ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
総本家の可愛いお嬢様から労って貰ったとあれば、厳しく鍛えられて居る最中であろう末端の若者たちは嬉しいだろうね。
イイ笑顔で返してきた部下たちに目を細めたビルさんが颯爽と手綱を引く。
「では!」
速度を緩めて一斉に馬首を巡らせた6騎の騎士様たちが新領地へと帰っていく。
ビルさんはディディエさんたちにも手を振って去って行く。
「・・・おお。意外」
「何が?」
「・・・ディディエさんたちだよ」
「ふーん?」
ルナリアにはイマイチ私の感動が伝わらなかったみたいだけど、ディディエさんたちもビルさんに手を振り返していた。
うんうん。男性恐怖症の症状が軽くなったのなら良いことだよ。
ビルさん、よくやった。
いつの日かディディエさんたちもお嫁に行って幸せになってくれると良いんだけどな。
頑張ってくれたご褒美に領軍へお肉の差し入れでもして貰おうか。
兵舎で暮らしている若い単身者なんだから、お肉なんて有れば有るだけ食べるだろうしね。
ビルさんたちと別れて2時間近く。
馬の頭越しにテツさんたちと雑談しながら街道を進んで行くと、領境の関所が見えてきた。
旧コーニッツ・旧ムーア制圧戦のときには素通りした関所で小休止を取る。
魔法で水を出せるこっちの世界では馬に休憩を取らせるにも水場である必要はないんだけど、守備兵が常駐する関所にはおトイレが有るからね。
今、丁度、ネイアさんとオーリアちゃんを引き連れたルナリアがおトイレへ行っているところだよ。
ほぼほぼ道程の中間地点だから、先を急がない移動だと丁度良い休憩場所になる。
街道を通行する旅人が日没で町まで辿り着けなかった場合には、関所の近くで野営することも有るらしいよ。
「・・・ヨーシヨシヨシヨシ。しっかりお飲み~」
水玉に口を突っ込んだ馬がガボガボと音をさせて水を飲む。
ミセラさんたちを引き連れて、街道脇の原野で水魔法で生み出したスイカ大の水玉を浮かせて馬たちに水を飲ませて回りながら、じっくりと見たことがなかった関所を見て回る。
へぇ~。魔法が使えない人たちのためか、一応、井戸も有るんだね。
街道から見える範囲だけらしいけど、領境を示す木柵が延々と設置されていて、輜重付きの軍隊が通る可能性が有る関所の回りだけはガッチリとした木製の塀で領地間を隔てている。
サボット領との領境に有った関所も同じ構造だったな。
「フィオレ様。これ、直しておいた方がよろしいのでは?」
「・・・“1号”の足跡かぁ。誰かが転んで怪我をしても拙いしね」
レヴィアさんが指したのは、原野にボコッと空いた直径3メートルを超える大穴だ。
10メートル以上離れた木柵の向こう側にも穴ぼこが見えている。
ついでだからと、昨日“1号”を歩かせた際に踏み潰して作った足跡の凹みも、ズズズと地下から土を持ち上げて修復しておく。
これでヨシ。
塀に沿って街道側へ戻って行く。
この塀を伝っていくと、関所となる部分だけは街道の両脇にも同様の塀が建てられていて通路状になっている。
その通路の両端には観音開きの門が据え付けられていて、それぞれの領軍所属の兵士さんや騎士様が通行者の身元や荷物をチェックするんだよ。
「本当に関所を無くすのですか?」
「・・・行く行くは、になると思うけど、そのつもりだよ」
ウォーレス領は儲かっている領地だからあんまり重視はしていないみたいだけど、通行税の徴収は重要な財源の1つだからね。
レティアという国境の町を擁するウォーレス領としては、通行税の徴収よりも禁輸品や危険人物の通行阻止を重視しているから、隣の旧コーニッツ領とは温度差が有った。
関所を安全保障上の防波堤と見ているウォーレス領と、通行税の集金所と見ている旧コーニッツ領。
立場が違えば温度差も有るだろう。
特に国防を軽視する“融和派”に属していた旧コーニッツ家や旧ムーア家からすれば、通行する人物や荷物を詳しくチェックして時間を掛けるウォーレス領が煙たくて仕方がなかっただろうことは想像に難くない。
その厳格な通関チェックのお陰で今ここに居ることが出来た私としては、関所の重要性は誰よりも理解している。
関所はメッチャ大事。無いと困る。
ただ、それは通行税を財源として重く見て、隣領との人や物の行き来に不安を覚える場合のことだ。
ウォーレス家とピーシス家は一体不可分の関係だもの。
日本の出入国管理のように水際で厳格なチェックをしているなら、国内の人や物の行き来にまで通行税を取る必要はない。
ウォーレス領とピーシス領を1つの国内と考えて通行料を取らず自由な行き来を許せば、税が軽くなった分、人も物も動きやすくなって域内での物流は活性化するはずだ。
大きな儲けは域外の相手から取れば良いし、儲かった所得から徴税すれば良い。
その場合に大事なのは所得の把握だ。
文官を増やさないとな。
領民が増えたし、人間の把握を強化することは間諜対策にもなる。
隣組制度を持ち込むにあたって戸籍制度も充実させるべきだよね。
そう考えると日本の制度って完成度が高かったんだなぁ。
さすがは2700年近い歴史が有る現代地球最古の国家だよ。
優れた前例を知っているなら真似ない手は無い。
是非とも参考にさせて貰おう。
領内の把握が出来れば、この関所も不要品になる。
いきなりは撤廃できないだろうけど、小目標として掲げよう。
実現すると通行税がなくなると知れば、領民たちも戸籍の作成に協力してくれるんじゃないかな。
再会⑧です。
皇紀2700年は西暦2040年です!(雑学
次回、旧知!?




