序列戦翌日
僕の名前はアルフ。ごく普通の平民の子供さ。でも僕は小学校では毎日給食のパンを持っていかれるんだ。僕が何もできないことを良いことにしてね。こんなことを言うのは恥ずかしいけど今日も僕は校舎の裏で泣いちゃったんだ。情けないと思うでしょう?でもそんな情けないのはキミであり僕なんだ。僕はあの時は何度でもこいつらを殴り殺してやりたかった。でもキミはそんなことはせず、耐え続けた。キミって結構我慢強くてね。流石の僕もキミの「心」には打たれたね。だから僕はキミに力を使わせた。僕はキミを気に入ったんだ。しかもその力を正しい方向に使った。このしょうもない世界を見返すような行為を。僕は最高に気分が良くなったよ。何度でもいうが、僕はキミを気に入っている。その力、有効活用したまえよ。それは僕からの贈り物だ。おっと、そろそろキミが起きる時間だね。じゃあ、またね。
「なんだ....この夢...俺に話しかけてたのは...けっ、昔の俺なんざ、ろくでもねぇことなのにな。」
俺は目が覚めて一番、カーテンからこぼれる日の当たるベッドの上でそう呟く。その後はいつも通りに制服に着替え、リビングに行き、母さんが作ってくれた飯を頬張る。俺が後ひと口でパンを食べ終わるというところで母さんが俺に向かって
「アルフ、あんた序列戦優勝したんだって?...それに聞いた話だと順位を譲ったって言ってたんだけどどうしたんだい?」
「一応...ね。でも、俺はそんな順位なんてあったっていいことなんて一つもない全部しょうもないなんだって分かったんだ。...俺はそんな順位より、自分の実力で進みたいんだ。」
「...っ...あんた、本当に....まぁいいわ。そろそろ学校遅刻しちゃうんじゃない?」
何か母さんは言いかけたが、その後に言われたことに気が付いて俺は時計を確認し、後ひと口のパンを口に放り込み、
「あぁ!!そうだった!!....じゃあ行ってきます。」
そう言って家を出た。
俺はいつも通り、遅刻ギリギリに校門を通過しようとするが、今日もまた俺を注意(?)してくる奴がいる。そいつはいつに増しても元気かつ笑顔で
「アルフ様、おはようございます。本日はこれと言って大きな行事はございません。ごゆっくり過ごせるでしょう。」
「あぁ、そうなのか。ふぃ~、やっと俺の休日だぁぁぁ~...!!」
という元気なヤツの隣で俺は、体を伸ばしていた。そして、昇降口まで来たあたりで、
「アルフ様、確かに大きな行事はなくても、小さな行事はたくさんあるので、ご注意くださいね?」
「おぉ、そうか。まぁいいや、....ってえ?なんでお前ここの昇降口来てんの?Aクラスは向こうのキレーなほうだろ?なんでわざわざEクラスの所に?」
俺は俺の横で平然と靴を脱ぎ始めて、上履きに履き替えようとしているローゼンを見てそういう。だが、向こうからはとんでもないレスポンスが返ってきた。
「...はい?..え~と、アルフ様はまだ聞いていないのですか?私、今日からEクラスに配属されたのですけれども。」
「は?」
俺はフリーズして自身の心の声と全く同じトーン、同じタイミングで自然にその疑問詞が発せられた。実に腑抜けた声だった。脊髄反射ボイスというのはこのことだろう。
俺は少し震えながらローゼンに一つ質問をかける。
「まさかとは思うが、Eクラスに来るのってお前だけだよな?」
「...1年生だと私のみですね。」
「おい『だと』ってなんだ『だと』って。その言い方だと2年生にも3年生にもいるみたいな言い方じゃないか。何で皆イキナリEクラスに落とされてんだよ。何?あれなの?Eクラスに敗北したのでAクラスの水準上げます的な?」
「いえ...そういうわけでは無く、驚きなことにEクラスに落ちてきた人全員が自主的になんです。...私はアルフ様のお傍で剣術をご教授していただきたいと思ったからで...」
「は?別にお前もう強いから良くね?俺が教えることなんて何もねぇぞ?」
「いえ...私はアルフ様に比べたら手も足も出ないレベルなので...それに、アルフ様は序列戦の表彰式の前に『自分で見つけられないというEクラスの先輩の方のみなら僕が個人的に指導させてください』とおっしゃっていたので、多分それが原因かと...」
「はぁ~...そんなんで降格するレベルの頭が回る奴はこの学園に存在してたんだな...俺は全員脳筋だと思ってたからそこんとこの固定概念変えてかないとな...」
俺とローゼンがそんな会話をしているうちにクラスについたようだ。俺がクラスに足を踏み入れると、早々
に、
「「「「「裏優勝おめでとぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
と、教室にいるクラスメイト全員が俺に向けてクラッカーを鳴らし、クラスの内装が明らかにパーティーでもするんかと言わんばかりの豪華すぎる装飾がなされていた。俺はその光景を見て絶句する。
そして俺はサリナのもとに駆け寄り、
「こっ...こ、これは一体...?」
「これはね、皆でアルフをお祝いしようってシー先生開いたら、無論チャンピオンなのでOKって言われたから、ほらあそこにいるでしょ。応援カード持ってる。」
俺がサリナが指さした方向に目を向けると、本人が描いたと思われる応援のプラカードを数枚持ったシー先生が涙目で俺の方向を向いている。俺が取り敢えずお辞儀をしておくと、シー先生は何かに心打たれたようにその場にへたり込み、床に血らしきものが広がる。あ、顔を隠した...嘘だろおぉ!?どんだけ俺をガチで応援してたんだよ!!