精霊魔法というもの ㉗
「むー」
「そこに居ると信じる・・・」
ルナリアが唸っていて、お母様の集中しているような呟きが耳に届く。
私も集中しよう。
「・・・存在を―――、何を伝えたがっているか・・・」
胸の中に何かの存在を感じることは何度も有った。ケイナちゃんに教えて貰った今は、それが精霊だろうと確信もしている。
今までだって、気持ちのようなものを感じることも・・・。
私が気付いて居なかっただけなんだ。
ペッタンコな自分の胸に両手のひらを添える。
ねえ。ここに居るんだよね?
みんなに会いたい。姿が見たい。
居るんでしょ? 姿を見せて。
見えると信じて魔力に意識を集中する。
「・・・あっ」
自分で体内魔力を動かしたわけじゃないのに、暖かいものが手のひらに触れた。
胸から離した両の手のひらに暖かいものが載っかってる?
手のひらに目を凝らす。
これ? これかな?
透き通ってるけど、ぼんやりと何かが居るのが、何となく見える気がする。
飛蚊症じゃないけど、実体の無い何かが確かに居る。
こっちのピョコピョコ跳ねてる子は“火”かな? そんな気がする。
その場でクルクルと回ってる子は“水”かも。
ふよふよ~っと漂ってる子は“風”のような感じがする。
このジーッと動かない子が“土”かな。
少しだけ明るく見える子は“光”だろうね。
じゃあ、こっちのちょっとだけ色が暗く見える子が“闇”か。
そして、この子。一番近くで私にピトッと引っ付いてる大人しい子。
何となく感じる。
松の大木の洞で暮らしていたときの雰囲気に似た、懐かしい感じがする。
あ・・・。ダメだ。
視界がぼやけて来ちゃった。
暖かいものが頬を伝う。
喉の奥が詰まって呼吸が苦しくなる。
鼻の奥から鼻水が喉へ流れ落ちてくる。
「・・・ずっと・・・。ずっと傍に居てくれたんだ・・・」
手では触れられないけれど、存在は感じる。
ポロポロと零れる涙が止まらない。
私、森で暮らしていた頃も1人じゃなかったんだね・・・。
しゃくり上げていたら、横からルナリアに抱きしめられた。
「フィオレ・・・」
「フィオレは、どうしたのですか?」
ぼやけてよく見えないけど、ケイナちゃんの心配そうな声が聞こえて、ルナリアの手に頭を撫で撫でされる。
「木かなぁ。本当に木の精霊が居るのなら、フィオレにとって特別なんだと思うわ」
「そうなんですね。フィオレが特別に思っているから、その子もフィオレに憑いているのかも知れません」
解説のルナリアが私の代わりに解説してくれて、声にならないからコクコクと頷けば、ケイナちゃんの声が納得したような声色になった。
「精霊術式って、どうやって使うものなの?」
「精霊にお願いするだけですよ。気持ちが通じ合っている子たちなら力を貸してくれます」
「ほえ~。わたしも頑張ってみるわ!」
ケイナちゃんの教えを受けてルナリアが明るい声で頷く。
「お願いするだけ」か。
私の手の中に居る精霊たちからも好意的な気持ちが伝わってきて、この子たちなら手伝ってくれるんだろうな、と納得できてしまう。
ズズッと鼻水を啜り、袖口でグイッと涙を拭う。
今はまだ大事な話し合いの最中だ。
私もいつまでも泣いていられないね。
精霊探しの精神集中を棚上げしたらしいお母様もレイクスさんへ目を向ける。
「ふむ・・・。魔獣の血を飲めば体内の魔力が活性化するだろう? あの現象に付いて何か知っているか?」
「あれはテツが見出したもので、つい先日まで僕らも知らなかったんだよ」
「テツ殿が?」
お母様の目線がテツさんへ向くのに釣られて、ルナリアと私の目もテツさんへ向く。
私たちの視線が集中したテツさんは溜息を吐いた。
「水がなくてな。喉の渇きに耐えかねて、襲って来た触角ヘビの血を飲んだんだ」
「水がない、とは?」
お母様が首を傾げてテツさんが肩を竦める。
「娘に代わって穴へ落っこちた俺が黒トカゲを追う形でこっちの世界へ来たとき、穴から出た場所が空の上でな。黒トカゲと一緒に墜落した場所が森のかなり奥だったんだよ」
「空の上って?」
ルナリアが首を傾げる。
太陽と月の運動が知られていて暦が有ったとしても、宇宙に関する知識は一般的なものじゃないからね。
テツさんもそう思ったのか、言葉を探すようにして口を開く。
「超高空―――、空に雲が浮いてるだろ? アレの遙か上空だ」
「・・・大気境界層の上層―――、旅客機が飛ぶような高度かな?」
現代のジェット機が飛ぶ高度は、まだ大気が安定している地上1万メートルぐらいだったはず。
「風が強くてな。空が暗くて星が見えたから、もうちょっと上かも知れねえ」
風が強いってことは大気境界層のさらに上、自由大気層か。
地上1万メートルから上は、地面と大気の摩擦抵抗が減少して風が強くなるって聞いた気がする。
あれ? どうだったっけ?
精霊魔法というもの㉗です。
見えた!?
次回、ユニバ―――ス!?




