22 危険な夢
今日はやっとわたくしのために作られたドレスを着てこれたわ。これまでは地味なクラリッサお義姉様のドレスを着てあげていたけどやっぱりわたくしに合わせたドレスは最高ね。
ボブバージル様もこんなに見惚れて留まってしまうなんてなんて可愛らしいのかしら。
お義姉様はエイダお母様が説得して納得したけどショックだったらしく寝込んでいるらしいけどそれくらいはしかたがない。
それなのにボブバージル様はお義姉様のお見舞いに行くと言い出したから私はびっくりして引き止めた。お母様にボブバージル様を説得する言葉を考えておいてもらってよかったわ。わたくしだけだったらこんなに難しい話はできないもの。
それにしてもあんなにつまらないお義姉様の心配を本気でしているような顔をしているなんてボブバージル様は本当にお優しいのね。
ふふふ。ボブバージル様は照れ屋で困っちゃうわ。私からはっきり言ってあげないとだめね。
「もう、真面目さんねっ!
ここにはお義姉様はいないのよ。あなたの気持ちを隠さなくていいの」
私の頭にはボブバージル様の本当の気持ちが鮮明に浮かんで来ていた。ボブバージル様は心の中では私を『天使』って呼んでいるのよ。ふふふ。
ボブバージル様をお誘いする言葉ならスラスラと出てくるわ。ゲラティル子爵家にいたころにそういう男心はすっごく勉強したし靡かせるようなセリフの練習も実践でいっぱいしてきたんだから任せて。
「初めて会ったあの時、わたくしを見てあまりの美しさに驚かれたのでしょう?
あの時のボブバージル様ったらとても可愛らしかったわぁ。すぐにわたくしに一目惚れしたのだとわかりましたもの。
わたくしも一目見たときから、ボブバージル様のことをステキだなって思いましたのよ。
わたくしたちは惹かれ合っているのです」
私の気持ちもちゃんと伝えた。私はボブバージル様の心が浮かぶけどこれは私だけの力ですもの。ボブバージル様には言葉で伝えなくっちゃ!
「やっとお義姉様の目のないところで二人になれたのです。ボブバージル様のお部屋へ行きたいわぁ。お部屋からはメイドにも出ていっていただきましょうね。
本当の二人きりになるのよ」
私はギュッと手を握りしめた。頭の中にまたいろいろ浮かんできて私は呆けてしまったわ。なぜかメイドに突き飛ばされるようにボブバージル様とは離れることになったけど私は急いで帰宅したくなったからちょうどよかったわ。
執事がまるでゴミでも見るかのような目でわたくしを見ている。
『その顔は覚えておくからね。わたくしが公爵夫人になったら真っ先に首にしてやるんだから! さっきの突き飛ばしメイドも首にしなきゃ。
あれ? 顔覚えてないわ。だってメイドの顔なんていちいち見たりしないもんね。似たようなやつ全員首よ。うふふふふ』
わたくしは馬車の中で高笑いが止まらなかった。
マクナイト伯爵邸へ戻ると着替えもしないでお母様がいるサロンへ行ってボブバージル様を触れたときに見えたお話をしたわ。でもお母様は喜んではくれなかった。
「その話はとっても危険だわ。いいこと! 私以外誰にも言ってはダメよ」
せっかくわたくしがお金持ちになって幸せになるお話なのに怒られてしまってわたくしは不貞腐れて部屋へ戻った。
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僕が倒れたと聞いて母上が帰宅したその足で僕の様子を見に来てくれた。
「公爵家からの誘いを断るのに家令が来なかったのですってね。一応抗議のお手紙はしておいたわ。
それにしても姉のいぬ間に男の部屋へ入ろうだなんて礼儀も淑女もあったものじゃないわね。クララちゃんにとってよいことには思えないわ」
母上に僕の心配事が伝わったようで少しホッとした。
でも夢の話は家族にもできない。
だって…………頭がおかしいって思われてしまうから…。
それからというもの何度手紙を出してもクララから返事が来なかった。ぼくは数日我慢して再び母上に相談する。
「公爵家の封蝋を無視できるなんてどういう神経してらっしゃるのかしら?」
母上は腕を前で組んで怒っているが母上の言葉の意味がわからない。
「どういうこと?」
「クララちゃんにお手紙が届いていないんじゃないかって思うのよ」
僕はあまりのことにあ然とする。公爵家の封蝋を使わない場合は僕もその危険性を考えた。
『伯爵家が公爵家の封蝋がされた手紙をなかったことにしている?
普通なら……できない。そう、普通なら……
ダリアナ嬢の母親が普通の人か……?』
僕はとても不安になってもうしばらく待っても返事がなかったらマクナイト伯爵邸へ行ってみようと思っていた。




